金融・投資・マーケット
「世界不景気モード」下での資産運用戦略ーーいま私がファンドマネージャーならこうする
海外の長期金利の低下に要注意
〔PHOTO〕gettyimages

 株価が冴えない。10月4日の東京マーケットでは、日経平均が一時8,500円を割り込む展開になった。東証一部の株価純資産倍率(PBR)は、下値の目処として意識されることが多い1倍(日経平均で約8,994円に対応する)をすでに割り込み、0.95倍を下回っている。

 現在の主流の投資資金は、世界的に国際分散投資を行う海外機関投資家の資金なので、彼らが株式のポジションを落とす際には、日本株への投資ポジションも自動的に削減されることになるので、国内の投資家が「下値の目処は幾らであるか」と思考を巡らせても、あまり役に立たない。

 東証は、かつての感覚でいうと、香港あたりのように、ニューヨーク市場の上下をそのまま映すことの多い、「ローカル・マーケット」の価格形成になっている。

 もちろん、こうした中にあっても、個別には優れた企業は存在するし、こうした企業の株価は長期的には(相対的に)上昇するはずだが、そうした企業を「事前に」見つけることは、株式運用者の努力の対象ではあっても、それを運用計画に組み込んで資金を運用する訳には行かない(大きな資金の場合は、特にそうだ)。

 株価の下落要因は、世界的な景気後退への懸念ということに尽きる。10月3日の『日本経済新聞』の朝刊の1面に載った、「世界変調、景気に試練」、「しぼむ外需 円高重荷」という二つの見出しが、世界と日本の状況を的確に要約している。

 日本の場合、今後、震災の復興需要を見込むことが出来るので、相対的には悪くないはずだが、世界の景気が悪化する中では、日本企業の得意な耐久消費材の需要が敏感に縮小するので、日本の株価は、価格形成面でも、ファンダメンタルズの面でも、世界の景気後退への懸念にまともに付き合わざるを得ない。

 世界の成長率見通しは、現在引き下げが相次いでいる。例えば、米ゴールドマン・サックス・グループは、2012年のユーロ圏の経済成長率を従来のプラス1.3%からプラス0.1%に大きく下方修正した。欧州経済の失速から、ドイツ、フランスの景気が後退し、この影響を受けて、米国もリセッションに陥る可能性がある(同社は「40%」といっている)としている。

 欧州は、仮にギリシャの問題が「秩序あるデフォルト」によって大手銀行の破綻が生じないようなソフトランディングが出来たような楽観的なシナリオに賭けるとしても、今後、金融機関がリスク回避的になることに伴う信用の収縮と需要の後退が雁行して起こるので、「不景気」は避けられそうにない。

 EU(欧州共同体)諸国が、個別の「国」を助ける形を取るのか、国ではなく「銀行」を守る形を取るのか、何れの形を選択するとしても、政治的な要因で大胆には動けない可能性が大きく、金融機関が破綻に至って、リーマンショック後に似た、急性の「流動性危機」を伴うショックが起こる可能性も否定できない。

 一方、米国も、来年の大統領選挙前に、景気対策のための財政出動や追加の金融緩和を許したくない共和党サイドの利害関係を考えると、リセッションを政策的に食い止めることが難しい。

 状況の変化を受けて、エコノミストの間では、中国の経済成長見通しも引き下げられている。全世界的な景気の下方修正だ。この種の予想には、景気後退予想自体が現実の景気後退を呼ぶ効果もある。

外国債券のポジションを積み増す理由

 こうした状況下で、それでも資産運用の戦略を考えるとすれば、どうするか。仮に、読者が、内外の株式にでも債券にでも投資できるバランス・ファンドを運用しているとすれば、何か戦略を考えなければならないが、どのようなゲームプランで戦うことをお考えになるだろうか。

 筆者が、ファンドマネジャーであるとすれば、おそらく外国債券のポジションを積み増すだろう。

 欧州で起こっていることにも、米国で起こっていることにも、背景には、不動産バブルによって生じた不良債権および不動産価格の下落に伴って起こる逆資産効果がある。端的に言って、前者の処理は十分に進んでいないし、後者の影響もまだまだこれから表れそうだ。また、前述のように、流動性が一時的に枯渇するリスクに対する備えの意味もあり、金融機関はリスクを取った融資に対して消極的になるはずだ。

 また、企業の側も、需要見通しのリスクを考えると、借り入れの拡大を伴う積極的な設備投資には出にくく、民間の信用(端的に言って「銀行貸出」)は縮小する方向に向かうだろう。

 一方、政府の財政は、景気後退で税収が減ることに加えて、景気対策への支出もあって、悪化が見込まれ、国債の発行額は増えるだろう。しかし、民間の資金需要の縮小が急激である場合、増発される国債は簡単に吸収される公算が大きく、まして、欧・米共に政治的な要因は政府債務の拡大に対して抑制的に働きそうだ。

 民間への信用が、政府への信用に肩代わりされる中で、国債に対して「意外に」根強い需要が続いたのが、バブル崩壊後の十数年間で、日本の経済で起こったことだった。この間、政府債務の拡大を材料に、財政破綻説を唱えたり、長期金利の暴騰のリスクをはやしたりして、国債を空売りした向きは、見通しを外して損をした。

 米・独・英の長期金利は、現時点で既に異例な低水準であるが、さらに「意外な」水準まで下がる可能性が十分あるのではないだろうか。

 筆者がバランス・ファンドのファンドマネジャーなら、日本債券のポジションを落として、先進国の長期債を、はじめは国債を中心に買ってみたいと思う。

 日本の国債は、頑固にデフレ好きの中央銀行や、日本の低成長を考えると相対的に堅実な投資対象で、長期金利はさらに低下するかも知れないが、これらの材料は投資家に知れ渡っているし、現実に金利の低下余地が大きくないので、少なくともオーバーウェイトする気にはなれない。為替ヘッジ付きの外債で一部代替する形で、ポジションを取ってみたい。

 気分的には、内外の株式もポジションを落としたいが、既に暗い見通しに市場参加者の見通しが一致している時に、さらに相対的に株式組み入れ率を下げて勝負するのは怖い。「株式では、おそらく損をするだろうけれども、ライバル並みの損ならいい」と割り切ることになるのではなかろうか。

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