野田総理はなぜウソをついたのか
怪しい「どじょうの美談」

週刊現代 プロフィール
「誠実に、実直に」は本当ですか?〔PHOTO〕gettyimages

 どじょうは身の危険を察すると、ひょろりと泥の中に身を隠す。自らどじょうを名乗ったこの男も、やはり自分の危険を察したり、都合の悪いことが起こると、どこかに身を隠してしまうようだ。

こんなことで大丈夫?

「政治に必要なのは、夢、志、矜持、人情、血の通った政治だ。一人ひとりを大切にする政治をやり遂げたい。『どじょうがさ、金魚のまねすることねんだよなあ』という相田みつをさんの言葉が好きだ」

 民主党代表選での、野田佳彦新総理の演説に心打たれたという人は、少なくないだろう。内閣発足後初めて行われた世論調査では、日経新聞の67%をはじめ、軒並み高い支持率を示しており、支持する理由のなかで最も多かったのが「野田氏の人柄」であった。

 二世議員でもない、落選経験があり苦労もしている、演説もうまいと評判である。さらに、美談にもこと欠かない。「24年間、雨の日も風の日も駅前で辻立ちを続けた」「松下政経塾の1期生として、後輩たちの面倒を熱心に見ていた」「奥さんを立てる人で、『いまの野田佳彦があるのは妻のおかげ』が口癖」などなど、実直でマジメな政治家として語られることが多い。

 しかし、野田総理の美談に素直に心動かされていては、われわれ国民はバカを見るかもしれない。就任から1週間、早くも野田総理の美談に、ほころびが見え始めているからだ。

 たとえば「父が陸上自衛隊習志野駐屯地の空挺団の一員で、落下傘部隊が降下訓練しているのを見て育った」---野田総理はことあるごとに自身のバックグラウンドについてこう語っているそうだが、この話、どうも胡散臭いのである。

「野田氏の父は、実は空挺団には所属していなかったのではないかとの疑念がもたれているのです」

 こう話すのは、総理の地元・船橋市の市議会関係者だ。

「すでに退官された野田氏の父親の現役時代の所属について、習志野駐屯地が改めて確認したところ、第1空挺団の所属ではなく、駐屯地の管理業務を行う『業務隊』の所属であったことが分かったのです」

『日刊ゲンダイ』紙は9月5日号でこの問題について習志野駐屯地に取材を行っており、広報班が「同じ習志野駐屯地でも野田首相の父親は『業務隊』の所属でした」と回答したと書いている。ところが本誌が改めて取材すると、「この件については現在調査中です」(広報班)と、ずいぶんと見解が変わっている。野田総理の周辺から「答えるな」と圧力でもかかったのだろうか。

 空挺団と業務隊では随分とイメージが違う。野田総理はなぜこんな誤解を招く話を周囲に吹聴していたのか。野田総理の事務所に確認すると、「野田本人がそういう話をしていたかは確認できない」との回答であったが、野田総理の弟で、船橋市議を務める野田剛彦氏はこう答える。

「父は習志野駐屯地に勤務しておりましたが、厳密に言えば空挺団の所属ではありません。『父は空挺団所属』と兄が話していたかは定かではありませんが、第1空挺団を補佐する業務に携わっていた、という説明が少し複雑であるために、『第1空挺団』と説明し、それが一人歩きしているのかもしれません」

 野田総理本人の説明がない以上、その真意は測りかねるが、説明するのが複雑だから「父は空挺団に所属していた」と言っていたのであれば、ずいぶんと雑な性格ではないか。

 さらに、9月3日には野田総理の資金管理団体「未来クラブ」が、2人の在日韓国人男性から今年までに計31万8000円の献金を受けていたことが発覚。この件について野田首相側は「本人も事務所も知らなかった」と主張しているが、地元・船橋市を取材すると、どうもそうではなさそうだ。

「この男性のうち一人は民団(在日本大韓民国民団)支部の幹部。野田首相は地元で開催される民団のイベントにも積極的に顔を出しており、この男性についてはよく知っているはず。献金を受け取ったことを『知らなかった』というのは無理があるのでは」(別の船橋市議会関係者)

 9月3日、宿泊先のホテルから外出する際、記者団に「献金について釈明する気はあるか」と問われた野田首相は、無言で車に乗り込んだ。

「菅前総理と違って、野田さんは記者の取材にまともに答えてくれる人かと思っていたが、自分に都合の悪いことになると、雄弁はどこへいったのやら、まともに取り合ってくれない」とは総理番記者の野田評だ。就任直後に「福島の再生なくして日本の再生なし」と言い切った割には、就任から約1週間後の8日まで福島視察を先送りにするなど、「誠実さ」をウリにしながら、どうも対応や行動にそれが見られない部分が少なくない。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら