川口マーン惠美「シュトゥットガルト通信」

「欧州安定金融ファシリティー」の拡充を苦渋の末に可決し、ギリシャ問題に翻弄されるドイツ

2011年10月07日(金) 川口マーン惠美
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〔PHOTO〕gettyimages

 ドイツのテレビの街頭インタビューで、「EFSFとは何の略だか知っていますか?」という質問に対して、道行く人が皆、「わかりません」とか、「え、何それ?」と答えている。やらせではないかと思うほど、知らない人が多い。EFSFとは、European Financial Stability Facilityの略で、日本では「欧州安定金融ファシリティー」と訳されている。2010年5月、アイルランド、ギリシャといった国の財政危機が明るみに出たあと、EUがユーロ圏の国に資金援助をすることを目的に作った組織で、ドイツのニュースにここのところ毎日出てくる言葉だ。

 先月29日、ドイツの議会はギリシャに対する次の資金援助のため、このEFSFの拡充を苦渋の末に可決したばかりだ。EFSFが発行できる債券(欧州金融安定化債)の枠はこれまでは4400億ユーロだったが、今後7800億ユーロに拡大される。それによって、ドイツが保証する額も1230億ユーロから2110億ユーロに増加。つまり、ギリシャが立ち直れなかった場合、ドイツが失う金額は大きい。しかもギリシャは、この援助なしには10月中にも債務不履行で破産してしまう。これは当のギリシャのパパンドレウ首相が言っているのだから間違いない。

 EFSFの拡充にはユーロ圏の全17ヵ国の承認が必要だが、オランダとスロバキアがまだ承認していない。オランダは問題ないと見られているが、スロバキアではこの決定が権力争いの道具に使われている模様で、状況がよく見えない。ユーロ圏はスロバキアにかなりの圧力をかけているが、こんな弱小の新参国に足を引っ掛けられる危険性を包含するEUの構造自体に、問題があるような気がする。

 さて、しかし問題はこれだけではない。10月2日になってギリシャの財務大臣ベニゼロスが、「今年と来年は赤字緊縮の目標は達成できない」と発表した。この目標達成こそが、次の支援の条件になっていたのに、ギリシャは宿題をできなかったのだ。

 では、罰として援助は無いのかというと、そう簡単にはいかない。ギリシャが破産すると、EU全体が計り知れない困難に陥るから、それは絶対に困る。ドイツ語でこういう状況を「悪魔の堂々巡り」という。悪循環よりももっと絶望的な感じがする言葉だ。

 ギリシャの財務大臣ベニゼロスは、今年6月に、にっちもさっちもいかなくなったギリシャ財政を立て直すお助けマン、もっと正確に言うなら、国民に有無を言わせず、しかも、EUの舞台で折衝のできる政治家として抜擢された人物だ。見かけはギャングの親分のようだが、ギリシャでは抜群に切れるやり手の政治家らしい。

 EUの財務大臣は、皆この半年間、とにかくギリシャ問題に掛かりっきりだ。それこそ休日返上で、しょっちゅうルクセンブルクに集まっては会議ばかりしている。財務大臣としての通常業務はいったいどうなっているのかと心配になるほどだ。それでも一向に名案は閃かない。

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