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「美人は美人から生まれる?!」 大研究シリーズ 他人に聞けない遺伝の秘密 後編
「身体能力」「運動神経」はここまで遺伝する

 人間は誰しも両親からそれぞれ50%ずつ、遺伝子を受け継ぐ。では、親からのギフトである遺伝子が優れていれば、生まれながらに優位に立てるのか。
  この特集を読み終えた時、あなたは「人間は平等だ」と言い切ることができるだろうか。

4.「身体能力・運動神経」はここまで遺伝する
一流スポーツ選手は「血」で決まる!?

 運動能力は遺伝するのか。それを考える上で実に興味深い話がある。語るのは作家の黒木亮氏だ。

「自分が血のつながる両親だと思っていた二人が養父母だと知ったのは、大学に入学するときでした」

 当然、それまでの黒木氏には、実の父親に会った記憶はない。それなのに、親子の間には偶然とは思えない経歴の一致があった。

「社会人になってから知ったのですが、実父が学生時代に、箱根駅伝に出場していたんです。

 僕も早稲田大学競走部の一員として2度、父親もかつて明治大学の選手として箱根路を走っていた。その事実を知ったときは、やっぱりなと妙に納得しました」

 中学時代から陸上部に所属していた黒木氏は、北海道大会で入賞するなど長距離走を得意としていた。実の父は箱根駅伝出場だけでなく、終戦直後のマラソン日本選手権で4位に入賞していたことも判明した。

 まったく違う環境を生きた親子が、同じ競技を選ぶ。黒木氏は「これが遺伝ということなんでしょうね」と語った。

遺伝子にオリンピック症候群

 運動能力が世代を超えて伝わる例は少なくない。たとえばレッドソックスの松坂大輔投手の祖父は、手投げ弾の遠投日本記録保持者だった。

 東京大学大学院総合文化研究科の石井直方教授は言う。

「私の知る限り、スポーツマンとしての優秀な資質を遺伝的に受け継いでいると思われる典型は、ハンマー投げの室伏親子ですね」

「アジアの鉄人」の異名をとった日本ハンマー投げ界の第一人者であった父・室伏重信氏と、元やり投げルーマニア代表の母、セラフィナ・モリッツさんの間に生まれた広治選手は、'04年アテネ五輪で金メダルを獲得。現在も第一線で活躍する。娘の由佳選手も、ハンマー投げと円盤投げの日本記録保持者だ。

 石井氏が続ける。

「2人の兄妹がトップレベルの選手になった背景には、もちろん名選手だった父親から指導を受けられるという環境の良さもあるでしょう。

 しかし、いくら環境が整っていたとしても、兄妹そろってこれだけの選手に成長するのに、遺伝的特質がかかわっていないわけがありません」

 そもそも遺伝による進化とは、環境に適応して効率よく生活するため、生物が淘汰と変化を繰り返すことを意味する。

 運動能力について言えば、脚が速かったり、ものを遠くへ投げたりする能力は、今の人間が生きていく上では、さほど必要な能力ではない。