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リーバイスの株価が「ストップ高!」の意外な理由
3期連続で最終赤字予想なのに、いったいナゼ?
米国「リーバイ・ストラウス・アンド・カンパニー」のジョン・アンダーソン社長兼最高経営責任者(CEO)[PHOTO] アフロ

「赤字続きで元気のなかったリーバイスの株価がストップ高になったことは、証券界でも話題になりました。その要因の一つは、6月から高級ジーンズ販売に特化する路線変更を打ち出したことが、市場に好感されたためと言われています。でも実は、他の要因もありそうですよ」

 こう話すのは、大手証券会社に勤める営業マンだ。

 3月4日、ジーンズメーカー「リーバイ・ストラウスジャパン」(以下・リーバイス、ジャスダック上場)の株価が、一時、値幅制限いっぱいの50円上昇。238円をつけて、ストップ高となった。この日の終値は210円に落ち着いたが、それでも前日比22円高。週明けの終値も218円(7日)、225円(8日)と、高値を維持している。

 しかし、リーバイスはここ数年、売上高、利益ともに落ち込みが激しく、 '09年に赤字に転落。 '10年も赤字となり、今年11月期も連結で約21億円の経常赤字が見込まれている。決して調子がいいわけではないのだ。トレイダーズ証券の証券事業部長・藤本誠之氏が解説する。

「リーバイスは、 '06年に約270億円あった売上高が昨年には約130億円まで半減し、かなり厳しい状況にある。かつては、3万円もするジーンズが売れていましたが、ユニクロをはじめ、西友などのスーパーも参入した『格安ジーンズ』がブームになると、大苦戦。リーバイスも価格を下げて6000円程度のものを主力品としたのですが、それがまた大失敗となってしまった。おカネのない若者は安いジーンズを買うし、値段が高くても質の高いものを求める人たちは、6000円のジーンズは買わない。中途半端で、買う人がいなくなってしまったわけです」

 ユニクロが初めて一本1000円を切るジーンズを発売したのが '09 年のこと。その後、イオン、ダイエー、西友などが次々に格安ジーンズ市場に参入し、ディスカウントショップのドン・キホーテに至っては690円のジーンズを売り出した。リーバイスが赤字に転落したのも、'09年のこと。その後、黒字転換がはかれないまま、ここまできているのである。

リーバイスの直営店の一つ、原宿店。路面店で客も多い。今後、高価格路線は功を奏していくのか。注目されるところだ [PHOTO] 西崎進也(以下同)

 こうした数字だけを見れば、3月4日のストップ高は、ちょっと奇異に感じるところである。証券アナリストの植木靖男氏は、こう分析する。

「低価格競争というのは、最終的には体力勝負になる。そうなると、リーバイスは、資本金も売上高も店舗数も圧倒的に大きいファーストリテイリング(ユニクロ)にかなわない。そこで、価格戦略を見直して、1万~1万5000円の商品に特化する方針を明確にしたことで、マーッケットで評価された。4日のストップ高も、日本経済新聞がそれを報じたのが原因です。それに、リーバイスは財務内容については非常にいいのです。借金がゼロで、現預金が約40億円あるので、倒産する心配がない。そもそもリーバイスはブランド力が高いので、好材料が出れば株価が急騰するのも当然と言えます」

投資家たちの思惑

 日経新聞によれば、リーバイスは6月から、総合スーパー向けへの商品開発からは撤退し、百貨店や都心のジーンズ専門店など、価格帯が高い商品が売れる店舗での販売を優先する。ジーンズ自体も製造や縫製を日本国内で行い、品質を高めるという。日本本部の機構改編も進め、社員も現在の150人から40人減らし、約110人のスリムな体制にする。この方針は、投資家が好みそうなリストラ策である。

 が、株価が上がった理由はそれだけではないという。前出・藤本氏が言う。

「今回、リーバイス株を買った投資家の中には、最近流行している、『上場廃止によるTOB(株式公開買い付け)』があるかもしれない、といった期待感を抱いた人も多かったようです。企業にとって上場する目的は、信用度のアップや資金調達にあります。

 しかし、株式市場全体が冷え込んでしまっている今、そうしたメリットはない。米国本社が筆頭株主としてしっかり支えてくれているリーバイスにとっても同様で、上場のメリットはほとんどなく、今では、上場を維持するためのコストがかかるだけになっている。今回は、価格戦略の見直しだけでなく、社員を減らす機構改編も発表しているので、さらにコスト削減を徹底させることも考えられる。

 とすると、メリットのない上場をやめるかもしれない—。市場関係者の間に、そうした思惑が拡がっているのです」

 リーバイスの株主を見ると、米国の親会社「リーバイ・ストラウス・アンド・カンパニー」が筆頭株主として、83・5%保有している。

「リーバイスは、市場で取り引きされている株数も少なく、株主から株を買い集めるTOBもしやすい。そして、財力のある米国本社が株の買い取り価格を高く設定する可能性も高い。投資家の間では『プレミアムがつくかも』という期待感も高まっているのです」(前出・藤本氏)

リーバイスのジージャン。値札を見ると、2万8980円(税込)。ブランドへの意識の高さが見える

 リーバイスの直営店を訪ねてみた。リーバイスの顔である定番「501」の価格は1万3650円。デザインは、今風にあちこちをわざと破いた「ダメージもの」が多い。店員はこう話した。

「ベーシックモデルナンバーとなる、『501』~『505』の5本については値下げはしません。『501』は、今でも一番の売れ筋ですから」

 店員の「501」ブランドへの自信は想像以上のものだった。

 はたして、今回のストップ高は、TOBに期待する投資家の思惑が演出したものなのか。それとも、高価格路線への転換などが好感されただけなのか。どちらにせよ、リーバイスの「ブランド力」は、思いのほか堅実のようである。

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