雑誌
作業員の告白「いまだ1万ミリシーベルト検出!作業拒否が続出」
6ヵ月経った今も混乱が!劣悪な宿泊環境、
素人投入で増す負担、タダ働きの人も
1号機と2号機の原子炉建屋の間で、棒状の測定器で放射線量を測る作業員。事故後に測定された数値では最高の1万ミリシーベルトを検出(東京電力提供)

 未曾有の原発事故から6ヵ月---。福島第一原発の作業現場は、今も大混乱が続いていた。東京電力の協力企業で働く村上忠晴氏(仮名、30代)が明かす。

「人手が足りず、最近では原発で仕事をしたことのないような素人でも、東電はフクイチ(福島第一の通称)の作業員として大量に採用しています。彼らは、放射能への警戒心が薄い。平気で汚染された瓦礫を触ろうとし、中には原子炉建屋の見える高台で記念撮影をする者もいるんです。そんな緊張感のない作業員が増えたから、現場は混乱する一方です。防護服の着方など、彼らに原発作業のイロハを教えるだけで疲弊しています」

東電のライブカメラに向かい、何事か訴える謎の作業員。後日、本人を名乗る作業員が、ネット上に労働環境の劣悪さを書き込む

 そんな現場の不満を象徴するような、〝事件〟が起きた。8月28日に福島第一内に設置された東電のライブカメラの前に謎の作業員が現れ、カメラを指さしながら何事か訴える映像が流れたのだ。

 ライブカメラに音声発信機能は付いていないため、ネット上では「重大なことを警告しているのではないか」と騒然となった。

 そして内閣府の園田康博・大臣政務官が8月30日の会見で「本人の考えを教えてほしい」と述べると、9月8日にその「本人」を名乗る人物が「作業員の低賃金、保険未加入、契約書もないという不当な雇用条件」をネット上の掲示板「2ちゃんねる」に〝暴露〟する事態に発展したのだ。村上氏が解説する。

「彼がネット上に書き込んだことは、真実です。私も3月の事故以来、断続的にフクイチで働いていますが、いまだに1日1万5000円の約束だった日当が払われていません。元請け(親会社)の所長に『なんでカネを払ってくれないんですか』と詰め寄ると、こう言い放ったんです。『お前は下請けだろう、そんなことを言う資格はない』と。東電の社員にも掛け合いましたが『指導を徹底しますので・・・・・・』と答えるばかりで、元請けを厳しく注意しようともしません。私は、あと1ヵ月ほど待って入金がなければ元請けを訴える覚悟です」

1号機タービン建屋付近で、作業員が汚染水を通すオレンジ色のホースを設置している(作業員提供)

 村上氏は「宿泊環境の劣悪さ」も、ネットの書き込み通りだという。

「私たち作業員の多くは、前線基地のJヴィレッジ(福島県楢葉町)近くの旅館に滞在しています。私がよく泊まるのは十数人用の部屋ですが、同室の作業員たちの業務開始時間はバラバラ。

深夜の勤務を終え宿に戻り、明け方にようやくウトウトしていると、早朝に作業のある人たちが起きてゴソゴソと支度を始めます。とても安眠できる環境ではありません。

1号機の原子炉建屋は、放射性物質の拡散を防ぐカバー設置のため鉄骨で囲まれた(東京電力提供)

 1~2時間しか眠れない日が続き、炎天下の作業中に吐き気をもよおしたり、フクイチからの帰り道で居眠り運転して事故に遭いそうになったこともあります。9月に入り少し涼しくなっても、1日に10人ほどの作業員が熱中症や疲労などで倒れているんです。こうした生活環境を早く改善してほしい」

 最近の東電の発表では、福島第一は安定した状態にあるような印象を受ける。8月18日には、それまでトラブル続きだった日米仏3ヵ国の装置を利用した汚染水浄化システムに加え、東芝製の放射性物質除去装置「サリー」で一本化したシステムを構築。浄化効率は格段に上がっているという。

 また損傷の激しい1号機原子炉建屋を鉄骨で囲み、10月中に放射性物質の拡散を防ぐカバーで覆う作業も順調に進んでいるようだ。

「死地に行くようなもの」

 だが別の協力会社で働く佐藤治氏(仮名、40代)は、「安定した状態など、とんでもない」と東電の発表に否定的だ。

「東電はいい事ばかり発表しています。現場では進んでいる作業より、遅れている作業のほうが多いんです。一番の障害は、凄まじい放射線量の危険地域です。8月1日に1号機と2号機の原子炉建屋の間にある排気筒近くで、毎時1万ミリシーベルト(一度に浴びると確実に死に至る線量)という信じられないような高い線量が検出されました。そこからは、いまだ超高水準の線量が出続けています。以来100ミリシーベルト以上の場所が次々に見つかり、『立ち入り禁止』と書かれたコーンがあちこちに置かれ、付近では作業ができません。こうした数値の恐ろしさを知っているベテラン作業員の中には『死地に行くようなもんだ』と、フクイチの仕事を拒否する人が続出。代わりに素人が増え、現場が混乱する要因にもなっているんです」

 そもそも浄化システムを構築したり原子炉建屋をカバーで覆っても、所詮は〝応急処置〟をしているだけ。放射性物質の発生元である溶解した核燃料を取り除くためには、いつかは格納容器近くに作業員が入らなければ根本的な解決にならない。だが「そうした作業はほぼ不可能だ」と、東芝で原子炉格納容器を設計した後藤政志氏は分析する。

「1~3号機では、核燃料が圧力容器だけでなく格納容器からも溶け出ている可能性が高い。どれだけの核燃料がどこまで拡散しているのか、誰も確認できない状態です。そんな人類が経験したことのないような危険な現場で、人間が作業できるとはとても思えません。福島第一は、手のつけられない状況にあるんです」

 ゴールの見えない過酷な現場で、作業員は現在も働き続けている。

「フライデー」2011年9月30日号より

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