ドイツ
女性役員はまだまだ少なくても、働くのは当たり前。少子化に悩む、ドイツのウーマンパワー
ウルゾラ・フォン・デア・ライエン労働大臣〔PHOTO〕gettyimages

 次女とともに知り合いを訪ねた。83歳、威風堂々のドイツ人、Wだ。最寄りの駅まで迎えに来てくれた彼は、私のために車のドアを開けて、また閉めてくれた。反対側から車に乗り込んだ娘が、それをじっと見ていた。そのあとテーブルについたとき、Wは私の椅子に軽く手を掛けて押し、私が座るのを見届けてから着席した。

 そのとき、娘が口を開いた。「W、あなたのしぐさは、とてもエレガントよ。そういうの、私、見たことがなかったの」。

 それに対して返ってきたWの言い草が振るっていた。「すべては女性自身の責任だよ。君たちはここ50年間、強くなることばかり願ってきたんだからね。男の助けなど必要ないと振り切って」。

 ドイツの女性は確かに強い。首相が女性で、しかも、6年も政権を保っているのだから、くどくど説明するまでもない。そのうえ、現在の労働大臣はウルゾラ・フォン・デア・ライエンという女性で、体つきは華奢だが、これまた強い。どれだけ強いかというと、7人も子供を産んでいる。

女性役員の割合は2.5パーセント

 そのフォン・デア・ライエン氏が、今年の1月に次のような提案をした。ドイツでは大企業での女性役員の登用率があまりにも少ない。法律で女性の割合を義務付けるべきだと。具体的にいうと、女性役員30%が目標。

 大卒の男女比が半々になってすでに久しい。ドイツの従姉の息子は物理学を学んだ。大学卒業の時に惜しくも首席を逃したが、首席の座を手にしたのは女子だった。このごろは、自然科学の分野でも優秀な女性は珍しくない。学問の世界では、トップを巡る争いは今や男女平等なのである。

 ところが企業の風景はまったく違う。大企業になればなるほど、トップの女性の数は減り、資本金上位200社を見ると、女性役員の割合は2.5パーセント。主要30社に絞るとさらに少なく、たったの2%だ。ちなみには日本の主要企業での女性役員比率は1.4%と、さらに低い。

 実は10年前、ドイツの大手企業と政府は、今後、自発的に女性役員を増やしていこうという取り決めに合意した。そして、10年後の今それがどうなったかというと、0.5パーセントの伸びだという。要するに、何も変わっていないに等しい。トップ中のトップの世界は、男性のみのエリートクラブのようになっていて、ポストを仲間内で回している感が強い。だからこそフォン・デア・ライエン氏は、その最後の"男の楽園"を打ち壊すべく、法律を作り、企業の上層部に女性を食いこませようとしているわけだ。

 ただ、その提案がなされた途端、10年前「自発的に」合意した企業は、手のひらを返したように大反対を唱え始めた。そればかりか、連立与党のキリスト教社会同盟(CSU)や自民党(FDP)もこぞって反対している。

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