小沢一郎がオバマとの会談に固執する理由
「師匠」金丸信は大統領会談の翌年に逮捕

 嫌疑不十分で不起訴処分となった小沢一郎民主党幹事長は、2月8日の定例会見で5月訪米の意向を明らかにした。

 小沢氏は2月2日、来日中のカート・キャンベル米国務次官補(東アジア太平洋担当)と国会内で会談した際にゴールデンウィーク期間中の訪米を要請されたとして、この日の会見で改めて、米側からの正式要請であり、行くからにはオバマ大統領との会談を設営して欲しいと申し入れていることを明らかにした。

 55年体制下の自民党政権を含め、これまで、米国大統領がわが国の政権党幹事長と会談した例はない。

 唯一の例外はパパ・ブッシュ政権下の92年6月、金丸信自民党副総裁(当時)が訪米、ブッシュ大統領と会談したケースである。

 「政界のドン」といわれた金丸氏だが、それまで再三、大統領に面会を申し込みながら、果たせずにいた。

 面会後、ホワイトハウスを退出した金丸氏は「やっと米国もオレを認めてくれた」と落涙したという有名なエピソードがある。つけくわえるならば、その金丸氏は翌年に東京地検特捜部に逮捕され、失脚した。

 小沢幹事長は、そうした米国のプロトコールも熟知しているはずだ。たとえ鳩山由紀夫政権の最大実力者であっても小沢・オバマ会談実現がそう簡単ではないことは、当然、理解している。ではなぜ、この時期に敢えて米大統領との会談に意欲を見せたのか。

 昨年12月10日、小沢幹事長は民主党国会議員143人を引き連れて訪中、胡錦濤国家主席(共産党総書記)と会談した。

 さらには元旦には166人の国会議員と主要マスコミ幹部を東京・世田谷の自宅での新年会に招待した。政治力を誇示する小沢流パフォーマンスである。検察との全面対決がヒートアップしていた年末から年初にかけ、「数は力なり」と存在感を見せ付ける意図があったのだろう。

 そしてその延長線上に、この訪米案があるのだ。今回の狙いは何なのか。誰を牽制しようというのか。引き続き、東京国税局の協力を得て小沢氏の所得税法違反(脱税)容疑を潜行捜査しているとされる東京地検特捜部を視野に入れてのことなのか。

 それとも、鳩山政権発足後2回目の官邸訪問となった8日の鳩山首相との会談で表ざたになっていない何かがあるのか。「予算国会」会期中の現在、来る7月の参院選に向けての秘策でもあるのだろうか。

信頼できる側近がいない

 それにしても、である。小沢氏は孤独な闘いを強いられている。相談しない、説明しない、説得しない小沢氏ではあるが、信を置く側近がいない。政治師匠である田中角栄元首相には、「金庫番」佐藤昭子がいた。角栄の愛人であり、政治的同志でもあった佐藤は力もあった。

 角栄に「佐藤を切れ」と諫言した西村英一自民党副総裁に対して80年の衆参ダブル選挙時に九州地建局長出身の田原隆をぶつけて落選させたほどである。また田中には、早坂茂三もいた。早坂はマスコミ対策だけでなく、財官界のネットワーク確立、そして何よりも情報収集に長けていた。

 小沢氏には、「佐藤昭子」も「早坂茂三」もいない。敢えて側近といえば、小沢周辺で「知恵袋」として知られる平野貞夫元参院議員ぐらいである。

 長く衆院委員部長を務めた平野氏は前尾繁三郎衆院議長秘書をも歴任したことから、前尾法相秘書官だった則定衛・元東京高検検事長と親しく、小沢氏の不起訴処分に当たって囁かれた小沢氏側と検察首脳の「裏取引」説で則定氏の名前が取り沙汰された。

 いずれにしても、小沢氏は孤立無援の闘いを余儀なくされているのは事実である。

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