燃費20・3キロを義務付ける新基準案
[自動車]欧米に対抗し20年度までに24%改善

日本の主な低燃費車 プリウス(トヨタ/右下)・フィット(ホンダ/左下)・マーチ(日産/右上)・デミオ(マツダ左上)

 経済産業省と国土交通省が、20年度までにガソリン1リットル当たり20・3キロ(JC08モード)の走行を義務付ける、乗用車の新たな燃費基準の原案を公表した。09年度の実績比(同16・3キロメートル)と比較すると24・1%の大幅な改善となり、自動車メーカーからは「厳しい」との悲鳴も聞かれる。だが、両省は「一層の省エネと二酸化炭素(CO2)の排出量削減を図りたい」としており、12年度にも新基準を導入したい考えだ。

 乗用車の燃費基準は、1979年にいわゆる「省エネ法」が制定されて以来、数回にわたって改定が行われてきた。98年の省エネ法改正では、その時点で商品化されている自動車のうち、最も燃費性能に優れる自動車をベースに技術開発の見通しなどを踏まえて基準を策定する「トップランナー基準」を導入。現在の基準は15年度までにガソリン1リットル当たり17・0キロとしており、新基準ではこれをさらに上回る厳しい数値目標が課されることになる。

 ただ、新基準ではメーカー側が強く要望していた新たな算定方式も導入された。

 厳しい目標値と合わせて導入されることになったのが、「企業別平均燃費基準(CAFE)」と呼ばれる方式だ。現行の基準は、乗用車を重量別に16の区分に分け、すべての区分でそれぞれに設定された燃費目標値を満たすことを求めていた。これが、新基準では目標に届かない重量区分が発生した場合でも、メーカーごとに販売した車の燃費の平均値が全体目標を達成していればよいことになった。

 このCAFE方式は、欧米でも採用されているいわば世界標準。販売台数に応じた加重平均値を使うため、そのメーカーの売れ筋車種で大幅な燃費向上を達成していれば、未達の車種があっても全体では目標達成が可能になる。メーカーとしてはこれまで分散しがちだった開発費用を、売れ筋で燃費のよい小型車やハイブリッド車(HV)に集中できるメリットもある。

 経産省などが新たな基準を導入する背景には、燃費を向上させることで化石燃料の使用を極力減らし、地球温暖化を抑制する狙いがある。加えて、欧州連合(EU)や米国でも厳しい燃費基準の導入が進んでおり、国際基準に合わせると同時に、もともと燃費に優れた日本の自動車メーカーの技術開発を一段と加速させ、国際競争力をさらに高める狙いもある。

EU基準は20年度に24・4キロ

 EUは既に、20年までにガソリン1㍑当たり24・4キロとする新燃費基準を決定。米国でも25年までに同23・1キロの基準案を発表しており、世界的にも燃費のさらなる向上が求められている。測定方式などが異なるため数字だけで単純な比較はできないが、日本が導入を進める新基準も「欧米並みに厳しい」(経産省)という。

 自動車メーカーはどう受け止めているのか。

 日本自動車工業会(自工会)の志賀俊之会長(日産自動車最高執行責任者)は「各社が得意としている技術やセグメントに力を傾けることができる。特定のところで過達していれば、未達のところを救ってくれるので、ニーズの多様性に対応していける」と評価する。自工会の名尾良泰副会長・専務理事も「高いハードルだ」と前置きしたうえで「燃費は商品競争力の大きなファクターになっている。何が何でも乗り越えなくてはならない」と話す。

 自動車の燃費改善は、メーカーにとっても避けて通れない時代の流れになっていた。トヨタ自動車は世界に先駆け、97年にHVの「プリウス」を市販。現在の3代目プリウスの燃費は32・6キロと、現在国内で販売されている乗用車ではトップを走る。ホンダも昨年10月、売れ筋の小型車「フィット」にHVを追加。燃費も26・0キロと大幅に向上させた。

 三菱自動車と日産自動車は、ガソリンを使わない電気自動車(EV)の市販を開始。水素を燃料として発電し、モーターを駆動させる燃料電池車についても、トヨタやホンダなどで開発が進められている。

 ガソリン車の燃費向上も進んできた。マツダは今年6月、HV並みの低燃費性能を備えた次世代エンジンを実用化。新エンジンが搭載された小型車「デミオ」の燃費は25キロと、HVのフィットに迫った。マツダは15年までに平均燃費を08年比で平均30%削減する目標を掲げており、今後発売する新車には新開発の低燃費エンジンを搭載する計画だ。軽量化されたボディーや、燃費向上を後押しする変速機も開発中だ。ダイハツ工業が9月20日に発売した新型軽自動車「ミライース」も、ボディーの軽量化やエンジンの最適化で30キロの燃費を達成した。

 ただ、各社とも小型車やHVでは新基準を既に達成しつつあるものの、売れ筋のミニバンや、メーカーにとって収益性の高い大型車は新基準の目標値からはほど遠いのが現状だ。新基準は販売台数で加重平均されるため、低燃費車をより多く販売すればメーカーとしての達成は可能となる。しかし、小型車は収益率が低いため、数を売っても大型車の販売が減ると、会社全体の収益性が下がるというジレンマに追い込まれる。結局、こうした状況から「大型車の燃費改善もある程度は必要」(メーカー幹部)とみる向きもある。

 トヨタから出資を受ける富士重工業は、トヨタの技術供与を受けてHVを12年以降に販売する計画だが、新基準の導入がメーカー間の提携など、新たな再編の呼び水となる可能性もある。新規制を達成しつつ、いかに収益力を高めていくのか。自動車メーカーのかじ取りが今後さらに難しさを増すことだけは、間違いなさそうだ。

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