内藤忍「東日本大震災で失ったもの、得られたもの」
リレーコラム「Be ambitious!」第2回

 3月11日午後2時46分。私は、六本木ミッドタウンにいました。人間ドック受診で、腹部検査をしようとベッドに横になっていると、いきなりビル全体が揺れ始めました。「また、地震か」と最初は軽く見ていたのですが、揺れが一段と激しくなり、長時間続くうちに「今回はかなり大きいぞ」と恐怖に変わっていました。

 携帯で家族の安否を確認し、建物の外に避難。そこで電車が止まってしまったころがわかると、2時間以上かけて自宅まで歩いて帰りました。そして、テレビを見て津波のすさまじさに茫然としました。

 それからの日本は、今までとは違う「別の国」になってしまいました。

 東京で生活している私には、東北地方の被災地の状況はテレビでしか見ることができません。しかし報道から聞こえてくる、暖かい食事が食べたい、夜寒くて寝れない、灯油が無いから2時間しかストーブをつけられない・・・といった高齢者の方の声を聞く度に、その厳しい状況に胸が痛みます。さらに、原発事故によって避難をしている方、農作物の放射性物質汚染に悩む農家の方・・・厳しい状況はまだ当分続きそうです。

震災の中で見つけた希望

 しかし、このような悲しい毎日の中にも、いくつかの希望があります。

 1つは、海外からのサポートです。

 今回の震災発生後、世界中から寄せられた物理的そして精神的なサポートは、予想を超えるスピードと規模でした。アジアだけではなく、アメリカや欧州からもたくさんの応援メッセージや義援金が集まり、政府だけではなく、アーティストやアスリートから一般の市民の方まで本当に勇気づけられました。

 この20年、バブル崩壊後の日本は経済の低迷、社会の閉塞感の中で自信を失っていました。震災後の日本人の冷静な対応が、世界から賞賛されている。このことは、日本人が失っていた自信が回復するきっかけになると思います。

創志学園(岡山)野山慎介主将 〔PHOTO〕高校野球情報.com

 そして、もう1つの希望は、日本にも行動力のある心優しい若者がたくさんいることに気がついたことです。

 例えば、被災地で自分も被害に遭っているにも関わらず、ボランティアで他の被害者のお世話をしている高校生。あるいは、高校野球の開会式での気持ちのこもった素晴らしい選手宣誓。

 これからの日本の担う若者たちが頼もしく みえてきました。彼らは苦境をバネにさらに大きく成長していくことでしょう。

 逆に、「天罰発言」や「プロ野球ナイター強行開催」など、老害と思えるようなニュースから、日本を問題を解決するには世代交代こそが必要との確信を持ちました。

 これからの日本には、解決していかなければならない問題が、山積しています。

 しかし、今回の危機的状況で見せた、日本人の忍耐力、団結力、そしてあきらめない気持ちがあれば、復興は予想以上に早いと思います。

 震災によってたくさんの大切なものを無くしてしまった人がたくさんいます。でも、その一方で今まで見えなかった大切なものが見えてきました。

 被災された方へ心からのお見舞いを申し上げると共に、今回の災害で得られたものを未来に向けて大切にしていきたいと思います。

(ないとう・しのぶ) 株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長。
1986年東京大学経済学部卒業。91年、MITスローン・スクール・オブ・マネジメント卒業(MBA)。住友信託銀行、シュローダー投信投資顧問株式会社、マネックス証券などを経て2005年11月より現職。「日経マネー」などの雑誌での連載コラムや、テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍。また、早稲田大学オープンカレッジ、丸の内朝大学をはじめとするマネーセミナーや講演活動も行う。主な著書に10万部を超えるベストセラーとなった『内藤忍の資産設計塾』(自由国民社)シリーズのほか、『60歳までに1億円つくる術』(幻冬舎)『初心者は株を買うな!』(日本経済新聞社)、『内藤忍の「好き」を極める仕事術』(講談社)など多数。
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