「断末魔の初公判」全内幕
ああ、 小沢一郎「落ち目三度笠」
恥を知れ!検察批判する前に、
自己批判せよ

10月6日、東京地裁に入る小沢。弁護団の前を歩き、カメラを一瞥〔PHOTO〕gettyimages

 怒っている。目を吊り上げた。だが、ことここに至ったのは誰のせいでもない。自らの不徳の致すところである。その一言が言えない。政治家としても人間としても幼稚。恥じらいのない69歳、見苦しい。

よく言うよ

 小沢一郎元民主党代表は、この日を前に何度も眠れぬ夜を過ごしてきたのだろう。10月6日、東京地裁第104号法廷で、小沢の初公判が開かれた。「刑事被告人・小沢一郎」の姿を見ようと、2146人が傍聴券を求めて列を作った初公判は、法廷入りからして小沢サイドの「演出」が目立った。それは小沢が追いつめられ、焦っていることの裏返しに他ならない。

 午前10時からの開廷に合わせ、30分程前にSPとともに東京地裁に姿を現した小沢は、そのまま地裁に入るかと思いきや、いったん地裁に隣接する弁護士会館に姿を消した。次に出てきたときには、小沢が先頭に立ち、弁護団を後ろに従えている。

 小沢の法廷入りをカメラに収めようと集まった報道陣を一瞥しながら、撮ってくれと言わんばかりのゆったりした歩調で裁判所に向かう小沢は、その姿がどう映るかを緻密に計算していたに違いない。

 自分にはやましいことは、一切ない。ほら、見てくれ。こんなに堂々としているだろう---。

 裁判が始まり、「陸山会」への4億円の借り入れに関連し、政治資金規正法違反をしたという起訴内容が読み上げられる。大善文男裁判長から住所を尋ねられたのに、先に答えた岩手の本籍地を繰り返すなど、小沢は緊張を隠せない。ついで起訴内容に関して意見を求められた小沢は、事前に準備してきた書面を8分間にわたって読み上げた。

「(検察官役の)指定弁護士の主張は(略)、検察審査会の誤った判断に基づくものにすぎず、この裁判はただちに打ち切るべきです」

「検察の捜査は、検察という国家権力が政治家・小沢一郎個人を標的に行ったものとしか考えようがありません。私を政治的・社会的に抹殺するのが目的だったと推認できます」

 後で触れる元秘書3人の裁判では、判決文に「強く推認される」「合理的に推認できる」といった表現があり、小沢シンパからは「証拠がなく、推測ばかりで有罪判決を出した」と批判が上がった。それを意識し、あえて「推認」という言葉を使うことで「自分の罪はでっちあげだ」と主張したのである。

 他にも「日本憲政史上の一大汚点として後世に残る」「暗殺より残酷」などと、断末魔の叫びのように口を窮めて検察批判を繰り返し、その後の会見でも再び検察を批判した小沢。しかし、小沢が批判すべきは検察よりも、「政治とは力、力とはカネ」とばかりにカネをバラまくことで権力を握ってきた自分の政治姿勢である。自己批判をせず、被害者面して「自分は国家にハメられた」と叫ぶ姿は、空疎で子供じみている。小沢は恥を知るべきだ。

 小沢初公判を傍聴したジャーナリストの森功氏が言う。

「小沢氏の主張自体に目新しいものはなく、法廷で天下国家を論じても意味はない。その点では非常に空疎な印象を受けました。

 ただ、小沢氏側の弁護団と元秘書側の弁護団では、4億円の原資についての主張が完全に喰い違っていました。元秘書側は4億円を小沢から借りたと言い、小沢側は銀行から借りたもので収支報告書への記載については知らないと言う。元秘書の主張を親分が否定しているのです」

 小沢裁判は年内にあと10回予定され、判決は来年4月と見られる。今後、小沢側と元秘書側の裁判で、両者の利害が対立するケースも考えられる。その場合、小沢は元秘書たちに罪を被せ、自分だけ逃げ切ろうとするのか。また、小沢裁判でどんな一審判決が出るにせよ、小沢側、検察側のどちらかが控訴するのは必至で、裁判が年単位でこれからも続いていくことは間違いない。

「小沢先生はいろんな経験をされていますが、眠れない夜はないんですか」

 ある民主党議員から小沢に質問が飛ぶ。会場に集まった約100人の議員の視線が小沢に集まる。眠れない夜?俺はそんなふうに見られているのか?小沢はしばし黙った後、つとめて冷静な表情を作って答えた。

「考えるとおかしくなっちゃうから、あんまり考えないで早寝早起きだ」

 小沢初公判の3日前、10月3日に開かれた小沢一郎政治塾の一コマである。つい最近まで、民主党若手議員にとっては「口もきけない」存在だった小沢が、100人もの議員が集まった前で「眠れない夜はないか」と尋ねられ、同情を寄せられる。堕ちたものである。

 小沢はこの席で、「総選挙をやっても、どの政党も過半数を取れないだろう」とも語ったが、かつてならその一言で「小沢がまた政界再編を狙っているのでは」と囁かれたはずだ。だが、いまや同じ言葉を口にしても、それはまるで老政治家の繰り言のようにしか響かず、誰も反応しなかった。演台を降りる小沢の後ろ姿は、凄みよりも、ただ哀愁を漂わせていた。同情するなら、カネをくれ—小沢はいまや永田町の「家なき子」だ。

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