政治政策 地震・原発・災害
国際社会をも震撼させた政府と東電の稚拙さは「国有化」では解決しない
事故対応が終われば、抜本改革が必要だ
【PHOTO】Getty Images

 国際社会はここへきて、菅直人政権と東京電力の福島第一原子力発電所の事故対応への懸念を強めている。

 欧米を中心に、多くの国々がいち早く首都圏あるいは日本からの避難を自国民に促す動きをみせたことに続き、3月25日には、国連の潘基文(バン・キムン)事務総長が声明を発表。改めて「日本の現況は国際的な緊急事態への対応と原発の安全管理体制の見直しを迫っている」と指摘し、日本と東電の対応の不備を浮かび上がらせた。

 さらに、米国がより踏み込んで政府と東電の事故対応に疑問を呈しており、原子炉に注入する水を海水から真水へ切り替える形で転換を迫ったことも明らかになっている。

 いずれの動きについても、底流には、深刻な事態を前にもたつき、機動的に有効な手を打てない政府と東電への苛立ちが横たわっていることは、日本国民として看過できない。

 これ以上の混乱を避けるため、当面の事故対策は両者に委ねる以外の選択肢はないと信じるが、それだけでは将来へ向けての経済の立て直しや、安全・安心な国作りがままならないだろう。我々は、事態の収拾後を見据えて、今から政府や東電の国際社会などの評価をきちんと記録に留めておくべきだ。そして、今後の危機管理や電力・原発行政を見直す礎にする必要がある。

基準の緩和へ動く菅政権へ国連から「牽制球」

 米国、英国、オーストラリア、ニュージランド、韓国が福島第一原発の半径80km圏内からの避難という、日本政府の対応を上回る措置を打ち出したほか、ドイツが東京と横浜からの退避を勧告。フランスやベルギーは自国民の出国に便宜を図るため軍用機を派遣する動きまで見せた。いずれも、東北関東大震災の発生から4、5日しか経たない初動での動きだった。

 こうした避難の動きだけならば、幼い子供を抱えて慣れぬ外国で暮らす家族も少なくないことから、目くじらを立てるほどのことではないだろう。各国政府の通常の危機対応策の一環として鷹揚に眺めていることもできた。

 しかし、福島第1原発事故が依然として終息に至らず、国際社会は危機感を募らせている。国連の潘事務総長は、傘下の国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長と同様に、繰り返し日本政府に積極的な情報開示や、いたずらな楽観論に基づく対応を諫めてきた。

 その潘事務総長が25日の声明で、各国に対し、日本の教訓を踏まえて、より革新的な安全管理体制を築くだけでなく、健康、食品供給、環境維持のため可能な限り高い基準を整備するように要求したことは衝撃的である。

 声明の内容は、日本の食品安全委員会が現行の国内基準を厳し過ぎるとして緩和する構えをみせているのと対照的であり、菅政権をけん制していると取れなくもない。

 また、米国はオバマ大統領が早くから「トモダチ作戦」を掲げて、再三にわたり日本への支援を惜しまない姿勢を鮮明にしていた。独自に取材したところ、実は、米国は様々なレベルで、大統領の公式発言よりもさらに踏み込んで、積極的、かつ具体的に、広範な救援・復旧活動を打診していたという。

 それらの多彩な申し出を受けるのか受けないのか、肝心の日本政府は、なかなか回答せず、米側を苛立たせたとの証言があった。その原因は、普天間基地移転問題で強まった米軍へのアレルギーを癒やすのに役立てたいという“下心”がミエミエと判断したからではないらしい。首相官邸が何でもかんでも抱え込んでしまい、権限委譲をしないため、それぞれの窓口で判断できない状況が続いたからだというのである。

 しかし、さすがの米国も、福島第1原発の事故だけは、これ以上、放置できなかった。日本が、原発本来の冷却機能をなかなか回復できなかったからだ。事は急を要する。しかも、いつまでも不純物の多い海水を注入し続けると、思わぬ2次災害が招きかねないと危機感を募らせて、まずは、早急に真水に切り替えることを政府・東電に迫ったという。

 その辺りの事情を公表したのは、25日に記者会見した北沢俊美防衛大臣だ。記者からの質問に答える形で「(背景に)腐食を防ぐため早く淡水に変更すべきだという米側の非常に強い要請があった」と認めた。米側がオーストラリアから購入して日本に空輸したポンプや、1隻当たり1100トンの水を積めるバージ船(はしけ)を使って近く注水の真水への切り替えを行うことにしたと内幕を明かしている。

 真水への切り替え問題について、北沢大臣はこの会見で、東電も同様の問題意識を持っていたと庇ってみせてはいる。だが、米側が痺れを切らすほど、政府や東電の対応がもたついていたことは否定できない。

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