「日本人はバカになった」は本当か 世界が嗤っている

2010年02月10日(水) 週刊現代

週刊現代賢者の知恵

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「他大学に勤務する先生に聞いた話ですが、(学術本を読ませるのは難しいだろうと思って)『新書を一冊読んでレポートを書いてきなさい』と課題を出すと、『新書ってなんですか? 新しい本ですか?』と学生にいわれて愕然としたそうです。また、私のところにも『ソ連が崩壊したのは戦前ですか?』と平然と尋ねてきた学生がいましたね。我々が常識として知っていることを知らない若者が、確実に増えています」

 ためしに身近にいる大学生に「広島・長崎に原爆が投下された日はいつか」と聞いてみてほしい。

 本誌が複数の大学生(いずれも都内有名私立大学に通う)に尋ねてみたところ、「1945年8月まではわかるけど、その年はいっぱい『記念日』があるからややこしいですよね」と曖昧に濁す学生や、「1989年8月2日でどうでしょうか? 下4ケタが8982でバクハツですから」とシャレなのか本気なのか判別しがたい答えを返してくる学生に出会った。

 大学生の歴史感覚の欠如は、相当深刻なようだ。

徳川家康を知らない

 では、理系の知識はどうか。私立大学情報教育協会が私立大学の1500人近くの学生を対象に行った調査によると、大学生の2割が四則演算のとき、掛け算割り算を足し算引き算より優先するというルールをわかっていなかったという。

「文系の学生も対象に含めたデータだから、目をつぶってはどうか」という寛容な方もいるかもしれないが、理数系を専攻する大学生の間でも、数学力・理科力の低下は著しいという。立命館大学で経済学を中心に教える佐和隆光教授の話。

「(大学数学の基礎となる)微分積分を理解しておらず、1~2年生の時点で躓(つまず)いてしまう学生が増えていますね。東京大学の理科Ⅰ・Ⅱ類クラスの学生でも、微積分がわからない学生がおり、理解できるかどうかでクラス分けが行われているという話も聞いたことがあります」

 六大学の一校で物理学を教える教授の話は、さらに衝撃的だ。

「物理の基礎的な講義で、まったく授業内容がわからないという学生が3割ほどいました。これでは授業にならないので、なぜわからないのかを学生に尋ねたところ、『基礎を忘れた』『テキストが文字ばっかりで読みづらい』という意見が多かった。そこで、やむなく教科書に『マンガでわかる物理』を使用することで決着しました。もちろんはじめての試みです」

 それでも授業についていけない学生には補習を実施して対応している、とこの教授は言うが、大学で補習授業が行われる光景は、もはや珍しいものではない。日本私立大学団体連合会の調査では、学力低下に対応するため入学後に補習授業を実施する大学は67%に達しており、民間の教育支援企業に補習授業を委託する大学も少なくないという。

 大学だけでなく、中学、高校の教育現場でも、補習教育が盛んに行われている。

 京都府は'08年に行われた全国学力テストの結果、中学校3年の数学で小学校レベルの分数問題が解けない生徒が約12%もいたことから、昨年より中学1年生に小学校の学習内容を教える「振り返り集中学習」(ふりスタ)の実施を開始した。四角形の角度の計算方法や小数の計算などを復習させるという。

 高校の補習授業は、各学校をはじめ、民間の教育会社や指導塾など幅広く行われているが、'09年にはNHK教育テレビの老舗番組『高校講座』でも、義務教育の学習を振り返る放送が開始された。

「第1回目の放送は『15÷(3+2)×3はいくつ?』という小学生レベルの内容でした。驚かれる方もいるかもしれませんが、勉強についていけない高校生は、このレベルから教えなおさなければダメなんです。大手教育支援企業・ベネッセコーポレーションが700校近くの高校を対象にした調査によると、『10倍したり10で割ったりすることができない』『徳川家康を知らない』といった生徒のいる高校も少なくなく、50%の高校が『小学校段階から教育をやりなおす必要がある』と答えているのです」(兵庫県内の高校で数学を教える教師)

 なぜこれほどまで基礎学力が低下しているのか。「生徒の勉強時間が短くなっていることが学力低下の原因」とこの教師は指摘するが、実際日本の中高生の学習時間は、国際的に見ても短いことが、財団法人日本青少年研究所の調査でも明らかにされている。

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