再生可能エネ法施行へ課題が山積
[エネルギー]どうする買い取り価格、不安定な質と量・・・。

約7万枚の太陽光パネルが整然と並ぶ関西電力の堺太陽光発電所

 夏の電力不足はどうにか乗り切ることができた。電力供給にまつわる次の課題は、定期点検後の原子力発電所の再稼動だが、中長期的には再生可能エネルギーの活用も重要なポイントだ。菅直人前首相の退陣の引き換えとなった格好で再生可能エネルギー特別措置法が成立した。来年7月には施行となる。ただし、普及を促すには課題も数多く残されている。

 太陽光や風力、地熱、木材など生物由来のバイオマスが再生可能エネルギーで、これを発電にもっと利用することが、再生エネ法の目的だ。このうち太陽光発電は、一般家庭でも屋根に発電パネルを取り付ければ可能となるため、脚光を浴びている。

 もともとは宇宙空間で衛星などの電力を得るために米航空宇宙局(NASA)主導で開発されたものだが、それを地上での発電に活用しようと研究を進めてきたのは日本のメーカーだった。

 しかし、設置への補助金が打ち切られたことなどから、1位を続けていた太陽光による日本の発電量はドイツやスペインなどに抜かれ、今では中国や米国に中心が移っている。

 風力の場合は、発電に適しているのが北海道と九州とあって、もともと取り組みが弱かった。潜在的に優位にあるはずの地熱の利用も、国立公園内での開発の問題や温泉への影響などから、あまり進んでいないのが実情だ。

 ところが、東京電力の福島第1原子力発電所の事故を受け、原発への依存度を下げる必要から、たとえ高コストであっても再生エネルギーの利用拡大に努めなければならなくなり、再生エネ法の成立につながった。

 これまでは再生可能エネルギーで発電された電力のうち電力会社が買い取るのは、自家消費で余る分だけだった。再生エネ法の施行により電力会社の買い取り範囲が広がり、自家消費に伴う余剰電力だけでなく、全量販売を目的とした発電事業者からのものも買い取りの対象となる。

 これによって再生可能エネルギーによる全量売電を目的とした発電事業が営めるようになる。電力会社も、買い取りコストはそのまま電気料金に上乗せして回収することになっているため、抵抗しにくい。

 この方式によりドイツやスペインなどは再生可能エネルギーによる発電を大幅に増やすことができた。だからといって日本で同じような状況がすぐに出現するとは限らない。

 まず、買い取り価格の設定だ。高く設定すれば、発電事業への新規参入が拡大するだろう。ただし、その分、電気料金に転嫁される金額が増える。

 もともと日本の電気料金は高いうえ、更に負担が増えるとなると、電力多消費型産業には配慮するとは言っても、経済界は反発するだろう。

 一方、逆の所得再分配になるといった問題もある。太陽光パネルを設置できるのはそれなりに資力のある家庭や事業所だ。そこで発電した電力は、電力会社を通じて販売されるが、電気代を支払う中には資力に乏しい家庭や事業所も多い。「お金持ちに貧しい人たちが資金支援を行うようなもの」という批判がもともとあった。

 買い取り料金を高く設定すれば再生可能エネルギーの活用は進むだろうが、金持ち優遇の批判が強まるかもしれない。買い取り価格をどの水準に設定するのかは、難しい問題をはらんでいる。

 太陽光や風力による発電は、量と質が不安定で、そこから生じる問題もある。

 日照や風が強い時に発電量は当然増える。しかし、それは需要増加とは連動しない。また、太陽光や風力による発電は電圧や周波数が一定ではないという質の問題もある。その変動を吸収できればいいが、できない場合はどうするのだろうか。

 日本の電力供給は、電力会社ごとにつくられた独立したネットワークによって行われている。電力会社ごとのネットワークを結んで相互に電力を融通するための連携用送電線も設置されている。しかし、西日本と東日本の間にある周波数の壁の問題もあり、容量が限られ融通できる電力量には限界があるのが現実だ。

 そのため、供給電力の規模に応じて、電力会社が吸収できる不安定電力の量には限界がある。再生可能エネルギーのうち潜在的な発電量が大きな風力の適地は、北海道と九州だが、電力供給の安定を維持するには、買い取る量を一定限度に抑えなければならない。東京、関西、中部の大消費地と結ぶ連携送電線の容量を拡大することにより問題は改善できるものの、そのコストを誰が負担するのかという問題を解決する必要がある。

太陽光パネルも中国製が低価格

 再生可能エネルギーの利用はコストがかさむものの、それが経済を活性化する効果もあると指摘されている。ただし、国産の太陽光パネルや風車は、価格競争力で中国製などに太刀打ちできないというのが実態だろう。設置工事などの業者は潤うかもしれないが、日本の製造業に大きく貢献するのかは疑問だ。

 太陽光や風力による不安定な電力を安定化するにはいったん蓄電池に送り、そこで安定した電力に変えるといったことも必要だ。

 また、通信回線を使って電力を使用する機器を制御し、電力の使用量を平準化することにより発電設備への投資を減らすといったことも推進すべきだろう。

 こうしたスマートグリッドと呼ばれている技術と組み合わせ、トータルで電力供給の効率化を進め、国際競争力を高めることが、産業の活性化には欠かせない。

 しかし、個々の要素技術には優れていても、総合力で弱いのが日本の産業界の特徴でもある。

 また、こうしたことは、電力会社が主導してきた電力供給の構造を転換することになり、電力会社としては、できるなら避けたいことだ。

 電力会社を上得意としてきた日本のメーカーが、電力会社が嫌うビジネスに果たして積極的に取り組むのだろうかということも押さえておく必要があるだろう。

 こうした問題を乗り越えていかなければならない。それを政治が主導できるのか。再生可能エネルギーの利用を拡大し原発への依存を減らしていけるかは、結局のところそこにかかっている。

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