地震・原発・災害
辞めることもなく、辞めさせることもできない「逃げ菅」首相という不幸
「東電怒鳴り込み」「谷垣入閣要請」で問われる統治能力

「原発」で頭がいっぱいで他のことには手が回らない 【PHOTO】Bloomberg via Getty Images

 

 案の定と言うべきか。民主党議員によると、首相官邸に「被爆者の会」ができたという。放射線にさらされる「被曝」ではない。官邸の主、首相・菅直人の怒鳴り声で傷つく人が次々と出てきているという意味だ。

 3月11日の巨大地震、津波、原発事故から2週間余が経過した政権の実相は、菅の関与をできるかぎり減らし、前官房長官・仙谷由人を急きょ副長官に起用するなどツギハギで乗り切ろうする姿だった。

 仙谷が官房副長官に起用されたのは震災発生から6日後の17日。それまでは「政治主導」の名の下に進められた政権運営によって、官僚機構がほとんど機能していなかった。各省が独自に動いて官邸に知られようものならストップがかかるありさまだった。

 しかし、仙谷が20日、首相官邸に各府省次官を呼び、「目詰まりを起こしているところがあれば、私が責任を持って対処するので言ってほしい」と要請した。仙谷が責任を持つ姿勢を示したことによって、官僚機構がようやく機能するようになった。

 だが、冷静に見るなら、仙谷が官邸に入らなければ、官僚機構が動かないのは実におかしなことだ。本来、この仕事は首相が行うべき任務である。

マイクを使っていたので外にダダ漏れ

 その首相は「頭の98%ぐらいは原発が占めている」(民主党幹部)という。指揮官は一歩引いて被災者対策などを含め全体を見渡して、各部隊の動きをチェックしなければならないのに、原発対策に突っ込んでしまった。

 「総理は現場主義。我々にも『現場を見ろ』と言うが、逆に言えば現場を見ないと動けない人。見たところからしか発想できない。テレビで悲惨な状況を見たら、カメラが入れるところでもあの程度なんだから、カメラが入れないところではもっとひどいはずだと思うでしょ。ところが、首相にはそういう想像力が働かない」(別の民主党幹部)

「菅さんにはそもそも統治能力が欠けている。市民運動家は自分の関心があることだけやっていればいいが、統治する場合は嫌なこともやらなければならないし、自分の言動の影響も十分に考えて行動しなければならない」(民主党若手)

 発生翌日の福島第一原発の視察(12日)、早朝、東京電力への怒鳴り込み(15日)、自民党総裁・谷垣禎一への突然の入閣打診(19日)-。いずれも、首相としての適格性を問われることだ。視察には東電との関係でやむを得ない事情もあるのだが、東電怒鳴り込み事件と、入閣打診には開いた口がふさがらない。

 時の首相が民間企業に乗り込み、「(社員の)撤退などあり得ない。覚悟を決めてください。撤退した時には、東電は百パーセントつぶれます」と怒鳴ることなどかつてなかったことだ。しかも3時間も東電に滞在した。

 もちろん、計画停電、原発事故への対応、情報隠しなど、東電には腹が立つ。だからといって、首相が午前5時半に乗り込んで怒声を浴びせることはあるまい。経済産業省の副大臣か政務官に命じてやらせればいいことだ。

 ついでに記すなら、首相の発言は会議室のドアで“壁耳”していた時事通信と共同通信の記者が漏れてくる首相の声を聞き取ったことだ。菅はマイクを使って話していたので、会議室の外に声が漏れた。

 この首相の言動について、自民党の首相経験者はこう言った。

 「菅さんの発言は狂気の沙汰だ。あれでは東電の社員が萎縮してしまう。首相ならば、『最終的な責任はわたしにある。この危機を乗り切るのは皆さんにしかできない。全力を尽くしてほしい』と言うべきだ。これだったら、鳩山由紀夫前首相の方が良かった…」

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