Close up 歳内宏明
福島・聖光学院「負けない男でいたい」

さいうち・ひろあき◎ '93年7月19日生まれ。 兵庫県尼崎市出身。聖光学院3年生。甲子園 大会は夏2度出場。通算成績は3勝2敗、防御率2.22、奪三振率10.40。182cm、82kg

「12球団OKです」―福島の人に申し訳ないと涙を流し甲子園を去った〝被災地の豪腕〟が、「試練の3年間」と「これから」を語った

「何が起きているのか分からない・・・・・・。次の試合が来ないことだけは分かる・・・・・・。チームのみんなにも、福島の人にも申し訳ないです・・・・・・」

 顔面をグシャグシャにして泣きじゃくり、歳内宏明(18)はひたすら自分を責めた。あの大震災から約5ヵ月が経過した8月12日、彼の高校生活最後の戦いは幕を閉じた---。

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 9月9日午後、福島県伊達市。小高い丘の上にある聖光学院野球部グラウンドに、球児たちの声が響き渡る。秋の県大会を目指し練習に励む1、2年生たちを尻目に、外野を黙々と走る歳内がいた。

 彼が甲子園で見せた快投ぶりは、大会No1右腕の前評判に恥じないものだった。最速145km/hの速球と鋭く落ちるスプリットを武器に、1回戦の日南学園(宮崎)戦は16奪三振で完投勝利。続く2回戦の金沢(石川)戦も完投し14三振を奪ったものの、チームは2―4で敗退。

 冒頭の発言は、敗戦後のものである。歳内は男泣きに泣いた。大会前こそ「震災と野球を結びつけるつもりはない」と語った彼だが、背負っていた重圧の大きさが、その涙に表れていた。もとよりプロ注目の投手であった上に、原発事故に伴う放射能被害に苦しむ福島県民の希望を一身に背負い、彼は投げ続けたのだ。

 プレッシャーから解放された今、歳内は何を思うのだろうか。まずは震災発生の瞬間のことを訊ねた。