日本の公的年金積立金の約120兆円(年金積立金管理運用独立行政法人、通称「GPIF」が運用している)と外国為替特別会計の100兆円は、政府によって運用されている資産という意味で実質的に国家ファンドであるという見解を採る。
但し、前者は国債を中心に低リスクで保守的な運用を行っているし、後者は米国債が中心だ。特に前者には運用を積極化させる余地があるし、その必要性もあるというのが、このレポートの主張だ。
公的年金積立金に関しては平成21年度の財政検証で長期的な目標運用利回りが4.1%に引き上げられており、これが「GPIFの運用姿勢に大きな変更を迫る」というのが、このレポートの見解だ。
そして、GPIFに関する提言としては「期待利回りのより大きい(そしてリスクも大きい)資産への投資比率を思い切って引き上げることが不可避であり、このためには対外資産の増大に加えて、場合によっては不動産やコモディティなど新たな種類のリスク・アセットを組み入れることを検討する必要があろう」とある。
新たに資金を探してきて日本版国家ファンドを設立するというよりは、既存の資金の中から先ずは10兆円程度をリスク資産運用に回すことで実質的に日本版国家ファンドを作りたいというのが、現時点の国家ファンド推進派に多い意見で、このターゲットになりやすいのが公的年金積立金だ。
また、市場へのインパクト(日本国債売りと米国債売りのそれぞれに対して)を避けるために、10兆円ほどGPIFが保有する日本国債と外為特会が保有する米国債を交換して、GPIFは市場への影響を見ながら米国債を他の外貨建て資産に分散化すればいいという技術的な提言もある。
もっとも、この提言は、分散化の必要な米国債を10兆円も抱え込むGPIFにとっては非常に割りが悪い取引であり、GPIFは市場でいいカモにされる危険があって、とても乗れる話ではない。
ともかく、何はともあれ「10兆円」というのが、国家ファンド推進派の悲願のようだ。 先の論旨については、そもそも年金積立金の運用が、高い目標運用利回りを前提としているところがおかしいと指摘しておこう。
そもそも、積立金に非現実的に高過ぎる運用利回りを想定する点が不健全なのだ。厚労省は「100年安心」の掛け声の下で現行の年金制度を維持しようとしているように見えるが、将来の給付と保険料を調整する「マクロ経済スライド」の他に、将来の積立金の運用利回りを高く設定することによって年金財政の辻褄を合わせて見せている。
しかし、問題なのは、運用方針ではなく、高過ぎる利回り目標の方だ。こんなところで、無理が見え透いた辻褄合わせをするから、つけ込まれる隙が出来るのだ。
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