岡本ホテルに群がった魑魅魍魎たちに組織犯罪処罰法で挑む警察
狙いは暴力団マネーの解明

「最初は山健組で最後は弘道会がついとったん違うかな。どっちにしても山口組のいろんな連中に食われたよ」

 2月7日夜、警視庁と静岡、兵庫、福井県警の合同捜査本部が逮捕した岡本ホテルグループ元オーナー、大東正博容疑者の知人は、約8000人から200億円以上を集めた詐欺商法のウラで、大東容疑者を暴力団関係者が「食い物にした」と明かした。

 私は、昨年5月27日付けの本誌で、出資法違反で強制捜査を受けたばかりの岡本ホテルグループ摘発の狙いが、「暴力団マネーの解明にある」と指摘した。

 大東容疑者が、四国の山口組系組織の元組員であったという属性、その後も「反社会的勢力」との関係を切れず、今回の預託金商法のような詐欺紛いを繰り返してきた過去、企業舎弟、共生者と呼ばれる連中が、"本チャン"の暴力団幹部のダミーのような形で岡本ホテルに関与してきたという事実が、捜査当局の狙いを裏付けた。

 また、捜査本部の主体となるのは警視庁組織犯罪対策4課。暴力団担当部署が乗り出してきたことからも暴力団狙いは明らかで、不特定多数から資金を集めることを禁じた出資法違反での捜査を、暴力団などによる組織犯罪やマネーロンダリングに対処する組織犯罪処罰法違反に切り替えた。

 前回、岡本ホテルが暴力団マネーに汚染されている実例として、トランスデジタル事件との関連性をあげた。ジャスダックに上場していた同社は、岡本ホテルが強制捜査を受ける2ヵ月前の昨年3月、民事再生法違反で後藤幸英社長(当時・以下同)、鈴木康平副社長、峯岸一顧問、金融ブローカーの黒木正博、食品会社オーナーの野呂周介らが逮捕されている。

 トランス社は、上場の業績不振企業に資本を投入、将来性があると"花火"を打ち上げて株価操縦、さや抜きをして儲ける「増資マフィア」と呼ばれる連中のおもちゃになった企業。黒木、野呂の両名は、その"常習者"であり、彼らが岡本ホテルに関与したということは、いずれ事件化を運命づけられた。

 前回、不明確だった岡本ホテルとトランス社と「反社」の関係を整理してみよう。

「トランスは、資本増強を目的に集めたカネのなかから約20億円を、Sという会社を通じて岡本ホテルにぶち込んだ。4億円は『反社』の資金調達係にバックされたから、正確には16億円が10%内外の高利に引かれて岡本ホテルに流れた」(トランス社元役員)

 岡本ホテルの詐欺商法とは、会員になれば、チェーン展開する11の温泉旅館にポイントの利用で宿泊できるうえ、5年の満期がくれば元金が返済されるというもの。

 もちろん、16億円を投じたとはいえトランス社は被害者ではない。自転車操業ながら資金は回っている岡本ホテルに預け入れることで、利回りを確保するとともに、資金繰り支援を依頼した。

「S社は、大東容疑者に熱海の岡本ホテルを売却した不動産会社ですが、元社長の女性が弘道会系組織の幹部と内縁関係にあり、オーナーのMはやはり弘道会系の企業舎弟と目されています。

 また、会員権販売に絡んだといわれる仕手株の世界で有名なU、岡本ホテルの資金繰りを担ったNやKも近年は、弘道会の有力な企業舎弟として知られています」(警視庁捜査関係者)

 勢いのある弘道会に、「反社」はなびいているようだ。

大物ヤメ検弁護士が顧問に

 大東容疑者が、預託金商法を開始したのは2005年からである。あっという間に11もの旅館を買収できたのは温泉旅館が構造不況業種だからで、10%もの利回りを会員に約束しながら業容を拡大できたのは、元金を返済するつもりのない確信犯だったからだ。

 こうして大東容疑者は、個人的に約40億円を流用、そのほか数十億円の使途不明金があるというのだから、そうした膨大なカネは、大東容疑者に群がった企業舎弟たちが、食い散らかしたに違いない。

 その先には、当然、暴力団幹部がいる。東京駐在で人脈が広く、服役中の篠田建市(稼業名・司忍)山口組6代目の側近と言われるMなどその有力候補。警視庁など捜査当局は、組織犯罪処罰法で取り組んでいる以上、資金ルートを徹底解明のうえで、暴力団幹部の摘発を視野に入れている。

 むろん、ダミーの企業舎弟、共生者がいる以上、"本チャン"に辿り着くのは容易ではない。しかも大東容疑者は、昨年5月の強制捜査の直後から、大物ヤメ検を顧問に事件対策をしてきた。

 前述の大東容疑者の知人が言う。

「名前を聞けば誰でも知っている大物で、時の人と言っていい高検検事長クラスのOBです。その大物が、"後輩"のヤメ検を従えて、各種対策を行っており、大東には"事件は大きくさせないし、君の執行猶予も取る"と、明言しているとか。これまでに2億円も顧問料を払ったというのだから当然でしょう」

 もっとも、厚労省元局長の冤罪事件を機に、検察への目が厳しくなっている昨今、大物OBの意向が捜査に影響を与えるものではあるまい。考えようによっては、「ヤメ検軍団」もまた魑魅魍魎のなかに加えるべきで、警察庁が総力をあげる「弘道会(山口組)壊滅戦略」のなか、岡本ホテルに群がった連中への風当たりは、相当、厳しいものになりそうだ。

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