「マニフェスト」を捨て「与謝野」を選択するなら、菅内閣は解散で国民に信を問え
こんな政策転換は許されるのか

 菅内閣は、与謝野氏の入閣で、すっかり方針が変わってしまったようである。政権交代の意味を全く打ち消すような政策転換が、はたして許されるのであろうか。

 5日には、社会保障改革に関する集中検討会議が開かれたが、そのメンバーの大半は、福田内閣の社会保障国民会議や麻生内閣の安心実現会議に参加していた人たちである。この人選は、与謝野氏に丸投げしたものであり、議論も、両会議の報告書を基本にして行われるという。私は、厚生労働大臣として二つの会議に参加したが、結論はすでに見えているような気がする。

 民主党は、基礎年金については税方式を主張していたはずであるが、保険料方式を基本とするというのが、今回の菅内閣の方針である。要するに、与謝野氏にすべて任せるということである。

 それなら、民主党のマニフェストはどうするのか。「与謝野かマニフェストか」と問われたときの答えが、「与謝野」ということであれば、直ちにマニフェストを変えなければならないし、そうするなら、解散総選挙で新しいマニフェストについて国民の信を問うのが筋である。

 マニフェストの修正についても、その内容と規模が問題である。子ども手当の額が直ちに満額支給とならなくても許容範囲であろうが、もし子ども手当そのものを止めるのなら、政策の大転換であり、自公政権と何ら変わらないことになる。

 野党時代の民主党の政策作りを観察していて思ったのは、特定の有識者(学者、評論家、ジャーナリストなど)の影響を強く受けているということである。私も大学で教えていたことがあるので、学者が理想論に走りやすく、新しい言葉作りを好むことをよく知っている。「地方主権」、「新しい公共」などの言葉がそうである。

 しかし、学者と政治家は異なる。政治家は、限られた資源を上手く使って政策を実現せねばならない。その当たり前のことを、民主党は、政権奪取から1年半にしてやっと理解したのであろうか。そこで、なりふり構わず、財務省の指示通りに財政再建路線を突っ走ることになったのであろう。

 財政再建が必要なことは、国民誰もが分かっている。ただ、経済成長と財政再建が車の両輪として同時に動かなければ、財政再建も成功しない。民の懐が淋しいときに、増税は無理だからである。それに、本当に官の無駄を省ききったと言えるのであろうか。仕分け作業というパフォーマンスは世間の耳目をひいたが、官庁にはまだまだ無駄が残っている。それに徹底的にメスを入れることこそ、政権交代で国民が民主党に期待したことではなかったのか。

 予算審議は、衆議院で粛々と進んでいる。しかし、今の衆参のねじれ状態では、予算本体は成立しても、関連法案の成立は困難である。とりわけ公明党の態度硬化には厳しいものがあるが、それは当然である。公明党も妥協の余地を残していたのであるが、民主党執行部は、それに応えるどころか、逆に傷口に塩を塗るようなことを継続的に行ってきた。今になって、公明党に秋波を送ったところで、ときすでに遅しというしかない。

地方からの反乱はポピュリズムを超えられるのか

 ところで、6日に投票が行われた愛知県知事選、名古屋市長選、名古屋市議会解散の是非を問う住民投票のトリプル選挙は、大村、河村両氏の圧勝に終わった。これは、今の中央政界の閉塞感に対して国民が抱いている不満の表れでもある。民主党も自民党も駄目、新たに生まれた新党にも期待が持てない、そこで強力なリーダーシップを発揮する首長に期待するしかないということであろう。大阪や新潟などでも、地域の反乱の芽が出てきている。

 問題は、これらの新しい芽がどのように育っていって、それが日本全体の政治をどう変えるのかということである。大村氏にしても河村氏にしても、「この国のかたち」について多くは語っていない。彼らがどのような日本の未来像を描いているのか、早急に国民に知らせてほしい。愛知県や名古屋市で起こっていることが、単なるポピュリズムを越えて、日本の改革にプラスに作用する必要があるからだ。
 

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