訪日外国人目標1000万人に届かず
基幹産業目指し戦略の練り直しも[観光立国]
中国人旅行者向けに中国語で春節(旧正月)を祝う飾りを掲げた家電販売店=札幌市内で2月3日

 日本政府観光局(JNTO)の推計によると、2010年の訪日外国人旅行者数は861万2000人で、これまで最高だった08年の835万1000人を26万1000人上回ったが、政府目標の1000万人には遠く及ばなかった。民主党政権は観光を成長戦略の柱の一つに据えて当面は13年に1500万人、将来は3000万人の目標を掲げているが、実現に向けて観光立国戦略の練り直しが求められている。

 日本は海外へ出て行く旅行者が訪日数を大きく上回る出国超過が続いており、国際観光地としてアジアの中でも遅れている。未開拓な分だけ新たな成長可能性を秘めているとして本格的に取り組みだしたのが、小泉純一郎政権時の03年にスタートした「ビジット・ジャパン・キャンペーン」だった。

 政府・自治体と民間旅行会社や観光団体、交通機関などが一体となったキャンペーンは一定の成果を上げて、訪日外国人旅行者数は05年の521万2000人から08年までに4年間で60・2%増と大きく伸びた。しかしリーマン・ショックによる世界同時不況の影響で09年は679万人と前年比18.7%も落ち込んでいた。

 観光を成長分野として重視している民主党政権も基本的にキャンペーンを踏襲し、13年の1500万人、16年の2000万人、19年の2500万人へと3期にわたる訪日外国人旅行者を増やす目標を掲げた。第3期目標はほぼドイツ並みで、それを達成した後に同じ島国の英国並みの3000万人を目指すというロードマップを策定している。

 観光庁は目標を約139万人下回った要因について、少なくても約33万人は「大幅な円高に伴う通過下落国・地域からの旅行者の減少」、約16万人が「尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件に伴う中国人旅行者の減少」と分析している。

しかし、大半の約90万人は「外的な要因ではない」とし、

1)プロモーションの効果が出るまでのタイムラグ
2)プロモーション戦略・体制などが不十分だった
3)国内受け入れ環境の整備の遅れ---を挙げている。羽田や関西国際など主要空港では無線LANの無料化を進めているが、外国人旅行客への周知が不十分との声もある。

 観光産業の位置づけが不明確だったり、官民一体となった取り組みがまだ足りないとの指摘もあり、観光立国への戦略見直しが求められている。

 目標未達成を受けて、溝畑宏観光庁長官は「11年は1100万人に近い水準になるよう積極的に取り組む」とあくまでも政府が描くロードマップを踏襲するとの強気の構えをみせている。さらに溝畑氏は「中国や韓国からの旅行者をどれだけ上積みできるかにかかっている」と述べ、CMなどのプロモーション強化や多言語の案内充実など受け入れ体制の整備を加速する方針を示した。

 JNTOによると、10年の国・地域別の訪日旅行者数で最も多いのはお隣の韓国で244万人。次いで中国が141万3000人で過去最高を記録した。秋以降、尖閣諸島沖での漁船衝突事件の影響はあったが、好調な経済成長、訪日旅行の宣伝効果、特に九州クルーズの人気などで前年を約40万人も上回った。3位が台湾で126万8000人、4位が米国の72万7000人だった。

中国人誘客体制の拡充へ

 韓国、中国、台湾、香港のアジア4カ国・地域で全体の65%を占めており、観光庁は最重点4市場に位置づけている。特に中国は観光においても存在感を強めている。

 中国人旅行客が国内の観光地や繁華街で多く見かけられ、デパートや電器店などで旺盛な買い物ぶりが話題になっているが、訪日数の増加を後押ししたのは観光ビザ発給要件の緩和だ。中国人の訪日観光ビザは、ようやく00年に北京や上海など地域限定で団体観光に限って発給されたのが最初で、05年に中国全土に拡大した。個人観光ビザについては09年7月から「十分な経済力のある者」などの要件付きで北京、上海、広州の公館で試行を始め、10年7月からさらに要件を緩和し中国全土の公館や旅行会社で申請を受け付けることが認められた。

 観光庁は将来の訪日旅行者3000万人を達成するためには、中国をはじめ東アジア市場の開拓が不可欠とし、10年度予算で前年度より約3倍増になったビジット・ジャパン事業費約86億円の大半を東アジア4市場に投入している。事業仕分けのあおりで11年度予算案では約60億円に減額されたが、その3分の1は中国市場向けの訪日旅行促進緊急プロジェクトに充てる方針だ。政府間では、良質で豊富なメニューを提供できる日本の旅行会社が中国国内で営業できるよう、国土交通相名で中国政府に要請している。

 さらに、国内受け入れ体制を改善するため、自治体と連携して多言語情報を提供する電子看板の増設、特に中国語の案内や放送、中国語ガイドの充実に力を入れる。

 旅行の案内を業としてできる通訳案内士は国家資格が必要で、外国語能力や歴史、地理の知識などが求められる試験のハードルが高く、登録者数は09年時点で1万4559人にとどまっている。そのうち9953人は英語で、中国語は全国で1678人しかいないのが現状だ。そのため、特区内では研修を受ければ有償で通訳ガイドができるようするため、今通常国会に関連法案が提出されている。

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