Google Employee Number 59
創設初期を知る社員の告白手記「グーグルの秘密を明かそう」
(PART.3)

from The Sunday Times Magazine サンデー・タイムズ・マガジン UK Text by Douglas Edwards
98年に2人の大学院生が始めた会社グーグル。創設の翌年に59番目の社員としてこの会社で働くことになった男が、エネルギー溢れる職場の様子を回想する。
限りなくユニークで野心的な企業の原動力はどこからくるのだろうか?

「思い込み」を捨て去ること

 長年、広告やメディア業界でブランド構築にかかわる仕事をしてきた私にとって、自分が信じてきたマーケティングの"真理"を捨てることは簡単ではなかった。

 具体的に言おう。私は毎日のようにグーグルのロゴが絶対不可侵のものであるとくり返していた。だから、サーゲイがグーグルのホームページのロゴで遊びたいと言ったときには断固として反対した。当時、グーグルのユーザー数は数百万人に達していたが、彼らの脳裏にグーグルのロゴが焼きついているかといえば疑わしかった。だが、サーゲイには、そんなことはどうでもよかったようだ。

「宇宙人はどうかな? ページの宇宙人の姿を毎日変えていく。そうしたらマンガを読むみたいに、毎日サイトを訪れる人もいるんじゃないかな」

 私はサーゲイにそうしたやりかたがいかに悪いブランディング手法であるかをくり返し説明した。その後、サーゲイがロゴに関してなにも言わなくなったので、私は説得に成功したのだと思っていた。だが、それは間違っていた。サーゲイは自分の考えを二度言うのが嫌いなだけだった。

 結果として、グーグルのユーザーはロゴのアートワークがランダムに変わることを大歓迎した。マンガ的なキャラを登場させ、殺伐としたインターフェースを人間的にするというグーグルの戦略は見事なものだったといえる。

 私は自分が絶対に正しいと確信していたのだが、明らかに間違っていたことに気づいた。従業員の思い込みや成功体験に基づいたアイディアを無視し、本当にそれが正しいのか、むしろそうした思い込みが物事をダメにしているのではないかと問うのが、グーグルの方法だった。

 グーグルは毎年、従業員全員でスキー旅行に出かけていた。私は最初の年の旅行には参加しなかった。旅行の目的が「チームを結束させること」である以上、参加できるのは従業員だけで、家族を同伴することができなかった。妻のクリスティンは、これが気に入らなかった。というのも、妻が会社にきて昼食を一緒に食べたときのことだが、食堂に薄手のハーレムパンツからTバックが透けている若い美女が現れたのだ。

「あれは誰なの?」

「エンジニアだよ。バイクにも乗るんだよ・・・」

 そんなわけで、従業員だけで" 親睦を深める"旅行を妻が承知するはずがなかった。

 翌年、行かなければキャリアが傷つくからと妻を説得して、私は旅行に参加したが、そこでの" 解放された"社員たちの乱痴気騒ぎは忘れられない。下着を身につけていないことを見せたがっている男たちの群れに、他の従業員に馬乗りになって尻を鞭打つ女性営業担当。廊下で四つんばいになって吠えていた幹部もいたらしい。あの旅行は、いまも私の大事な思い出である。

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