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超ヒット商品  三洋電機『GOPAN(ゴパン)』を開発した男
買いたくても買えない

 家庭にある生の米でパンが焼ける『GOPAN』。開発したのは炊飯器のエンジニアだった。これまで何度も家電に革命をもたらした男が、その発想法を伝授する。

発売にこぎつけるまで7年

「先に水を入れてしまえば良い、と気づいたのは私が米のことを熟知していたからだと思います。

 まず米粉をつくらなければパンをつくれない、と他の開発者は思い込んでいたんでしょう」

 そう『GOPAN』(三洋電機)の開発エピソードを語る下澤理如氏(63歳)は、〝米炊きおじさん〟の愛称で知られる、炊飯器の天才エンジニアだ。昨年10月、会社を離れる寸前に開発したこの『GOPAN』が、三洋電機への最高の置き土産となりそうだ。

 どの家庭にもある生の米から、全自動でパンが作れる、世界初の〝ライスブレッドクッカー〟『GOPAN』は、あまりの売れ行きに生産が追いつかず、いまや予約受付さえ中止しているという。

「'10年の10月から予約を開始したんですが、11月11日の発売日には初回出荷分が予約で一杯になってしまって。発売すると、わずか2週間で半期の生産目標5万8000台分の予約が入ってしまいました。現在は春に予定している販売再開に向け、急ピッチで増産態勢を整えているところです」(三洋電機広報部)

 家庭でパンをつくるホームベーカリー市場全体で年間45万台というから、この予約台数は驚異的だ。

 なぜここまでのヒットになったのか。家電コーディネーターの戸井田園子氏はこう説明する。

「はじめて見たとき、これは売れる、と直感しました。普通ホームベーカリーは2万~3万円台の価格帯なのですが、『GOPAN』は実売価格で約5万円。正直言って安くはありません。

 優れているのは、家庭にある米でできることと、そして一般的なパン焼き器と同様に小麦でもパンが焼けるところです。

 今の消費者はなにより損を嫌います。だからもし米パンが気に入らなくても普通のパン焼き器として使える、という点が響いたのではないでしょうか」

 こんな革命的家電『GOPAN』も、誕生まで一筋縄では行かなかった。

「まず米粉からパンをつくる商品をつくりました。でも当時はそもそも米粉が手に入れにくい上、価格も小麦粉の約3倍と高いので、小麦アレルギーの方以外にあまりニーズがありませんでした」(前出・広報部)

 プロジェクトをスタートさせたのは'03年。だが製品が発売に至ったのは'10年。実に7年もの間、開発は難航を極め、一時は中止も検討された。