武村正義(元官房長官)「小沢さん、静かに消えましょう。それがこの国のためです」
国民を失望させるのはもういい加減に
やめましょう
小沢一郎さんは巨額の土地取引で疑惑の目が向けられていましたが、とりあえず不起訴になりました。本人はもちろん、関係者もホッと胸をなでおろしているところでしょう。しかし、私は起訴・不起訴の如何によらず、小沢さんは引退するべきだと思います。
政界引退後、すっかりスリムになった武村氏

 小沢さんはすでに67歳の高齢です。60歳代後半というのは、多くの人が身体の衰えを実感し始める頃。病気がそっと忍び寄ってくる年頃でもあります。

 私も10年前、65歳のときに大動脈瘤破裂を経験しましたが、その頃から「俺はあと何年生きられるか」「いつまで元気で働けるか」などとチラチラ頭をよぎるようになった。小沢さんだって、そんなことを考えることが当然あるでしょう。

 だったら思い切って一切の役職を辞めて一議員として「隠居」するか、きっぱり議員も辞めて「引退」したほうがいい。

 政治家にとって取り組まなければならない課題はいつの時代にも山ほどあります。ですが、あと5年、あと10年と政治家を続けていても、課題をすべてかたづけるというのは無理な相談。いつかは自分の気持ちに区切りを付けて、政治の世界から身を退かなければなりません。

小沢氏はすでに67歳。過去に心臓病を患ったこともある

 小沢さんは、長く政界の中心で活躍してきた人物で、自らが納得できる仕事もしてきたはずです。このまま政治家を続け、晩節を汚すくらいなら、最後は静かに消えていかれるのが相応しいと思うのです。

 私と小沢さんは、'93年の細川護煕政権で、ともに汗をかいた関係です。私は「新党さきがけ」の代表で官房長官を務めました。小沢さんは連立を構成する7党1会派による意思決定機関「与党代表者会議」を束ねる実力者で、当時は対立する場面もありました。

 しかし私は、「人間・小沢一郎」は嫌いじゃない。あの人には「口が堅い」とか「約束はきちんと守る」という美点がある。この2点だけをとっても非常に魅力的な人物です。

 ただ「政治家・小沢一郎」となると、馴染めないというか、疑問に感じるところがあるのも事実です。

 一つはやはり小沢さんが「政局の人」という点です。

 政治には、政策と政局という二つの要素があります。どちらも重要な要素ですが、小沢さんにかかると、政策はすべて政局のために存在するかのように見えてしまいます。

 目の前の選挙に有利だと思った政策をドンドン打ち上げるけれど、現実性が必ずしも高くないものでもアドバルーンとして上げていく。政策は選挙で票を集めるための道具にすぎない。そんな価値判断をされているかのように私には映っています。

 たとえば昨年の総選挙のマニフェストで掲げた月額2万6000円の子ども手当や農家への戸別所得補償制度、暫定税率の廃止などは小沢さんが代表の時にブチ上げたものです。それが鳩山代表の手に引き継がれた。

 昨年の衆院選挙前には、小沢さん自身が、

「わが国の財政は一般会計と特別会計とを併せると207兆円ある。民主党が政権をとればその1割、20兆円は財源を生み出せます。これで公約はきちんと果たせます」

 と繰り返し発言をしてきました。しかし結局、「1割削減」には何の根拠もなかった。これでは、あのマニフェストも政局のための政策だったと批判されても仕方がないでしょう。

 今年7月には、小沢さんが勝利に執念を燃やす参院選があります。そこで民主党が過半数を獲れた場合、小沢さんはその数の力をもって何をしようとしているのでしょうか。

 衆参両院で過半数を握った以上、票集めのような政策だけではなく、外交や財政という国の基本となる政策について取り組まねばならなくなると思います。しかし、そうした政策について最近の小沢さんは語っていません。改めて本音を語ってもらいたいですね。

鳩山さんは原点を見失った

 小沢さんとともに窮地に陥っている鳩山由紀夫さんとは、互いに自民党議員だった時代に、超党派の議員グループ「ユートピア政治研究会」を立ち上げた仲間です。

 その頃から鳩山さんは、いつも「正論」を吐き、「理念」を語るのが好きな人でした。あまり苦労を知らずに、スクスク育ってきた人だからなのかもしれません。

 一方で大胆な発想や発言をしたりする面もありました。自民党時代、彼は所属する経世会の会合の席で、「自民党ではもうダメだ」という発言を堂々と展開していました。当時の経世会というのは、自民党内で圧倒的な力を誇っている大派閥。そこで党を批判するというのはものすごく勇気のいることです。

'93年、新党さきがけは10名で結成。前列右が若かりし日の鳩山首相

 そういう彼の性格を知っていましたから、私が新党さきがけを立ち上げるときには、真っ先に彼を誘ったんです。鳩山さんは二つ返事で、

「分かりました、私は賛成です」

 と言って自民党脱党にも賛成してくれました。まさに大胆な発想に行動が伴った振る舞いでした。

 しかしその頃と比べて今の鳩山さんを見ていると、正直、クビを傾げざるを得ません。

 言葉は実に巧みになりましたが、その発言に真実味があるか、そしてその発言に一貫性があるか、という点から見ると、及第点にはほど遠いのが現状ではないでしょうか。

 鳩山さんは、普天間基地の移設など国の基本政策の大きな問題について、クルクル発言が変わる。これは政治家として極めて危うい性向に思えます。

 私や鳩山さんが関わっていたユートピア政治研究会は、リクルート事件の教訓から、政治とカネの問題をクリーンにするというのが最大のテーマでした。そこで一年生議員10人ほどの政治資金の入りと出を集計し、自ら公表したことがあります。

 また今では当たり前になった国会議員の資産公開に関する法律も、そもそもはユートピア政治研究会で法案を作り、党に相談して、国会に提案したから実現したものです。

 それらの作業には鳩山さんも率先して参加していましたから、そのときに自分のカネの実体を率直に見つめたはずです。

 ところが、母親から毎月1500万円、年間にして1億8000万円の資金援助を受けていたことが首相就任後に明らかになりました。鳩山さん自身は、そのことを「知らなかった」と言っている。

 ユートピア政治研究会の最大の目的は「政治とカネ」の関係をクリーンにすることでした。この活動は鳩山さんにとっても政治家としての原点のようなものだったはずです。

 そういう経験を持つ鳩山さんが、実は国民に不信を抱かせるようなカネの扱いをしてきていた。自身の原点とでもいうべき信条まで忘れてしまっていたのは、残念です。

 衆院選で大勝したからか、鳩山政権には、全体的に「謙虚さ」が足りないように見えます。「政治主導だ、脱官僚だ」と叫ぶのはいいですが、一気に理想に近づこうとしている。

 しかし大転換を一足飛びに達成できるはずがありません。経験不足を補う意味でも、もう少し堅実に、一歩一歩進めたほうが成果は確実に上がるはずです。そういう謙虚さはあったほうがいいでしょう。

 また小沢さんの土地取引問題にしても、国民から見れば民主党の庇い方は傲慢にも映るものでした。幹事長を庇おうとする気持ちは分かりますが、だからといって原口一博総務相のように許認可権を振り回しながらマスコミを批判するような印象を世間に与えてしまうのは、明らかに行き過ぎです。

 謙虚、堅実という姿勢がないと、せっかく集まった民主党への支持が消えてしまいかねません。

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