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今こそヒュンダイ研究
世界第5位に成長し、欧州ではトヨタを抜いた
20年前本誌が買ったポニーはほんとに酷かった
20年前 ポニー
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 今から23年前の'88年、BC編集部でヒュンダイポニーを買ったことがある。

 '67年に設立されたヒュンダイは、フォードのノックダウンから始まり、'73年に三菱と技術提携。'75年に韓国国産車初のポニーを発売。このポニーXLは2代目で、ソウルオリンピックを記念し150台限定で三菱商事が販売したもの(益子現三菱社長が担当だったとの噂)。

 ベースは5ドアハッチバックのミラージュ、エンジンも当然三菱製だ。

「アメリカで安さからヒット、躍進しようとする韓国車を研究すべく買ったけど、室内からは接着剤の臭いがして、とにかく安っぽく、サスもふにゃふにゃで半年でショックアブソーバーが抜けて、スッコンスコン。まいったよ」と、は回顧する。

 そのヒュンダイが今や世界5位の自動車メーカーに成長し日本車を脅かす存在になった。そんな今こそ、ヒュンダイの凄さに迫ってみたい。

TEXT/山口京一

考察1 ヒュンダイが世界で躍進する理由

 トヨタは昨年秋、本社従業員や関連会社、下請けメーカーを集め、ヒュンダイ車の品評会を開いた。それに参加した人は一様に「ヒュンダイをみくびっていた」という感想を持ったという。また昨年、ホンダの伊東孝紳社長は中期経営計画の発表会で、競合メーカーはどこかと記者に聞かれ、「脅威だと思うのはひとつはヒュンダイ、もうひとつはVWだ。ヒュンダイの脅威はますます強まっている」とコメント。いかに日本メーカーがヒュンダイを脅威に感じているかよくわかる。

 ヒュンダイグループの世界新車販売台数ランキングでは'00年には202万台、9位にしかすぎなかったが、'04年には333万台で6位、'07年から5位になり、'10年は前年比24%増の574万台。

 今年は昨年比10%増のヒュンダイグループ計で633万台を目指し、躍進を続けているのだ。

 '10年のアメリカ市場の歴史的な出来事はヒュンダイの躍進と新型ソナタの販売実績である。同社として初めてアメリカでの販売が50万台を超え、主要13社中、最高の伸び率(23.7%ヒュンダイ単体)を示した。

 ソナタは'09年比52.3%増の19万6623台、エラントラが同27.7%増の13万2246台と牽引役をはたした。

 欧州でも大躍進。ヒュンダイ・キアグループがトヨタ・レクサスの合計を約2万台上回り62万911台を記録した。これはトヨタの一連のリコール問題の影響で前年比16.3%と急減速したこともあるが、価格や安いわりには品質が高いことがうけたのだろう。

 インドでは、総数において、スズキに次ぐ2位に、小型車クラスでは、i20とi10がトップセラーだ。

 中国乗用車市場の'10年1~11月販売では、日産、ホンダを抜いた。ここでも、キアが急伸し併せるとビッグツーのVWとGMに迫る3位を占めた。

 それではなぜここまで躍進したのか? 強靭な企業体質、カリスマ経営者と首脳陣、ぶれない商品戦略と先進技術研究開発、サプライヤー特殊専門能力と学識叡智の最大活用がある、さらに飽くなき品質追求と保証、他を寄せつけないバリューフォアマネー、慎重な生産地選択と大胆な実行だ。

 かつて、日本の自動車産業が備え、大繁栄をもたらした特性と長所群だ。語り、記すは容易だが、右肩上がりで成長してきた日本人にとっては、もはや厳しすぎる道か。

 ヒュンダイは、多々の修羅場をくぐってきた。'86年、ポニー派生セダン、〝エクセル〟対米輸出を開始、初年度は記録的数を販売した。カナダで現地生産を始めるが、野心満々の奢りは、品質問題にぶつかる。人気トークショーホストのジョークの種にまでされた。4年後には工場を閉鎖する。以来、長い品質改善の道を進む。

 鄭夢九会長は、ヒュンダイを「アメリカのJDパワー社品質調査トップランクに入れよ」なる至上令を発した。トヨタ、ホンダを抜いてである。'09年にはこれを実現した。躍進第1段階だ。

 第2にパワートレイン戦略だ。副会長・研究開発総帥、李賢淳博士は、創設者会長に雇われ入社したパワートレインエンジニア出身だ。ガソリン、ディーゼル、1ℓから大型トラック用13ℓまで、フルラインアップを急速に刷新している。性能、燃費、排気、騒音振動、すべてにおいてベストインクラスを開発目標とする。ダウンサイズ、直噴、ターボ化を進めている。

 ハイブリッド、EV、燃料電池車開発も着実に進めている。

ヒュンダイのアサン工場を見学 し、あまりの効率のよさに驚いた

 ヒュンダイは、トランスミッションを自製する数少ないメーカーだ。横置きエンジン用2種の6AT、大型ラグジュリーFR車用8ATを発表。CVTも自製するが高効率ダブルクラッチ自動変速が主流になるという。

 第3にデザインだ。ヒュンダイデザイン担当、呉碩根・副社長は、「追従型無味、奇抜型の低価格車の時代は終わった。

 "ヒュンダイ"なるワンブランドで、車格、価値、個性を主張するデザインを生み出す」と宣言する。

ヒュンダイの呉デザイン担当副社長。流れるよ うな彫刻が現在のヒュンダイの特徴
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