Google Employee Number 59
創設初期を知る社員の告白手記「グーグルの秘密を明かそう」(PART.2)

from The Sunday Times Magazine サンデー・タイムズ・マガジン UK Text by Douglas Edwards
98年に2人の大学院生が始めた会社グーグル。創設の翌年に59番目の社員としてこの会社で働くことになった男が、エネルギー溢れる職場の様子を回想する。
限りなくユニークで野心的な企業の原動力はどこからくるのだろうか?

ホッケー場で人事評価

 面接が終わったころには日が暮れ始めていた。サーゲイに誘われて、スタッフと一緒に夕食を食べることになった。

「シェフを雇ったばかりなので、まだ食堂は仮のものなのですけれどね。この会社にはマッサージ師も2人いますよ」

 頭の中の「警告ランプ」が急に点滅し始めた。マーケティングに予算をほとんど割くべきでないと考えているこの男は、なぜシェフやマッサージ師を雇っているのか? だが、箸をとってトロ、エビ、サーモンやハマチを皿にのせていくうちに、ビジネスプランや収益源、組織構造に対する不安はどこかに消えてしまった。かなり有望な企業に思えたし、エキセントリックな天才タイプの人間もいた。それにこの会社のブランド開発の仕事なら楽しく取り組めそうだと思った。

 2週間後、私はグーグルでオンラインブランド・マネジャーとして働き始めた。私は59番目の社員。60人にも満たないグーグルで働く経験はどうだったか? 私が職場で発した次のような言葉を知れば、様子がわかるかもしれない。

「非常口が自転車でふさがれちゃってるよ」

「ウィンドウズについて質問があるんだけど。えっ、誰もウィンドウズについて知らないって?」

「ごめんなさい。そんなところに寝ていると思わなかったもので」

「女子更衣室でタオル盗んできていい?」

「ほらね、ボールをバウンドさせたほうが、単に転がすよりも、ゴミ箱はたくさん倒れるんだよ」

 グーグルは成長の真っ只中にあった。オフィスの通路からは、コンピュータの画面に向かっている無数の後頭部が見えた。これだけ聞くと、死ぬほど退屈そうな職場に思えるかもしれないが、そこにはエネルギーが溢れていた。そして会社のポテンシャルがもたらす緊張感は強烈だった。

 ラリーとサーゲイは、従業員の余ったエネルギーをローラーホッケーに向けることを奨励していた。ホッケー場は、もう一つの人事評価の場となった。ホッケーによく参加していた設備担当マネジャーのジョージ・サラはこう話す。

「人となりを知る上で、あれほど優れた方法はありませんでした。どれだけ積極的なのか、他人に容赦がない人物なのか、能力の100%以上を発揮できるのか、いろんなことが見えてきます」

 私は大学を出たばかりの坊やたちに、自分が身体面でも知能面でも衰えはじめているとは思われたくなかった。だが、私には20年のキャリアで得た(グーグルではあまり意味がない)成功体験を語ることしかできなかった。

 あるとき新しく転職してきた幹部クラスの人間が打ち明け話をしてきた。

「ダグラス、わかってきたことがあるんだよ。グーグルっていうのは、頭はいいけれど不安でいっぱいの若者たちを雇って、彼らにつねにプレッシャーを与えていく会社なんだよ。だから従業員たちはどんなに懸命に働いても、自分たちが成果を出したとは思えないんだ」

 カフェインを過剰に摂取する20代のグーグル従業員たちの多くは、ベイエリアの外から引っ越してきた人たちだった。地元の友人がいるわけでもなく、近くに親戚もいない。彼らにはグーグルという場所しかなかったのだ。グーグルが従業員の不安感をあおり、仕事への熱意を高めるのが巧妙だったのは確かである。

"I'M FEELING LUCKY: The Confessions of Google Employee Number 59" by Douglas Edwards. Copyright © 2011 by Douglas Edwards.
Japanese reprint arranged with Houghton Mifflin Harcourt Publishing, New York through Tuttle-Mori Agency, Inc., Tokyo.

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