大研究シリーズ 痛い死に方、痛くない死に方

病気によってこんなに 違う


痛みを感じずに逝きたい。間違っても最期、苦痛に悶絶しながら死ぬのは避けたい。こう願う人は多いに違いない。

 痛みを感じずに逝きたい。間違っても最期、苦痛に悶絶しながら死ぬのは避けたい。こう願う人は多いに違いない。だが、死に方を選ぶことはできない。あなたが患うかもしれない病気は、死ぬとき、痛いのか、痛くないのか。

がん患者の7割が「痛い」

 こんな激痛に苦しめられるくらいなら、いっそ早く死んでしまいたい—。肺結核で亡くなった明治の俳人・正岡子規は晩年、その「痛み」を『病牀苦語』にこう著している。

〈友達の前であろうが、知らぬ人の前であろうが、痛い時には、泣く、喚く、怒る、譫言をいう、人を怒りつける、大声あげてあんあんと泣く、したい放題のことをして最早遠慮も何もする余地がなくなって来た〉

〈苦痛の甚しいために早く死ねばよいと思う方が多くなって来た〉

 子規が生きた時代とは比較にならないほど医学が進歩した現在でも、死に向かう痛みを恐れる人は多い。

 奈良県斑鳩町にある吉田寺は、別名「ぽっくり往生の寺」と呼ばれ、「ラクに死にたい」と願う高齢者の参拝が絶えない。多いときには日に200人以上の団体客が、本堂の阿弥陀如来に手を合わせる。

「みなさん、本音では『死ぬときに苦しむのはいやだ』『ぽっくり死にたい』という気持ちはあると思います。しかし、そんなに簡単にぽっくりいけるなら誰も苦労はいらない。だからこそ、あれこれ考えて、こちらにお参りに来ているのだと思います」(山中眞悦住職)

 実際のところ、われわれの身体を蝕む病気は、いったいどんな痛みを伴うのか。日本人の三大死因であるがん、心疾患、脳血管疾患の3つを中心に見ていこう。

「2010年人口動態統計の年間推計」によると、がんによる死亡者は約35万2000人。いまや男性の4人に1人、女性の6人に1人ががんによって命を落としている。

 そのがんの最大の特徴ともいえるのが、「痛み」だ。死の2ヵ月前の段階で、何らかの痛みや苦しみに見舞われているがん患者は5割程度。ところが2週間前になると、7割に増えるという。痛みはがんの症状の代表といっていい。

「にもかかわらず、日本の医療の現場では、患者の痛みは軽視されている。医療用の麻薬消費量はアメリカに比べて20分の1に過ぎない。緩和ケアはまだ十分浸透していないのです」(東京大学医学部附属病院緩和ケア診療部長の中川恵一医師)

 そもそも、がんはなぜ痛いのか。東邦大学医療センター大森病院の緩和医療医で、『すべて、患者さんが教えてくれた終末期医療のこと』などの著書がある大津秀一医師が解説する。

「簡単にいうと、がん細胞が増殖して広がり、受容体(痛みを感じる部位)を刺激するためです。

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