環境省に原発事故処理で白羽の矢
[原発規制]前例ない除染と、安全庁設置に取り組む、

高圧洗浄機で屋根にたまった放射性物質を水で押し流す塗装業者=福島市で8月25日

 福島第1原発事故の後始末となる「除染」と「原子力安全庁の設置」を、環境省が担当することになった。原発の推進と規制が経済産業省に同居してきた反省から、これまで「原子力村」にしがらみのない役所として白羽の矢が立った。しかし、逆に言えば原発関連のノウハウが全くないだけに「やりきれるのか」という不安が大きい。細野豪志原発事故担当相が環境相を兼務し、野田佳彦政権の最重要政策を担うわけだが、避難住民の帰還をも左右するこれからの事業には大きくて重い課題が待ち受ける。

発事故処理に取り組む細野豪志環境・原発事故担当相

 放射性物質を取り除く除染は、原子力災害対策本部(原災本部)での対応が先行した。事故で原発の敷地外が放射性物質で汚染される事態は想定外で、まず対処のための特別措置法を作って法的根拠を固めなければならなかった。だが、それでは除染が大幅に遅れるため、原災本部が8月26日に「基本方針」を決定した。

 基本方針には「国は責任を持って除染を推進」と明記。今後2年間の暫定目標を、汚染地域の年間被ばく量を約50%削減▽学校や公園などの徹底的な除染で子どもの年間被ばく量を約60%削減---と掲げた。原発から半径20キロ以内の「警戒区域」と20キロ圏外で年間線量が20ミリシーベルトを超える「計画的避難区域」の除染は国主体で、それ以外の地域は市町村や住民らが除染するとした。

 一方、著しい汚染地域のがれき処理や除染に対処する特措法が同日成立した。全面施行は来年1月で、それまで準備を重ねて原災本部の基本方針を引き継ぐ。

 特措法は環境相に、除染などの基本方針を策定し、閣議決定を要請。汚染がれきや焼却灰、除染対象の土壌などの処理基準を設定し、国ががれき処理や除染をすべき地域の指定などをして対策を実施する、などと定められている。

 つまり特措法の制定で、「原発事故による放射性物質の環境汚染」への対処は、環境省の担当と明確に位置づけられた。他の有害化学物質による環境汚染と同じとの解釈だ。同省は今後、今回の事故の特措法だけでなく、他原発の事故も想定した恒久法を策定する方針だ。

100人規模の「福島支所」

 除染などのため、環境省は今年度の第3次補正予算案と来年度予算で、大幅な人員増などを求める。福島市内には少なくとも100人超の「福島支所」を設ける予定で、既に幹部と数人の職員による連絡所を設置した。今後は、除染作業に伴う発注事務などの拠点とする方針だ。

 今回の除染は、世界的にも先例がない大規模なもので、しかも成否が避難住民の帰還に直結する。同省幹部は「技術的に手探りで、トライ&エラーの繰り返しになるかもしれない」と漏らし、確実な見通しがないことを認めている。

 さらに「最大で1億立法メートル」ともされる膨大な除染後の土壌や焼却灰を、どこで処分するのか。政府は「仮置き場」「中間貯蔵施設」を福島県内に設置したい考えだが、地元は猛反発した。しかしこうした施設がなければ除染が進められないのも事実で、環境省は住民説得という厳しい役回りを担わされそうだ。処分量を減らすため、土壌や焼却灰の減容技術の確立も求められるが、これも先例がない。

 政府全体の統括も問われる。

 既に福島県内の自治体や国土交通省、文部科学省、農林水産省が所管部分の除染をはじめており、今後、不都合が出てきた場合に責任の所在が曖昧になる可能性もある。政府内には「環境省は放射性物質を取り扱ったことがなく、除染のノウハウもない。仕切れるのか」と懐疑的な見方も強い。

 これに対し環境省幹部は「土壌汚染対策の実績がある」と反論する。いずれにしても実績を残して住民の早期帰還につなげられるか、同省にとっても正念場となりそうだ。

 もう一つの後始末は、原発規制機関の再構築だ。原子力安全・保安院を経産省から切り離し、原子力安全委員会と統合して「原子力安全庁」を設置、環境省の外局にする。来年4月からの発足を目指しており、環境省は原発について原子炉から建屋の外の一般環境までを一元的に規制する官庁に変貌する。新組織は約500人規模となる見通しだ。

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