辛亥革命100周年で訪問した上海で聞いた大震災の衝撃
野党も必要な協力は惜しまない
孫文〔PHOTO〕gettyimages

 3月11日、上海の復旦大学で、辛亥革命100周年を記念して、「辛亥革命100周年と日中関係」という講演をした。国際関係学部の日本研究センターの教室には120人の学生、研究生などが集まり、熱心に講義を聴いてくれた。講演の後も、質疑応答の時間を設け、率直な意見交換ができた。

 私の講演のポイントは、国際社会が大きな変貌を遂げていること、大国となった中国は、国際社会の新しいルール作りに積極的に参加すべきであるということである。また、孫文の革命を、宮崎滔天、梅屋庄吉、頭山満、犬養毅など多くの日本人が助けた歴史を紹介し、その後の不幸な日中戦争にも言及した。

 学生諸君の質問も多岐にわたったが、日本で外相が前原氏から松本氏に代わったことで、「松本とはどんな人、日本の外交政策は変わるのか」という質問があった。中国では、前原前外相の評判がすこぶる悪く、せめて新外相が日中関係の再構築をすべきだという期待が高い。私は、「副大臣から昇格した人で、外交政策に変化はない。今の民主党政権の人材不足を象徴している」と応えた。

 また、日本の留学生からは、日本の政策決定に時間がかかりすぎて、世界で存在感がなく、日本人として恥ずかしいという指摘もあった。まさに、その通りで、与野党間のみならず、民主党内で足の引っ張りあいをしている今の政治状況を説明した。

 上海に行く前に、北京では戴秉国国務委員や王毅元駐日大使と会談をした。戴秉国氏は、副首相格で、中国外交の総元締めである。1時間15分という異例の長い会談となったが、日中関係に関わる多くの問題について、率直に意見をぶつけあった。かなり緊迫した場面もあったが、お互いの考え方の違いが明らかになって、むしろ有益であった。

 戴秉国氏は、昨年の12月に「中国の平和的発展の道」という論文を発表し、その中で 、「中国がアメリカに代わって、世界で覇権を唱えるという見方があるが、これは神話だ。世界のリーダーにならない、覇権を争わない、覇権を唱えないというのが、中国の基本的な国策であり、戦略的な選択だ」と主張した。

 私は、覇権を唱えないのは結構だが、今や中国はGDPでも日本を抜いて世界第二位になったのだから、大国としてきちんと国際責任を果たすべきだということを強調しておいた。中国がくしゃみをすれば多くの国が風邪を引くと私が言うと、戴秉国氏は、GDPで世界第二にとはいえ、まだまだ中国は発展途上の国だと言い返すことを忘れなかった。

 王毅氏は、今は中国共産党中央台湾工作弁公室主任及び国務院台湾事務弁公室主任の要職にある。台湾問題の最高責任者である。台湾が国民党の馬政権になってから、中台関係が一定の進展をみせ、今や両岸間で、日中間を超える年間700万人の往来があることを指摘した。時間をかけて問題を解決する方針のようである。

 昨年来、日中関係がぎくしゃくしているが、今年は辛亥革命100周年、来年は日中国交正常化40周年の記念すべき年である。これを機会に悪化した両国関係を、率直な対話を通じて好転させる努力を今後とも続けたいと思う。

人命救助、復興支援に全力を

 ところで、11日に、復旦大学で講演した後、教授たちと大学の食堂で昼食をとり、一息ついていたときに、日本の大地震の第一報が入った。交通遮断の中、翌日夜には何とか東京に戻ってくることができた。被害の甚大さに驚愕している。

 政府は、人命救助、被災者の生活支援、復興に全力をあげるべきである。11日と言えば、菅首相にも外国人からの献金が明らかになり、大問題に発展するところであった。それが、この大震災である。「これで政権が延命できる」などと民主党首脳が些かでも考えるならば、言語道断である。火事場泥棒的に問題の多い予算案を通そうという魂胆が見え隠れしている。

 国家国民の危機に当たり、野党も政治休戦ということなのである。権力を握っている政府が全責任を追うことは当然であるが、われわれも必要な協力は惜しまないつもりである。

 しかしながら、菅内閣の初期対応を見ていると、国政の他分野と同様に、危機管理についても、全くの素人だということがよく分かり、愕然としている。

現代ビジネスブック 第1弾
田原 総一朗
『Twitterの神々 新聞・テレビの時代は終わった』
(講談社刊、税込み1,575円)
発売中

amazonこちらをご覧ください。

楽天ブックスこちらをご覧ください。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら