首相の現地視察「パフォーマンス」ではごまかせないーー「朝霞住宅」に固執した財務省の「国有地利権」

 事業仕分けで見直しとされた朝霞公務員宿舎が着工されたことが国会で論議となった。安住淳財務相は9月26日の衆議院予算院会で「全国の宿舎の廃止・集約で15%削減する。朝霞宿舎の着工だけを見て、公務員はぜいたくをしてけしからんという見方にはくみしない」と建設の正当性を主張。財務相時代に着工を指示した野田首相は、公務員宿舎の売却益を復興財源に充てるとして、着工計画を「特段変更するつもりはない」とした。

 また、財務省は埼玉県内の公務員宿舎1000戸分を廃止・売却して120~130億円の売却益になるので、朝霞宿舎に集約することで朝霞建設の費用が110億円としても10~20億円の利益が出て復興財源に回せると反論する。

 さらに、2009年11月の事業仕分けでは、「検討を踏まえ実施する」が、「それまでの間、凍結」されていたので、外部の有識者を入れて財務省内の「検討」によって2010年12月に「凍結」が「解除」され、2011年9月1日に着工したのだという。

 国会論戦で、被災者より公務員宿舎という議論が出てきて、民主党内からも反発が出てきた。野田佳彦総理は、30日の記者会見で「現場に行き考えをまとめ最終的な判断をしたい」と述べ建設計画を見直す考えを示した。

 財務省のいいなりとされた野田総理のいい意味でのサプライズだ。ただし、建設の再凍結や被災避難者の受け入れ程度でお茶を濁す問題ではない。

国有財産を手放す気がない財務省

 朝霞は便利なところだ。公務員宿舎は駅から10分くらいにある。近隣でも民間の高層マンションが建っている。東武東上線だけでなく、地下鉄有楽町線や副都心線も乗り入れており、霞ヶ関の桜田門駅や渋谷駅に40分程度で行ける。

トラックの出入りの際しか、中のようすはうかがえない 撮影:筆者

 実は朝霞宿舎の建設予定地は筆者の自宅からも近いので、久しぶりにいってみた。

 驚いたのは、公務員宿舎建設で多くの木が切られ、緑が少なくなったということだ。以前は金網で中が見えたが、今は高い塀で中が見えない。工事車両が出入りするが、素早くゲートの開閉をしていた。普通の工事現場では、中が見えるようにところどころに透明板があるが、朝霞公務員宿舎の場合、中を見ることができるのは工事車両のゲートが一瞬開くときだけだ(透明板は一カ所あるが、ついたてがあって中が見えないようになっていた)。

  建設の再凍結や被災避難者の受け入れは、それ自体は望ましい。しかし、「凍結解除」となった昨年の財務省内の「検討」にはなんら影響を与えるわけではない。建設の方向は正しく、実はタイミングが悪かっただけになる。しかし、国有財産政策に焦点をあてると、結論から言えば「検討」の結果が怪しいのである。こうした根っこの政策がおかしいと、間違いが何度も繰り返される。

 野田首相の豹変を引き出した29日の参院予算委員会で小野次郎議員(みんなの党)の「国家公務員宿舎の建設を進めるのなら、原発事故による福島県からの避難者を先に入居させてはどうか」との提案をさらに発展させればよい。

つまり、避難者だけでなく、通常の民間人も適正な家賃を払えば入居さればいいのだ。さらに、いっそのこと宿舎を民間に売却して、必要な数だけ公務員宿舎として借り上げてもいいだろう。

 財務省は、「検討」の結果として、2010年12月8日付け「国有財産行政におけるPRE戦略について」を公表している。PRE戦略とは、公的不動産について、民間の手法を活用して、適切で効率的な管理、運用しようとする考え方だ。この表題をみてもわかるが、財務省は国有財産を手放さずに、その活用を考えている。

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