菅首相が先送りした「3月下旬解散、4月24日投票」のスケジュール
首相の胸には「三木おろし」の故事?

 菅直人首相は、実は先週末の2月19、20日のいずれかに、某週刊誌のインタビューに応じることになっていた。このことは限られた官邸関係者だけが承知していたが、それ故に20日になってマスコミ各社の一部に知れるところとなり、同日夕には「すわ菅首相が衆院解散・総選挙を決断したのではないか」との情報が密かに駆け巡った。

  だが、土壇場で首相サイドから日程調整が難しいと、20日午後になって件の週刊誌編集部に連絡が入り、結局、この菅氏インタビューは日の目を見なかった。

 この事実は、いったい何を意味するのか。民主党の小沢一郎元代表直系の衆院議員16人(全員比例代表選出)の院内会派離脱に続き、党内の中間派からも"菅降ろし"の動きが顕在化しつつあり、菅首相とその側近グループは2011年度予算の関連法案の年度内成立が自民、公明党など野党の強い反発によって不可能になっている現状打破のため早期解散・総選挙で正面突破するしかないと判断、週刊誌でその意向をブチ上げる腹積もりだったのだ。

 ところが、その週末に実施された『朝日新聞』と『毎日新聞』の世論調査結果が予想をはるかに超えて菅政権と与党民主党にとって厳しいものになったことが、官邸側に伝わり、最後は菅首相が3月中旬解散・4月下旬衆院選の先送りを決断したのだろう。当初、首相周辺では4月24日の統一地方選第2弾とのダブル選挙を想定していたのは間違いない。

 『朝日』調査では内閣支持率は前回比6ポイント減の20%、不支持率が同6ポイント増の62%、『毎日』調査も内閣支持率は前回比マイナス10ポイントの19%、不支持率がプラス11ポイントの60%であった。菅政権にとって深刻なのは、政党支持率で自民党に逆転されたこともあるが、衆院選比例区投票先について民主党が自民党に前回調査からさらに差を広げられたことである(『朝日』6ポイント、『毎日』5ポイント)。

 特に、後者の調査では民主党20%、自民党26%に対しみんなの党(渡辺喜美代表)が4ポイント伸ばし15%に達したことである。と同時に、支持政党に関する質問で「支持政党なし」の回答が前回比プラス3ポイントの50%(『朝日』調査)に達したことも大きい。早期解散・総選挙で漁夫の利を得るのはみんなの党ということがハッキリしたのである。

 では、菅首相の現在の胸中はいかなるものなのか。

 まず、権力の座にある者を力ずくで引きずり降ろすことは容易ではないという認識であろう。三木武夫政権の76年5月、当時の3人の元首相、即ち田中角栄氏の自民党最大派閥派・田中派以下、第二派閥の福田赳夫氏が率いた福田派、そして大平正芳氏の大平派が党内に「挙党協」を設立、その後、党内で熾烈な"三木降ろし"が繰り広げられた。だが、当時の三木総理・総裁は激しく抵抗、粘り粘って同年12月5日のロッキード総選挙となった。菅首相はこの故事来歴を自らにインプットしているに違いない。

反菅勢力との「チキンレース」

 だからこそ菅首相は、21日の衆院予算委員会で「格好つければ強いリーダーだとは思わない。やるべきことをやるのが強いリーダーだ」と答弁、事実上の続投宣言を行ったのである。それがまさに、現在の強気の政権運営となっているのだ。

「やるべきこと」とは、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉参加決定、税と社会保障の一体改革案策定、消費増税を含む税制抜本改革の工程表作成などであり、それを6月中に仕上げたうえで自分の手で衆院を解散、総選挙に臨むというのである。

 正直いって筆者にはリアリティがないように思える。菅首相は、三木首相が最後は打って出た衆院選に敗北、福田氏が後継首相に選出された"三木降ろし"の結末を、敢えて想起しないようにしているのかも知れない。

 それにしても、である。11年度政府予算案は3月2日にも衆院を通過する見通しだが、自民、公明党以下各野党は参院に首相問責決議案を提出するはずだ。その前後に"菅降ろし"は民主党内で小沢支持勢力、中間派、さらには首相のお膝元まで広がりを見せるだろう。そして同月中旬までには続投を目指す菅首相と反菅勢力とのチキンレースに決着が付くのではないか。

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