現、前、元首相3人につづいて 仙谷由人「2度目のベトナム訪問」の焦点は「原発受注」
政官民あげての国家戦略

 民主党の仙谷由人代表代行が2月24日~26日にかけてベトナムを訪れる。国家戦略担当相時代の昨年5月の訪越に次ぐ2回目だ。

 ハノイ滞在中の25日、去る1月のベトナム共産党大会で国家主席(党内序列第2位)に選出されたばかりのチュオン・タン・サン前共産党中央書記局常任委員(当時の序列は第5位)と会談する。

 仙谷氏訪越がわが国の産業界、特に原子力関連企業の耳目を集めているのには理由がある。

 改めて指摘するまでもなく、菅直人首相が昨年10月31日にハノイでのグエン・タン・ズン首相(3位)と会談、同国が2020年までに稼動を目指す原子力発電所2基の建設を日本が受注することで合意したことの"ダメ押し"のためのベトナム訪問である。もちろん、旧知のサン氏の国家主席就任を祝賀することも訪問の目的である。

 ベトナム政府電力庁(VEA)は同国中部ニントゥアン省の原発第1サイト建設については既にロシアの原子力国営企業ロスアトム社とFS(フィジビリティ・スタディ)契約を09年12月に結んでおり、わが国が正式受注を期待するのは総事業費約1兆5000億円の第2サイト建設である。

 日本が"オールジャパン"体制でこの大型プロジェクト受注を目指すことは、昨年10月、東京電力、関西電力など電力9社、原子炉メーカー3社の東芝、日立、三菱重工、そして官民が共同出資する産業革新機構などが国際原子力開発(社長・武黒一郎前東京電力副社長・資本金2億円)を発足させたことでも理解できる。

 ベトナムの原発建設事業にわが国の産業界だけでなく政界も大きな関心を抱いていることは、以下に紹介する一点だけでも理解できるはずだ。菅首相の訪越は10月28日から31日だった。その直前の22日~25日に鳩山由紀夫前首相、そしてその直後の11月7日~10日には安倍晋三元首相がハノイを訪れているのだ。

 わが国の前・現・元首相3人が僅か15日間にある特定の国の首都を訪問するということは、戦後の日本外交で初めてのことである。鳩山、安倍両氏はそれぞれの訪越目的を挙げている。だが、両氏の訪越に同行した、あるいは助言した人物を知れば、その訪問理由が同国の原発建設に関係していることが容易に想像できる。

 鳩山前首相に助言したのは首相秘書官(事務担当)だった安藤久佳資源エネルギー庁燃料部長(1983年旧通産省入省)であり、また安倍元首相に同行したのが安倍政権時代の内閣広報官を務めた長谷川栄一前中小企業庁長官(同76年)である。

焦点は「型の選定」

 経済産業省の現役官僚の安藤氏は現在同省のエネルギー政策部門の中枢におり、長谷川氏はかつて旧エネルギー庁原子力産業課に在籍した同省のエネルギー・マフィアの一員である。さらに言えば、安倍首相秘書官(事務担当)を務めた今井尚也貿易経済協力局審議官(同75年)も現在、対ベトナム経済協力を担当しており、安倍氏に近い経産官僚として知られる。

 要は、簡単なことである。前元首相の2人は、所管官庁の"自前"の経産官僚を動員して巨額な資金が動くベトナム原発建設に関与しようということではないか。それでは、いったいどのような関与が考えられるのか。

 まず、同プロジェクトで最大の焦点は原子炉の型の選定である。東芝=米ウェスティング・ハウス社(WH)と日立=ゼネラルエレクトリックス社(GE)の沸騰水型原子炉(BWR)、三菱重工=仏アレバ社の加圧水型原子炉(PWR)の2タイプがある。

 決定する発注者のVEAは現時点まで沈黙を守っている。原発2基の総電力量がそれほど大きなものではないとされることから、現時点では世界市場で主流を占めるPWRが有力視されるが、BWRを採用する東京電力を初めとする東芝・WH連合と日立・GE連合は強烈な働き掛けを行っている。そこに政治の関与の余地が生まれるのだ。

 今やベトナム政府の信頼は絶大なものがあるとされるだけに、この時期の仙谷氏訪越は、果たしてその間隙を衝いたものなのかどうか、注目される所以である。

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