我が国、日本のクルマは丈夫&信頼性が高いことで有名。滅多なことでは壊れない。それでも'90年代まではマイナートラブル的な故障の話は聞かれたが、最近の国産車となると、トンと「壊れた」という話は聞かなくなった。
が、そうはいってもクルマはメカの集合体。「形あるものは、いつかは壊れる」の真理どおり、パーツ単位で見ていけば、当然寿命などにより機能が損なわれることは、ありうる。
しかも、その機能が失われるまでの前兆が、気づきにくかったりすると、突然壊れたと思うユーザーも多くなるはず。
そこで今回はクルマを構成する全パーツを対象に、「突然壊れた」と思ってしまいがちなパーツについて話をする。ぜひこの企画を読んで、パーツ突然死→クルマ突然死という、決まってはいけない必殺コンボを避けていただきたい。
さて、まずは一般道におけるJAF救援出動回数1位を占めるバッテリーあがりについて、自動車評論家の鈴木伸一氏に話を伺ってみたぞ。
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バッテリーは極板とバッテリー液の間に生じる化学反応によって電気を蓄えたり放出する働きをしており、液温が25℃のときに最良の機能を発揮。25℃より高温になればなるほど「過剰放電」となって特性を損ない、逆に低くなると「活性化が阻害」されて能力が低下してくる。
ところが、外気温が30℃を超える夏日、エンジンルーム内に置かれたバッテリーの液温は50℃にも達する。しかも、近年のクルマのエンジンルームは手を入れるスペースもないなど、熱がこもりやすくなっている。
つまり夏場は必要以上に電気を放出しやすい状況にあるのだ。それに加え最近のクルマは電子制御にパワーアシストと消費電力は確実に増加。またバッテリー自体の性能が向上したことで寿命末期まで、容量不足や劣化に気づきにくくなってもいる。
このような状況から近年、夏場の渋滞路でバッテリーあがりに陥るケースが増えている。発電量の少ないアイドリング状況下で、ブレーキ踏みっぱなしでエアコン最大、ナビ、オーディオ、ETC等々、多量の電気を消費しているからだ。
停止中にアイドリングが不安定になったら要注意で、油断しているとストンとエンジンが止まってしまう。最悪、再始動もできなくなるので注意が必要だ。
さて、バッテリーは時間が経つにつれてセル(1組の+/-電極の組み合わせを表わす言葉)が劣化し、内部抵抗が高くなることで電気が流れにくくなる。そのような状態に活を入れるケミカルが「バッテリー強化液」だが、6つあるセルに均等に注入などできなし、ヘタリ気味とわかるほどだったら、やらないよりましといった程度の効果がせいぜい。また、そもそも近年のバッテリーは液が補充できないタイプが主流。物理的にも無理がある。ヘタったと感じたら、潔く交換。これがベストだ。
そこで、どのようなバッテリーを選定すべきかだが、最も重要なポイントはセルモーターを勢いよく回せるということ。その指針、海外では米国MIDTRONICS社の「コンダクタンス法テスター」が普及している。これはバッテリーに低周波の電気信号を送り、内部抵抗の逆数である「コンダクタンス(電導率)」を測定
CCA(Cold Cranking Ampere)に変換した値で判断するというもので、この数値が高いほどセルモーターが要求する高電流を流しやすいことを表わす。が、残念ながら国産バッテリーの規格表示には採用されていない。
実は、某誌の独自テストで複数メーカー品のCCAを計測。その結果、大方の予想どおりボッシュ「ハイテックシルバーⅡ」が頭ひとつ飛び抜けた性能を示した。どうせ購入するなら、若干高くてもこのような高性能タイプをおすすめする。
ちなみに、筆者のいちおしは「オプティマバッテリー」だ。ユニークなスパイラルセル構造を採用した完全密閉型MFバッテリーで、815CCA(レッドトップ)の高始動性で、手間がかからず超寿命だからだ。