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 三陸沖を震源とする超巨大地震は実にマグニチュード9・0を記録し、観測史上日本最大、世界でも4番目の大きさであることがわかった。被害も想像を絶しており、被災者には心よりお見舞い申し上げたい。

 さて、被災地では自衛隊や警察、消防などが懸命になって人命優先の救助を全力で行ってきたが、そんな最中に永田町では菅直人政権が、この危機を利用して、成立が絶望視されていた予算関連法案の国会通過を画策していた。地震当日、発生のまさに直前、菅総理の外国人献金問題が発覚。政権は3月末まで持たない、菅総理の退陣は避けられない---そんな政治情勢が地震で一変した。政権はその機に乗じようとしたのである。

 野党も手を拱いていたわけではない。国会休会を提案し、予算の成立時期を遅らせようと変化球を放った。与野党とも、政局にうつつを抜かしていたのだ。

 もっとも、対決ポーズの裏で、とんでもない与野党連携も進んでいた。震災から2日しか経っていない3月13日、自民党の谷垣禎一総裁から菅総理に提案があり、復興支援の財源を確保する目的で臨時増税の時限立法制定について協議することで合意したというのだ。わざわざ臨時増税と断る以上、本気なのだろう。

 復興策が必要なことは、言うまでもない。震災の規模から考えて、10兆円は必要だろう。だが、それを増税で賄うなど、現下の日本の経済情勢を見れば、どんな経済の素人でもやらない愚策中の愚策だ。そんなことをすれば、日本全体がそれこそ沈没してしまう。

 もちろん、復興財源調達の「正解」は国債の発行だ。'95年の阪神大震災のときにも3兆8000億円ほどの復興予算が組まれたが、財源は復興国債だった。'08年のリーマンショックで先進各国は経済政策を打ったが、その財源もほとんどが国債だった。

 だが、消費税増税に意欲を燃やす菅総理は、同じく増税指向の谷垣総裁と組んで、消費税率のアップを狙っているのだろう。その手口もなかなか手が込んでいる。その一つが、この震災の影響で行われることになった「計画停電」と絡める方法だ。

 「計画停電」によって、対象地区の住民は不便を強いられている。特に鉄道会社が間引き運転や運休を行った結果、通勤・通学・帰宅に大混乱を来した。この措置は、4月末まで続けられる予定だという。

 そこで、練られているのが、消費者の電力消費を抑えるという名目で、電力にかかる消費税を引き上げるという方策だ。通勤地獄を解消し、そのうえ復興予算の財源にもなるという美しい大義名分で増税を行おうというのである。おそらくこれから、財務省の忠犬ポチになっている学者やマスコミが、新聞やテレビを使って言い出すだろう。復興支援という「正義の物語」は、一定の理解を得るのに役立つかもしれない。

 しかし、この発想が根本的に間抜けなのは、電力不足が将来もずっと続くという前提に立っていることだ。「計画停電」そのものは4月末までの予定だし、いま稼働していない火力発電所の再稼働や、他の地域からの電力融通によって電力不足はいずれ解消される。そうした見通しを無視してまで、増税に突っ走るというのは、まさに火事場泥棒的発想だ。

 未曾有の大災害を乗り越えるためには救国的な勢力の結集が望まれる。だが、その気運を増税に利用するようなさもしい政治家は、害悪でしかない。


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