「第3者委員会最終報告書」発表延期の一方で、資金繰り難や電力料金値上げなど「東電擁護」報道が続出した裏事情
一企業への公的支援は「禁じ手」

 典型的なリーク報道の弊害が浮き彫りになったということなのだろうか。

 先週、東京電力の経営の実態を調査してきた政府の第3者委員会の報告書の公表が先送りされる中で、その最終報告案について、新聞各紙がスクープ合戦を繰り広げた。

 そして、その報道ぶりには、東電の資金繰りが深刻であり、政府による支援や電気料金の引き上げが急務であるかのように印象付けるものが目立ったのだ。

 東電の擁護を目論む当局が、世論の支持を取り付けるためにプロパガンダを繰り広げようと、発表を先延ばしして時間稼ぎを目論んだのではないか、と訝った読者も多いのではないだろうか。

 今週は、こうした報道の問題と、現時点(10月2日の本コラムの執筆段階)では最終報告書に盛り込まれるかどうかが不明の東電と経済産業省の歴史的な怠慢に関するけじめを考えてみたい。

なぜ取りまとめが10月になったのか

 先週もこのコラムで取り上げたが、リーク疑惑の渦中にあるのは、菅直人前政権が今年5月の閣議決定で首相のお膝元の内閣官房に設置した「東京電力に関する経営・財務調査委員会」(委員長・下河辺和彦弁護士)である。

 この委員会は、「原子力損害賠償支援法」(当時は法案段階)に基づき、政府が東電による福島原発の賠償金支払いを支援するに当たって、「国民負担の極小化を図る」ため、「東京電力の厳正な資産評価と徹底した経費の見直し」を行うことを使命としている。

 下河辺委員長ほか、大和総研の引頭麻実執行役員、JR東海の葛西敬之会長、東京大学社会科学研究所の松村敏弘教授、 DOWAホールディングスの吉川廣和会長の4人がメンバーに名を連ねている。

 何よりも不可解なのは、この第3者委員会が、設立会合(6月16日)の際に、自ら「本年9月にとりまとめる」と決定した報告書の政府への提出期限を大詰めの9月最終週になって翻し、10月3日に延期したことだ。

 関係者によると、延期の理由は、「根回しに予想外の時間を要したこと」「特に、料金値上げに、どう言及するかで意見調整が難航した」という。

 しかし、それが事実ならば、出来上がっていない報告書を巡って、新聞各紙が、「最終報告書案」と称して、その内容を報じるスクープ合戦を演じたことになる。なんとも不思議な現象としか言いようがない事態が起きたわけだ。

 加えて、新聞報道は、自力で東電が賠償することの困難さや、第3者委員会の東電の実態解明に関する健闘ぶりを強調する内容ばかりが目立った。

 例えば、日本経済新聞は9月29日付の朝刊5面で「東電、8兆円資金不足も」と、東電の今後10年間の資金繰りの深刻さを大々的に報じた。しかも、この日の日経は、焼け石に水に過ぎない「コスト削減 東電、年1600億円追加」というニュースを同日付朝刊で関連記事として1面で扱った。まるで東電が真摯な自助努力をしていると弁護するかのような紙面を作ったのだ。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら