密かに進む外資による水源林の買収 資源保全、安全保障に無防備な土地制度特集[日本の森が危ない!?]

2011年02月10日(木) 万年野党事務局
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 国土利用計画法に基づく土地売買等届出書などを基に把握した範囲では、外国の企業や個人による買収は、29件のほかに、森林を所有していた法人が外資企業に買収されたケースなどを含め少なくとも計33件、計約820ヘクタールに上った。国別では中国(香港)12件(241ヘクタール)▽シンガポール5件(25ヘクタール)▽米国4件(15ヘクタール)――の順で、中国資本の多さが目立つ。

 買収された林地を市町村別にみると、いずれも羊蹄山のふもとに位置し、リゾート地として外国人観光客も多い倶知安町13件(326ヘクタール)とニセコ町10件(97ヘクタール)で件数の約7割を占める。1970年代に買収された土地もあるが、ほとんどが06年以降の取得でここ数年の間に急増している。

 33件には、水源地が含まれる可能性のある水土保全林が16件、531ヘクタールあるほか、陸上自衛隊駐屯地から約3㌔以内と近接している林地も3件、109ヘクタールある。届け出時の土地取得目的は「資産保有」とするものが多いが、詳しい実態は分からないのが実情だ。

 外資による取得自体が悪いわけではないが、道議会では「世界的な水資源不足分を見越して、ビジネスチャンスとして、水源を購入しようとしているのではないか」との指摘や、安全保障の観点から土地取得に規制がないことを問題視する声が上がっている。道の担当者も「森林の整備や管理、災害で荒れた時にどうするのか。国内の所有者でさえ連絡が取りにくいケースもあるので、海外ではなおさら難しい場合もあると思う」と話す。

 外資による森林取得の問題をきっかけに、そもそも土地取引を十分に把握する仕組みや、外資による取得の規制がない問題も浮かび上がった。

売りに出されている森林=10年7月、北海道倶知安町で(東京財団提供)

 また、道が水土保全林や06~08年に30ヘクタール以上の森林を取得した企業など2141社に郵送で土地の所有目的や、長期的な所有かどうかをたずねるアンケート調査をしたところ、約4割にあたる913件が宛て先不明で返送されている。外資の33件についても回答があったのは1件のみだった。

 道はさらなる実態把握のため、湧き水がある土地(91カ所)▽水道、農業、工業の各用水の取水施設がある土地(785カ所)――を優先して所有者の確認調査を急いでいる。

 こうした調査と並行して、道は独自規制の検討も始めた。高橋はるみ知事が昨年11月の道議会で、「北海道の豊かな水資源は将来にわたって引き継いでいかなければならない貴重な財産で、水源をかん養する森林の役割が極めて重要」と水源地保全の必要性を強調。所有者の把握を容易にするため、新たな条例を11年度中に制定する方針を表明した。

 道は条例に、届け出が必要な面積を引き下げることなどを盛り込みたい考えだ。また、土地取引の事前届け出や、水源地を保護するための何らかの開発規制が可能かどうかも焦点となる。今後、有識者や市町村の意見を聴く場も設けて成案化する。

 国に対しても、森林売買などの情報の的確な把握に向けた法制度整備のほか、条例では対応が難しい土地売買について、水源地域など重要な森林については規制を検討することを要請している。

 一方、外資による土地取得が目立ったニセコ町も、水資源保護の観点から、独自の対策に乗り出している。

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