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電力会社10社に緊急アンケート
東電が10年間で6186億円も〝上乗せ〟できる身勝手な論理への怒り
電気料金の水増しは当然と考えるのか

東電の電気料金水増しが報告された10月3日、枝野幸男経産相(左)は原子力損害賠償支援機構の担当大臣に任命された

 我々が東京電力から請求されていた電気料金は、10年間で6186億円も水増しした金額だった。それでもなお、「原発の再稼働や電気料金を値上げしなければ、東京電力が8兆円あまりの資金不足に陥る」などという結論を、納得して呑み込むことなどできるだろうか---。

 本誌は先週号(2011年10月14日号)で、東電の経営や資産状況を調べてきた「経営・財務調査委員会」(委員長・下河辺和彦弁護士。以下、第三者委員会)の内部報告書を先んじて紹介したが、10月3日、正式に報告書が政府に提出された。当然と言えば当然だが、グループ社員の14%に当たる7400人の削減をはじめ、企業年金カットなど10年間で2兆5455億円のコスト圧縮の他、有価証券や不動産など7074億円の資産売却を要求している。

 報告書にはこう書かれている。〈東電については少なくとも約13年間にわたり、規制当局による原価(営業費)や利潤(事業報酬)の適正性の具体的な確認が行われなかった〉。リストラ以前に、冒頭のとおり馬鹿げた利益の水増しを可能にする、電力会社に許されたトリックが問題なのである。

「総括原価方式」という〝まやかし〟について、立命館大学国際関係学部教授で、経済産業省所管の「総合資源エネルギー調査会基本問題委員会」委員でもある大島堅一氏が説明する。

「『総括原価方式』とは『営業費用』に『事業報酬』をプラスしたものを『電気料金原価』としていいという考え方です。本来、非常におカネのかかる電気事業に、必須な費用を補償することで公益性を保つのが目的で導入された方式でしたが、今回の報告書では費用の一つである修繕費において、当初の見積もりと実際にかかった費用との差額が10年間で6000億円を超えていたことが指摘されたのです。長期間繰り返されてきた点で極めて反社会的な行為です。さらに費用の中に過大な広告宣伝費が含まれていることも明らかになりました。広告宣伝費は電気事業に必要なコストではなく、費用から除くべきです。公益事業者であることを盾に何をするか分からない東電は、もはや公的管理下に置くべきでしょう」

 東電・西澤俊夫社長は「報告書には、当社にとって大変厳しい指摘事項が含まれているものと認識しております」と認めたが、別に「不正に受け取ったカネを消費者に返します」とも、「まともな計算式に戻します」とも発言していない。

 そもそも総括原価方式は、何も東電だけに認められた計算方式ではない。上の表のとおり、本誌は他の電力9社に対しても総括原価方式の是非を問うたが、ご覧のとおり口裏を合わせたかのような回答で、要は総括原価方式は電力の安定供給に必要で、それが許されるかは国任せという内容ばかりだった。東電にも同様の質問を投げたが、同社広報グループは、こう言った。

「弊社は料金改定の際には、経産省の省令に基づいて、従来の合理的な期間で見込める費用を精査して料金改定に織り込んでいる。総括原価方式については、弊社が制度見直しについて云々する立場ではなく、コメントする立場にはない」

 要は役所のせいだということだ。回答を寄越さなかった関西電力は論外として、どの社も東電と体質は変わらない。

東電が準備する〝復讐〟

 東電をはじめ電力各社は政治家のパーティ券を買い漁り、選挙となれば労働組合が組織票をまとめてきた。だが、もはやその神通力は通じなくなりつつある。全国紙政治部記者が解説する。

「東電の勝俣恒久会長(71)以下幹部は、第三者委のメンバーにJR東海の葛西敬之会長が入ったのを喜び、東電擁護に回るものとタカをくくっていました。しかし、東電国有化路線を敷く仙谷(由人)政調会長代行、枝野(幸男)経産相にイニシアチブを握られ、東電国有化には反対だった財務省も、優先株の引き受けに方針転換し、東電改革のために一時的に国の管理下に置くことを認めたのです。あまりの逆風に勝俣会長は『事故は1000年に一度の天災じゃないか。(自らが)辞めなければいけない理由はない』と激怒しているようです」

第三者委の下河辺和彦委員長は「報告書に盛り込んだリストラ、資産売却は最低限だ。実現すれば公的支援に道筋はつく」(10月3日)

 確かに東電幹部からも「東電を利用して搾取してきた政治家と官僚の実名を開示してやる」との声も聞こえてくる。だが、聖域の中で批判にさらされたことのない東電が徹底的に叩かれた理由は、変わらぬゴーマンな体質にあるのだ。第三者委のメンバーの一人が明かす。

「5月に第三者委を設立して以来、10回の議事録を出しているが、第三者委は当初から東電存続のためのガス抜き的な位置づけとされていた。東電や経産省は態度がでかく、要求する財務資料を出し渋り、おざなりな資料を提出してきた。これが、第三者委の逆鱗に触れたんです」

 その東電が政府に反撃に出るべく準備を進めているというから、開いた口が塞がらない。首相官邸スタッフが証言する。

「刑事、民事の両面で司法当局に告発するための事故調査委員会が設置されますが、東電は現在、事故調に対応するため、原発事故発生当初からの関係資料を整理しています。今までグレーのまま放置された、避難区域が3km、10km、30kmと拡大していった経緯や原発事故対応マニュアルの瑕疵が白日のもとに晒されることになるかもしれません。野田(佳彦)首相が頭を痛めているのはその点で、政府の瑕疵が認められれば、菅(直人)政権にその責任が降りかかる。下手をすれば、菅前首相の刑事責任追及という事態に発展しかねないのです」

 第三者委の報告書を踏まえれば、「すでに東電には、原子力損害賠償機構を通じて国費が投入されるというレールが敷かれた」(経産省キャリア)といい、次のようなシナリオが考えられるという。

「早ければ年内、遅くとも来年6月の株主総会では授権枠(発行可能株式総数)を拡大することになります。おそらく18億株から36億株となり、国が50%を超える東電株買い入れを目指す方向性が定まったのでしょう」(前出・経産相キャリア)

 衆院科学技術・イノベーション推進特別委員会委員長の川内博史代議士(民主党)は、ぬるま湯に浸かりきった電力政策について、こう指摘した。

「日本の電気料金は諸外国に比べ高いことは間違いない。第三者委は『これだけ国民に迷惑をかけているのだから、合理化、効率化によって料金を下げよ』くらい言ってほしかった。総括原価方式についても徹底的に検証されたとは言えない。その証拠に、報告書を見ても、ほとんど資料が公開されていない。経産省や資源エネルギー庁、原子力安全・保安院は規制官庁、監督官庁として原子力事故の原因の究明についても果たせていない状況だが、変わりつつある。電気料金についても『東電の主張を追認してきた』という批判は甘んじて受け、正すべきは正す時期が来ました」

 くれぐれも東電一社の問題ではない。何も疑わずに電気料金を支払ってきた日本全国の国民が「適正な料金なのか?」と声を上げるべき日がきたのである。

「フライデー」2011年10月21日号より


日時:2011年10月20日(木) 19:00~21:00(受付開始:18:30~)
場所:株式会社講談社本社6階講堂
アクセス:
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■定員:350名
■参加費 :無料
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■入場 :無料
■主催:講談社『現代ビジネス』編集部


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