まねきTV裁判---著作権法はネットの敵か(2)
権利者保護より、放送業界の競争導入

RS-DVRプロジェクトを語るCablevision Systems最高業務責任者のThomas Rutledge氏 (2010年The Cableshowにて筆者撮影)

(1)はこちらをご覧ください。

 前回は、『まねきTV』裁判で最高裁が知財高裁の決定をつくがえし、著作権侵害を認めた経緯を解説し、加えて米フィルムオン社の事例を紹介しながら「米国でもテレビ局が地上波のネット再送信に厳しい態度を示していること」を紹介した。まねきTV判決は、日本の著作権法がネット時代に適応していないことを浮き彫りにし、有識者の間で失望が広がっている。今回は、米国のネット映像ビジネスで重要な裁判となった『RS-DVR訴訟』を紹介しながら、放送ビジネスにおける競争政策の重要性考えてみたい。

 最先端のDVRサービスを実現するRS-DVR

 2007年以来、米国ではケーブルビジョン(Cablevision Systems Corp.)社とテレビ局がRS-DVR(Remote Storage-Digital Video Recorder)を巡って裁判を繰り広げた。このRS-DVRは、日本の『まねきTV』と類似性が多く、非常に興味深い事例といえるだろう。

 多くの読者は、DVRを使って見逃し番組を視聴するなど、便利に利用していらっしゃるだろう。また、ハイビジョン(高精細番組)番組が増えて、DVRの録画容量が足りないと感じる方も増えているはずだ。有料放送サービスが8割を越える米国でも、DVR付STBやTiVoなどの単体DVRが広く普及している。しかも、CATVやIPTVは100チャンネルを超える高精細番組を配信しており、米国でもDVRの容量不足は頭痛の種だ。

 そうした中、ニューヨークを拠点とする大手CATV事業者ケーブルビジョン社は、2006年頃からRS-DVRサービスを準備していた。これはCATVのネットワーク・センターに大型ビデオ・サーバーを設置し、録画サービスを希望するユーザーそれぞれに一定の録画スペースを提供する。これにより視聴者は自宅にDVR付STBを置く必要がなく、しかもリモコン操作ひとつで、好きな番組を録画・再生できる。つまり、RS-DVRは、CATV事業者のネットワーク・センターにDVRを集約し、録画・再生機能を提供する「クラウド型DVRサービス」だ。

 このサービスは視聴者および配信事業者の両方に大きなメリットがある。まず、録画容量を自由に拡張できるので、ハイビジョン番組の大量録画などが可能になる。また、複数の部屋/STBで録画・再生をするマルチ・ルーム・サービスが簡単にできる。停電のない日本ではあまり関係ないが、瞬断や停電などによる録画失敗もなくなる。

 一方、CATV事業者はDVR付STBの在庫・設置・修理・回収などがなくなり、コストダウンができる。また、ネットワーク・センターに集約することで省エネが実現でき、環境に優しいサービスを提供できる。

 なお、日本の『まねきTV』とは違い、RS-DVRはインターネットで番組を配信するわけではない。CATVネットワークのビデオ・オン・ディマンド機能を利用して、それぞれのSTBに録画番組を配信する。

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