政策金融改革を潰し、天下り金融機関を復活させる菅政権の噴飯
郵政民営化に続き、改革に逆行
もはや官僚にいいなり。脱官僚はどこへいったのか PHOTO getty images

 また政権末期での官僚のやりたい放題だ。新聞はあまり報道しないが、政府は2月25日、日本政策金融公庫から国際金融部門の国際協力銀行(JBIC)を分離・独立させる「株式会社国際協力銀行法案」を閣議決定し、国会に提出した。

  JBICは2008年秋、政府系金融機関の改革で日本政策金融公庫に統合されたが、政府・民主党は再び独立させることにしたのだ。これで、JBICは再び財務省の有力な天下り先になるだろう。

 実は、私は小泉政権で郵政民営化とともに政策金融改革も担当していた。小泉政権時代にも、財務官僚のいいなりになってJBIC等の政策金融改革に反対した「過去官僚」(官僚出身)の自民党議員が多かったが、それでも郵政民営化とコインの裏表になる政策金融改革を行った。

 その政策金融改革のポイントは、組織をできる限りスリム化して、政策金融機能を限定しながら、いざというときには民間金融の力を借りて、天下り先を作らなくても業務拡大できるという制度設計だった。

具体的には、各省ごとの持っていた政策金融機関を一つに統合して組織のスリム化(各機関が各省事務次官クラスの天下り先だったのを一つにする)し、機能も直接融資から保証などの間接融資にするものだ。その改革では、政投銀や商工中金という財務省と経産省の事務次官天下り先を完全民営化することも含まれていた。

 日本はそれまで政策金融機関が多かった。しかし、この改革の結果、政策金融機関はあったとしても日本政策金融公庫一つで十分という世界の標準になった。

 ところが、民主党は政策金融改革をすべて反故にして、10年前以上も昔に戻してしまったのである。民主党も、過去官僚が多く、官僚に理解がある人が多い。自民党では党人派の小さな政府主義がそれなりに影響力があったが、民主党は大きな政府路線で、官僚の言いなりが多い。

 実は、政策金融ばかりでなく、貿易保険でも民主党は改革を逆行させた。事業仕分け第3弾の初日である2010年10月27日に行われた貿易再保険特会。貿易再保険特会を独立行政法人日本貿易保険(NEXI)に統合となったが、これは酷い。

官僚の高等戦術に騙された民主党

 そもそも再保険と保険の二本建てになっているのは、もともと国営の貿易保険を、再保険は国、保険は民間とするために2001年の省庁再編時に、再保険は特会、保険は独立行政法人のNEXIと決めたからだ。その後、NEXIの民営化(特殊会社化)となり、貿易保険には民間会社が参入した。

 しかし、民主党の目玉の事業仕分けで、民営化がなくなった。再保険と保険が独法でひとつになり、以前の特会が独法に変わっただけなので、2001年以前に逆戻りだ。貿易再保険の廃止という言葉でごまかし、NEXIの民営化を反故にした官僚の高等作戦に、民主党が騙されたのだ。

 さらに、今回、JBICが政策金融改革に逆行してまで行おうとしているのは、米国南テキサス州で東京電力や東芝が出資して進めている原発建設プロジェクトに対する融資である。

 日本政策金融公庫では、先進国向けの金融は原則行わないことになっており、JBICを傘下に収める際にも従前に行われていた先進国向けの金融業務は原則廃止された。ところが、政令において「国際競争力向上」という曖昧な抜け穴を作っていた。

 経済学ではノーベル賞受賞者のクルーグマン・プリンストン大教授が口を酸っぱくして何度も警告を発しているが、国際競争力という言葉は実態のないもので、官僚のいいように利用されるだけだ。

 さらに、米国の原子力案件では、24日、米国の環境団体NIRS(Nuclear Information and Resource Service)が日本政府にプロジェクトを中止するように要望している。その要望には、日米の170を超える団体が賛同している。

 その内容は、米国では電力市場の規制緩和による価格低下があるので、原子力プロジェクトは採算がとれないというまっとうな話だ。

 もともと官業の政策金融機関はリスク評価が甘かった。そこで、政策金融改革では、金融機能を保証などの間接金融に限定し、直接融資は民間金融機関を活用するスキームにした。その場合、リスクを官民でシェアすることにより、民間のリスク評価機能を活用するというものだ。

 ところが、政策金融は古い昔の官業が「フルセット」で行うものに逆戻りしてしまった。とてもきちんとしたリスク評価ができるとも思えない。

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