岡田克也前幹事長が訪韓した裏側に、「EPAカード」を利用しオバマとの「TPP参加」交渉を狙う野田政権の高等戦術
李明博政権から評価が高い岡田氏〔PHOTO〕gettyimages

 民主党の岡田克也前幹事長が先月末、韓国を訪れた。極秘訪問ではなかったが、同氏の訪韓をわが国の主要メディアは報じなかった。岡田氏が現在は無役だからフォローしなかったとすれば、マスコミ各社の怠慢と言っていい。岡田訪韓の持つ意味は実に大きいからだ。

 ソウル滞在中、岡田氏は知日派として名高い柳明恒・前外交通商相(元外交部事務次官)をはじめ、与党ハンナラ党の洪準杓代表、朴槿恵元代表(次期大統領選の与党有力候補)、野党民主党の孫鶴圭代表(同じく野党有力候補)など政界の要人、さらには李明博大統領が国連総会出席のため不在だったので大統領首席秘書官(経済担当)など青瓦台(大統領府)主要スタッフ、さらには趙錫来・韓日経済協会会長ら経済界の大物など総ナメしたのだ。

 では、なぜ韓国側は異例の歓待をしたのか? そもそも李明博政権の岡田評価が高いこともある。だが、それ以上に岡田前幹事長が密かに持ち寄った「テーマ」に強い関心を抱いているからではないか。そのテーマとは、ズバリ「日中韓EPA」構想である。

EPAとTPPを両論併記したアジアの経済首脳会議

 そもそも、経済連携協定(EPA)とは何か? 経済産業省(北畑隆正事務次官・当時)が2006年4月に公表した「グローバル経済戦略」の大きな柱の一つがASEAN(東南アジア諸国連合)10ヵ国及び日本、韓国、中国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの16ヵ国による「東アジアEPA」構想である。

 域内貿易の急増、ボーダーレスの生産ネットワークの拡大など、経済実態としての結びつきが強まっている中、日々の経済活動において進行している経済統合の制度化を目指したものだ。

 こうした情勢下で日韓両国は03年3月にEPA交渉を開始したが、翌年には交渉が中断、今日に至っている。

  ところが、ここに来て大きな変化が見えてきた。まさに岡田訪韓に合わせるかのように、9月28、29両日、ソウルで開かれた日韓企業・経済団体の代表による日韓経済人会議で両国のEPAの早期締結を両国政府に求める共同声明を発表したのだ。

 同時期、東京ではASEAN+3(日中韓3ヵ国)の経済界首脳が「第2回アジア・ビジネス・サミット」を開催した。野田佳彦首相同席のもと発表された共同声明には、ASEAN+3のEPAとTPP(環太平洋パートナーシップ協定)締結促進を両論併記する形で盛り込まれた。

 実は、このアジア・ビジネス・サミットに参加した中国側はASEAN+3でFTA(自由貿易協定)を締結、その後に他国との交渉に入るべきだと主張した経緯があった。が、最終的には共同声明にある「EPAとTPP締結」に応じたのだ。ここに岡田訪韓の持つ意味がある。

 すなわち、11月16日開催のハワイAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会合で議長を務めるオバマ米大統領は日本のTPP交渉参加を強く求めているが、与党民主党内に依然として反対論が根強くあることから、野田首相は米国が反対する日中韓EPA締結交渉の水面下での動きを見せることでTPP参加交渉のカードに使う腹積もりなのだ。言わば"高等戦術"である。

 事実、今月に入るや玄葉光一郎外相、前原誠司民主党政調会長が相次いで訪韓、李明博政権のトップと会談、日本が韓国傾斜を強めていることを内外に印象付けた。その背景に米韓FTA締結が10月12日に米議会でも承認され、来年1月にも発効されるということもある。

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