米クラウド業界をふたたび探訪する(1)
クラウド・エコシステムはアマゾンをつぶせるか

 最近、シリコンバレーでは『クラウド・エコシステム』という言葉が流行している。サンノゼやサンタクララなどで開催されるIT会議や展示会に行けば、この言葉を良く耳にする。なんとなく聞き流してしまいそうだが、同業界のキャッチフレーズがクラウド・コンピューティングからクラウド・エコシステムに変わったのは、それなりの理由がある。その裏には、パブリック・クラウドが「アマゾンの一人勝ち」に向かう現状をなんとか食い止めようとする駆け引きが隠されている。

クラウドの基本:超集中と超分散

 クラウド・エコシステムの話に入る前に、簡単にクラウドの説明をしておこう。

 クラウドは、今後情報処理システムの主流となる---と言っても、日頃パソコンしか利用しない私たちにはなかなか縁のない世界だ。しかし、知らない間に、クラウドは携帯電話やタブレットなどで私たちの生活に大きな影響を与えている。また、市場競争でもクラウド企業システムの優劣は重要な要素となってゆく。既存のIT機器を開発する上でも、新サービスを開発する上でも、クラウド・ビジネスの発想は重要になる。

 では、クラウド・イノベーションの本質とはなんだろうか。

 まず、サーバーや記憶装置は一般企業のオフィスから消え去り、データセンターに集積される。たぶん、クラウドは近い将来、家庭からもデスクトップやファックス、コードレス電話などの機器を奪い去るだろう。当然、ソフトウェアやアプリケーションもデータセンターに集約される。ユーザーはブロードバンドを使い、パソコンだけでなく、タブレットや携帯電話などで自由にアプリケーションを使うことになる。

 また、人ばかりがクラウドのお世話になるわけでもない。各家庭やオフィスにある電力メーターや照明機器、空調機器やネットワーク機器、テレビやラジオなどのAV機器なども、クラウドを使って通信する。これをMachine-to-Machine Communication(M2M)とかInternet of Things *1などと呼んでいる。

 クラウドを理解する上で欠かせないのは「超集中と超分散」のペアリング(両輪)だ。超集中とは、サーバーや記憶装置、アプリケーションがデータセンターに「超集中」することを指す。一方、ブロードバンドのモバイル化や端末の多様化によって、いつでも、あらゆる場所から利用できるようになる。つまり「超分散」が同時に進行する。クラウドは、このふたつがペアになったコンピュータの利用方法だ。

*1 Internet of objectsとも呼ばれる。狭義にはMIT(マサチューセッツ工科大学)に本拠を置くAuto-ID Center(RFIDの業界団体)が提唱したセンサーネットワークなどの動きを指す。しかし、最近はInternet of Thingsとして、もっと広い意味にも利用されるようになっている。

 では、「超集中と超分散」の世界はどんなIT社会だろうか。たぶん、クラウドという巨大なデータセンター群に、あらゆる電子機器が接続されて、それがひとつのコンピュータのように機能するというサイエンス・フィクションめいたイメージが適切かもしれない。

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