田原総一朗×辻野晃一郎「どんな小さな企業でもグローバルマーケットを意識する時代がやってきた」
『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』著者に訊く 最終回

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田原: 辻野さんはなぜグーグルをお辞めになったんですか。

辻野: やっぱり焦りみたいなものがあるんですよ。

田原: 焦り?

辻野: グーグルにいる間は、グーグルを日本に根付かせるために必死だったわけです。でも、そこでどうしても自己矛盾みたいなものにさいなまれるわけです。やっぱり日本人なので・・・。

 グーグルにいる3年ちょっとの間というのは、まさに黒船に乗っているような感覚がありました。

田原: 黒船ですか。

辻野: ええ。黒船に乗ってネットの荒波を航海して、向こうの進んだ文明をかいま見てきたような感覚ですね。それで「こりゃ日本はやばいぞ」と。

 そこで、「このまま黒船に乗り続けていていいのだろうか」という思いが出てくるわけですね。

田原: 別に日本人であることを辞めてもいいじゃないですか。

辻野: そういう考えもあるかもしれません。しかし、私はロジックではなく、日本人であることに対する誇りやこだわりが強いタイプなものですから。

田原: なるほど。

辻野: だからもう一回日本に戻ろうと思ったんです。

 日本はどんどん劣化していく状況にあります。田原さんがいつも論じられているように、いろんなところがおかしくなってきている。そういう中で、誰かが行動しなきゃいけない。

 私に何が出来るか分かりませんけれど、少なくとも論じているだけじゃなく、実行する側で動こうと思ったんですね。

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 それで辞めて本を書き、起業をしました。

グーグルも大企業病化しているのか

---いくつかツイッターなどから質問が来ていますので、お答えいただいてもいいですか。

辻野: もちろん。

---「グーグルをなぜお辞めになったのか」という質問に関連します。辻野さんは著書の中で、グーグルをお辞めになった理由の一つに、アメリカのマネジメントに対する違和感みたいなものもあったということもお書きになっています。それをくわしく教えてください。

 またグーグルも巨大化していく中で、ソニーと同様に大企業病のような変化が生まれているということはあるのでしょうか。

辻野: 一般論として言うと、企業には創業期、成長期、安定期、衰退期があるわけです。ソニーという会社だったら、創業から64年経っていますが、そのステップをゆっくり踏んで、サイクルを動いている。

 グーグルは2010年で創業12年なんですよ。ネットの世界って「ドッグイヤー」って言いますよね。ネットの世界は「7倍速」とか「4倍速」とも言われる。そうするとグーグルの12年っていうのは考えようによっては非常に長い時間だということです。

 ですから当然、初期の頃と今のグーグルっていうのは変わってきているでしょう。

 私がグーグルに入社した2007年4月の段階のグーグルと、辞めた2010年4月のグーグルっていうのはやっぱりもう違うんです。3年の間にずいぶん会社の規模も大きくなっていますし、人も入れ替わっています。

「Google」HPより

 例えば、私が入るときに、私を採用するためにいろいろ動いてくれた人達ってすでに全員グーグルにはいません。それくらい新陳代謝が早いんです。

 ですから、そもそも日本の企業とシリコンバレーの企業とでは新陳代謝のスピードが全然違うわけです。グーグルと言えどもそのシリコンバレーの新陳代謝のサイクルの中にいて、サイクルに合わせて人がどんどん入れ替わっていると思うんですよ。

 それから創業から12年の間に会社がだんだん大きくなってきたわけですが、大きな組織が嫌いな人っていうのも結構いるわけです。

「スタートアップのエネルギーが好き」という人もいるから、そういう人たちはまた新しい新興企業に移っていったり、自分でスピンアウトして起業する。そういうのがシリコンバレーでは当たり前なんですね。

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