地震・原発・災害
巨大地震で吹き飛んだ「菅直人退陣」のカウントダウン
政権も己の力を過信ぜず、野党も口をつぐまず、衆知の結集を
将来の日本のためにいまこそ衆知を結集してほしい 【PHOTO】getty images

  千年に一度といわれる東日本巨大地震は政治の風景をも一変させた。一刻も早い被災地の人命救助が、なにより優先されることはいうまでもない。カウントダウンに入っていた首相・菅直人の退陣は遠のいた。

  被災した市町村の名前を聞くたびに、その地域を選挙区とする衆院議員の顔を思い浮かべてしまうのは政治記者の性(さが)だ。青森県八戸市は自民党副総裁・大島理森の地盤だ。岩手県大船渡市、陸前高田市から黄川田徹(民主)が選出されているが、両市は中選挙区時代、民主党元代表・小沢一郎の強固な地盤であり、今も影響力が強い。

  宮城県気仙沼市は自民党の小野寺五典、石巻、東松島市は民主党国対委員長・安住淳、白石、名取市は橋本清仁(民主)、福島県相馬、南相馬市は石原洋三郎(同)の選挙区。東京電力福島第一原発がある福島県大熊町、双葉町は吉田泉(民主)だ。被災地の小選挙区ではいずれも民主、自民両党の議員が選ばれている。地元の代表という点で、党派の垣根はない。

「町民1万人が安否不明」と伝えられる宮城県南三陸町(人口約1万7400人)で私は昨年11月3日、「南三陸町合併5周年記念講演会」の催しに招かれ講演した。東北新幹線のくりこま高原駅で降りて公用車で同町に移動したが、町中に入ると、リアス式海岸脇の道路をうねりながら走った。太陽の光を反射させてキラキラと輝く海と、海にせまった小高い山々の森林とのコントラストが鮮やかだった光景がまぶたに浮かぶ。

  あの町の変わり果てた姿がテレビ画面に映し出される。高台にあった講演会場の南三陸町スポーツ交流村文化交流ホールはどうなっただろう。講演を聞きに来られた450人の町民のご無事を祈らずにはおれない。



  現段階で民主党も自民党も公明党も、議員に取材すると方向感覚を失い、悲惨な光景に圧倒されながら手探り状態だ。今、政局の話を大っぴらにしようものなら袋だたきに遭いそうで、とりあえず、菅政権の動きを心配げに見守るほかない状況になっている。

  その中でも確実に言えることは、年内の可能性もあった衆院解散・総選挙が任期満了近くになることだ。被災民が投票所に行けるような状態になるのはいつか、すぐにはめどがたたないだろう。

 一方、2010年の国勢調査に基づく衆院小選挙区の区割り見直しを進めている政府の衆院議員選挙区画定審議会が勧告案をまとめるのは来年2月。新しい区割りが発表されれば、現在の区割りでの選挙は困難になり、区割り法案が成立するまで総選挙は事実上不可能だ。その後の周知期間を3カ月とするなら、解散・総選挙が可能になるのは選挙制度上も来年秋以降にずれ込まざるを得ない。

これからの2年に何をなすべきか

  菅は来年9月の民主党代表選、あるいは総選挙まで政権を維持することが可能になった。

  地震が発生した当日午前に在日韓国人からの献金が発覚し、予算が月末に成立したらいつ退陣しても不思議ではない状況だった。だが、社会保障と税の一体改革、太平洋連携協定(TPP)への参加問題に加えて、巨大地震による未曾有の被害という困難も加わった今、民主党政権、とりわけ菅はその任に堪えられるだろうか。

  この1年半余の政局運営、とりわけ菅の言動を振り返る時、大丈夫かという不安が頭をもたげるのを禁じ得ない。福島原発の爆発事故で早くも後手に回ったり、事実の公表が遅れたりしている。

  もともとイライラしがちな菅がこの難局を逆手にとって、政府が決めたことに野党が賛成しないのはおかしいと迫るような愚を犯したりしないだろうか。あるいは、野党側が空気に流され、政府の方針を何でも受け入れるようにならないだろうか?

  ここは、日本の政治家の衆知を集めて対処するべき時だ。政権側が己の力を過信して野党に協力を強要するのではなく、野党も口をつぐんでしまうのではなく、これから約2年の間に何をなすべきかを考え、かつその仕組みをつくってほしい。

  後世、あの政権は、いやあの時に国会議員だった人たちは何をしていたのかと言われないために-。(敬称略)
 

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