原子力損害賠償支援機構法に仕掛けられた東電への「資金の抜け道」
増税の裏で東電を税金で支援するのか

国会で議論をし尽くせ

 東京電力・福島第1原発事故による放射能汚染をめぐって、環境省が国の責任で除染する対象を「年間被曝線量が1ミリシーベルト以上の地域」とする方針を決めた。当初は「5ミリシーベルト以上の地域」としていたが、汚染した地元の反発を受けて、基準を大幅に見直した形だ。

 相次いだ各紙の報道を見ながら、疑問に思ったのは「国の責任で」というくだりである。これは費用を国が負担するという意味なのか。放射能汚染はもちろん原発事故が原因だから、東電が負担するのが筋ではないのか。

 この点について、先に成立した放射能物質汚染対処特別措置法はこう定めている。

 「国は、地方公共団体が事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関する施策を推進するために必要な費用についての財政上の措置その他の措置を講ずる」(第43条)

 「この法律に基づき講ぜられる措置は関係原子力事業者が賠償する責めに任ずべき損害に係るものとして、当該事業者の負担で実施される」(第44条、ともに一部略)

年2兆円もの借金返済などできるわけがない

 つまり、地方自治体が実施する除染作業について国は財政措置を講じるが、最終的には原子力事業者すなわち東電が費用を負担する、という規定になっている。

 だから、新聞やテレビが「国の責任で実施する」というのは正しい。だが、費用は東電持ちである。念のため環境省に確かめると、担当者は「最終的に国が東電に求償します」と明解だった。

 では、具体的に費用をどう東電に負担させるのか。そこを尋ねると「財務省と相談して決める話であり、まだ決まっていません」という説明だった。

 カネの話にこだわったのは除染費用が膨大になるからだ。

 当初の「5ミリシーベルト」であれば、環境省は予算を1兆1400億円程度と見込んでいた。ところが「1ミリシーベルト」となると、一挙に膨らむ。朝日新聞によれば、対象区域は当初の福島県内1800キロ平方メートルから7倍に拡大する。単純計算でも、8兆円近くになる。

 そうなると、東電はこれだけの費用を負担しきれるのか、という疑問がわく。

 先のコラムでとりあげた東電に関する経営・財務調査委員会のごく控えめな試算でも、賠償総額は4兆5000億円だった。これに除染費用が加わると、軽く10兆円を超える。実際には20兆円に届いても、私は驚かない。

 20兆円を東電がとりあえず国に立て替え払いしてもらって10年返済で返すとすれば、年2兆円だ。半分の10兆円としても、年1兆円である。こんな金額を本当に東電が返済できるのだろうか。

 先の調査委報告は返済を当面棚上げしたうえ、原発を1年後に稼動し電気料金を5%値上げして、ぎりぎり債務超過を免れるという試算になっていた。これでは年2兆円もの借金返済などできるはずがない。あっという間に債務超過になって破綻である。

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