日本版国家ファンド構想の再浮上を警戒する田村参院議員の移籍で起こる心配

2010年02月17日(水) 山崎 元
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 また、このレポートでは国家ファンド(SWF)はヘッジファンドのように借り入れに依存していないことを指摘して市場の攪乱要因になりにくいと述べているが、日本の公的年金積立金の背後には将来の年金給付への義務があり、逼迫した年金財政があって、決して、借り入れがゼロで大きなリスクを取り得る資金ではない。

 むしろ、全額が借り入れの資金だと考えるくらいが実態に合っている。

 尚、GPIFの積立金運用方針については現在厚労相の諮問委員会で議論が行われている。筆者も委員の一人であるが、市場への影響を勘案して、議事は非公開となっている。「しっかりと議論する」とだけ述べておく。

国家ファンド不要の理由

 筆者が、自分が金融業界に身を置くにもかかわらず日本版国家ファンド構想に反対するのは、一つにはそれが不要(国民にとって余計)だからで、もう一つにはその運用が間違いなく金融業界のカモにされる大型利権になるからだ。

 10兆円の国家ファンドを考えると、仮に国民が1億人なら、国民から一人10万円を強制的に預かって国家が投資信託で運用するようなものだ。本来なら、このお金について、国民はいい投資対象があると思えば投資すればいいし、そうしたくないと思えばそうしなければいい。「国家が運用する投資信託」を押し売りする必要はない。

 また、年金積立金は現在年金給付の4年分くらいあるが、制度の維持の上ではこんなに大きな積立金を必要としない(半年分もあれば十分だ)。高い運用利回りがあるはずだ、と主張して、大き過ぎる積立金を抱えているところに日本の公的年金の大きな歪みがある。

 また、「積極運用される10兆円」は、金融業界にとって手数料に換算して1000億円から2000億円に相当するビッグ・ビジネスだ。

 1000億円と言えば10兆円の1%に相当するが、「年金の運用で1%も取れないのではないか」と言うかも知れない。確かに固定のフィーではそこまで取れまいが、成功報酬の形にすると簡単にこれ以上の手数料と同条件のものをむしり取ることが出来る。

 ヘッジファンドの場合、値上がり益の20%が普通の成功報酬だが、たとえば日経平均で運用する単純なファンドを考えると(ボラティリティは20%で計算)この成功報酬は年率ほぼ1.6%程度の固定手数料と同じ価値を持つ(成功報酬はファンド資産を原資産とするコール・オプションだ)。

 実際の運用はこんなに単純ではないし、運用者側ではリスクをもっと高めることが可能だろう。成功報酬の価値は、レバレッジを掛けてリスクを高めることができれば、ファンドの運用者側でいくらでも高めることが出来る。「濡れ手に泡」に近い合法的金融詐欺とでも呼びたくなる美味しい仕掛けなのだ。

 もちろん、日本の金融界もビジネス・チャンスが欲しいし、オバマ大統領の新金融規制案で儲けの種が減りそうなアメリカの金融界が資産運用で稼ぎたがっていることを考えると、政治家を動かして「日本版国家ファンド」を焚きつける可能性は大いにある。

 以上、筆者の杞憂に終わることを祈っているが、日本版国家ファンド構想が登場する可能性に対して、敢えて今の段階で警鐘を鳴らしておきたい。

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