独裁者への辞任勧告
「小沢秘書軍団」の秘書頭・樋高剛代議士を直撃

解剖小沢一郎 第3弾〔取材・文 松田賢弥〕

「説明に一定の国民の理解と納得が得られなければ、けじめをつけていただかないといけない」(枝野幸男元政調会長)

 民主党内から一斉に吹き出した小沢一郎(67)の責任を追及する声、また声。「何を今更」と鼻白んだのは、決して私だけではあるまい。だが、やはりと言おうか、骨の髄まで小沢の恐怖に支配されていた連中が、連れションのようにそろって声を上げたのには理由があった。

 2月1日付『毎日新聞』朝刊の世論調査では、小沢の元秘書で衆院議員の石川知裕(36)が起訴された場合、小沢が「辞任すべきだ」とする回答が76%に達している。野田や枝野ら反小沢を掲げるメンバー、誰が呼んだか「七奉行」なのだそうだが、彼らは事前に調査結果を知ったうえで、踏み込んだ発言に転じたのだ。

 2月1日の記者会見で、仮定の話とはいえ小沢は自らの責任に初めて言及した。

「刑事責任を問われるという事態は想定していないが、もしそういうことが仮にあるとすれば、今言ったように責任は重いと考えている」

 2月4日に、政治資金規正法違反(不記載)で逮捕された石川が拘置期限を迎え、石川起訴、小沢不起訴の処分が下る見込みだ。ある検察関係者はこう語った。

「小沢から預かったという4億円を政治資金収支報告書に記載しなかったこと自体は、石川も、元私設秘書の池田光智も、そして口の固かった公設第一秘書の大久保隆規までもが認めた。小沢でさえ代表者としての責任を認めている。

 確かに今回、小沢起訴のハードルは高かった。だが、すでに石川起訴の"次"を見据え、小沢事務所から押収した日銀券(1万円札)の番号が小沢の供述と一致するかを国税庁の応援部隊とともに調べている。

 '05年に小沢が実質的に運営する政治団体『改革フォーラム21』と問題の資金管理団体『陸山会』との間で4億円が出し入れされているが、このカネは課税対象となる、と言えば検察の狙いは伝わるかな」

 税法上の違反による摘発も視野に入れているという意味だろう。特捜部長の佐久間達哉は、1月頭には「検察とは断固戦う」と鼻息の荒かった小沢を「決して許すことはない」と息巻いているようだ。

"小沢教信者"の男

 権力者同士の争いなどより、私にとって引っ掛かるのは、石川の様子だ。先の検察関係者によると、1月15日の逮捕直後、ひどく憔悴し、怯えきっていたという。理由は、逮捕前に小沢の側近から「この先のことは、分かっているだろうな」「対応を間違えるなよ」と、恫喝まがいの"諸注意"を受けたことによるようだ。

 小沢に近い民主党関係者が明かした。

「石川にそれを言ったのは、樋高(剛・ひだか たけし)だと聞いているよ。『何があっても、小沢先生に迷惑をかけるなよ』という意味だろう。

 樋高は、秘書軍団の中でも最高の"小沢教信者"だからな」

 民主党副幹事長、樋高剛(44)。早稲田大学在学中から小沢邸に出入りし仕えた男。小沢の参謀を自任する元参院議員、平野貞夫の娘を娶った身内同然と言える男―。

 小沢後援会の幹部は、私に秘書軍団の序列について説いた。

「経験の長い石川は、年上である大久保の上司格でカネの実務を仕切っていた。実質的な会計責任者と言っていい。だが樋高は、さらにその上をいく。側近中の側近としてゼネコンからの献金のチェックなど、巨額の資金管理を任されていた」

 ちなみに、1月13日に開かれた大久保の第2回公判で、検察側証人として出廷した西松建設の元総務部長は、大久保が「陸山会」の事務担当者になる'00年までは樋高が小沢側の窓口だったと証言している。

民主党本部で小沢が記者会見を終えたタイミングを見計らって、本誌は樋高を直撃。終始、逃げの姿勢だった〔PHOTO〕鬼怒川 毅

 "使用者"である小沢の樋高に対する信頼も厚い。'07年11月、小沢が福田康夫首相(当時)との間でまとめようとした自民・民主の大連立構想が破綻した際、小沢の意を受けて党幹事長だった鳩山由紀夫に「民主党代表辞任」の意向を伝えに走ったのは、落選中の樋高であった。

 樋高でなくとも、小沢の秘書になるということは、不変の忠誠を誓うということに違いはない。小沢邸の近所、東京・世田谷区深沢6丁目に小沢の秘書が住む2棟がある。登記上の所有者は、小沢夫人である和子だ。この建物について、小沢事務所は'08年9月、私にこう答えた。

「事務所兼秘書宅として秘書が使っており、秘書から家賃収入は取っていません」

 事務所として使用している以上、和子が家を貸すことは、政治団体に対する財政的支援となる。事務所費を徴収していなければ政治資金規正法で禁止されている無償提供に当たる。

 一時、その邸宅に居住していた人物に、こんな話を聞いた。彼は小沢に短期間ではあるが、秘書として仕えた経験がある。彼は、和子からこう釘を刺されていた。

「(ここが秘書邸だと)外では言わないように。聞かれたら『下宿している』とでも言っておきなさい」

 私はこの件を樋高に問い質した。

あなたも秘書邸に住んでいたのか。

樋高「何年も前のことですから・・・」

家賃は払っていたのか。無償か。

樋高「忘れてしまいました」

実態は陸山会の"出張事務所"だったのではないか。

樋高「忘れてしまった・・・」

 石川らの逮捕容疑に登場する4億円は、樋高が住んでいたものとは別の秘書邸(深沢8丁目)を建てるために使われた。小沢にとっても秘書にとっても、秘書邸の存在はタブーなのである。その購入資金の原資は不透明であり、現在、捜査のメスが入っている。20年にわたり秘書として小沢に仕えた元衆院議員の高橋嘉信は、私にこうはっきり言った。

「小沢の秘書は、どんなに細部に至るまでも、小沢の命令で動いているのです」

 資金の全貌を知るのは、小沢ただ一人。そして、小沢の次にカネの流れを熟知するのは―。石川や大久保以上に知る人物について、特捜部が関心を示さないことが、私には納得がいかない。

 2月1日、小沢が初めて自らの責任について言及した記者会見に、樋高も同席していた。会見直後、樋高を直撃した。

4日に石川代議士が起訴される見込みだ。樋高さんは小沢家に住み込み、秘書として付き合いが長い。あなたは小沢の言葉を信じているのか。

樋高「この後、神奈川で(民主党県連の)パーティがあるので・・・」

樋高さん、あなたは特捜部の取り調べを受けているのか。

樋高「(エレベーターに乗り込みながら)体に気を付けて」

 石川の起訴により、小沢は潔く幹事長を辞任すべきだろう。しかし、小沢の権力への執着は異常だ。大久保が逮捕された際、小沢は代表の座を降りたが、選挙担当の代表代行として背後から権力を振るえる地位を手放しはしなかった。

「幹事長を辞任して禊ぎを済ませ、幹事長代理として参院選を仕切るというシナリオが漏れ始めました。後任の幹事長には、輿石東(党参院議員会長)や細野豪志(党組織・企業団体対策委員長)の名前が挙がっています。傀儡にできる親小沢議員ばかりです」(全国紙政治部記者)

 忠実なる秘書たちが、小沢の最後の砦となっている。   (文中一部敬称略)

取材・文:松田賢弥(ジャーナリスト)
まつだ・けんや 1954年、岩手県生まれ。業界誌記者を経てジャーナリストに。『週刊現代』を中心に政界の暗部を描く。主な著書に『無情の宰相 小泉純一郎』、『小沢一郎 虚飾の支配者』(いずれも講談社刊)

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