米クラウド業界をふたたび探訪する(2)
日本はアマゾンの前にひざまずくのだろうか

OCDAの多彩なメンバーを紹介するマービン・ウィーラー会長 (CloudConnect 2011にて筆者撮影)

 「複雑さを増す情報通信システム、柔軟で機敏なシステム対応、厳しさを増すコスト削減・・・私たちはいま、大きな曲がり角に向かっている---そして、企業情報システムの相互運用性は、かつてないほど重要になった。」マービン・ウィーラーODCA会長

 これは、最近シリコンバレーで開催されたクラウド会議 *1の一場面だ。米国では多くの企業がクラウドの導入を進めており、クラウド・データセンターの需要は急増している。特に、複数の企業がシステムを共有するパブリック・クラウドは、急成長が見込まれている。

 ウィーラー氏だけでなく、パブリック・クラウド市場の拡大には相互運用性や標準化が欠かせないと声が同会議では多く聞かれた。2010年10月に発足したODCA(Open Data Center Alliance)はクラウド・エコシステムの整備を目指し、手企業100社以上がメンバーに顔をそろえている。しかし、パブリック・クラウド最大手のアマゾン・ウェブ・サービシーズ *2は、こうした動きに背を向けている。

クラウド・ディファクトを狙うアマゾン

 まず、前回の話を簡単にまとめよう。

 シリコンバレーでは最近「クラウド・エコシステム」という言葉を良く耳にする。この流行語は、クラウド・コンピューティングの規格整備や総合運用性を進める合い言葉となっている。しかし、それは建前の話。その裏には、パブリック・クラウドで独走するアマゾン・ウェブ・サービシーズ(以下:アマゾン)を食い止める「アマゾン包囲網」の意味合いが潜んでいる。

 2006年、いち早くクラウド市場に参入したアマゾンは、ビデオ・レンタル最大手のネットフリックス(Netflix)やオンライン競売のイーベイ(eBay)、大手製薬メーカーのイーライ・リリー(Eli Lilly)など6万社以上の顧客を抱えるまでに成長した。その売上は、2010年で約5億ドル、2011年には10億ドル(推定)に達すると見込まれ、向こう5年CAGR(年間平均成長率)は50%から100% *3とまで予想されている。

 アマゾンは今年、業界第2位のラックスペース・クラウド(*4 Rackspace US)に売上ベースで6倍の差をつけるとの予想 *5もあり、アマゾンの独自方式がパブリック・クラウドにおけるディファクト・スタンダードになる可能性がでてきた。

*1 これはCloudConnect 2011会議で、2011年3月8日から10日までサンノゼで開催された。
*2 アマゾン・ウェブ・サービシーズ(Amazon Web Services)社は、アマゾン社の子会社でクラウド・サービスを提供している。
*3この成長率やアマゾンの売上はCloudscaling社の予測
*4 ラックスペース・クラウド(Rackspace Cloud)は、Rackspace US社のクラウド・サービス部門。
*5 Cloudscaling社の試算数字

 こうした状況に、シリコンバレーの大手ハイテク企業は憂慮している。1980年代から90年代にかけて、ウィンドウズ(Windows)がコンピュータOS(基本管理ソフト)のディファクト・スタンダードとなり、マイクロソフト(Microsoft)がコンピュータ業界を牛耳る存在となった。このウィンドウズ独占 *6に対して、米司法省や民間企業から独占禁止法訴訟 *7が起こされたとおり、特定企業の独自システムがディファクト・スタンダードになると、様々な弊害が予想される。

 そのため大手データセンターやシステム・インテグレーターを中心に、クラウド・データ・センター分野での技術標準の策定と相互運用性の確保が叫ばれた。このアマゾン包囲網の一端が、冒頭に示した業界団体オープン・データセンター・アライアンス(以下、ODCA)だ。

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