まねきTV裁判---著作権法はネットの敵か(1)
米国でも混迷する裁判とネット著作権問題

 2011年1月18日、「まねきTV」の審理をおこなった最高裁第3小法廷は、著作権侵害には当たらないとした一審、二審の判決を破棄し、知的財産高等裁判所に差し戻した。訴えたNHKおよび在京民放5社の勝訴が確定した。ネット業界や家電業界では、この判決に対する失望の声が広がり、有識者が日本の司法や行政の硬直性を指摘している。

 もちろん、ネット配信を巡る著作権騒動は日本だけではない。アメリカでも音楽業界団体がネット違法配信で個人ユーザーを訴訟するなど、様々な問題を抱えている。しかし、日本におけるネット著作権問題は、アメリカよりも深刻だ。本稿では、まねきTV裁判を通じて「ネット配信に抵抗する権利者」について、米国の事例と比較しながら分析してゆきたい。

まねきTVに厳しかった最高裁

 まず「まねきTV」裁判に詳しくない読者のために、簡単に経緯をまとめてみよう。

 東京の永野商店が行っている「まねきTV」は、ソニーのロケーションフリーテレビ(以下ロケフリ)をユーザーに代わって預かるサービスだ。ロケフリは、テレビアンテナやDVDレコーダーなどにつないだロケフリ・ベースステーションから、映像をインターネット経由で別の場所にあるテレビやパソコンに配信する。もちろん、海外からでも日本の番組を視聴することができる。

 コンピュータ業界にたとえれば、まねきTVサービスはデータセンターのホスティングに当たる。ただ、ホスティングするのはサーバーではなく、ビデオ・ルーターという違いだ。ユーザーは永野商店から機器を購入し、ホスティングの手数料を支払う。同社は、ロケフリにアンテナやインターネット接続などを行うが、設定や操作は、ユーザーそれぞれがおこなう。

 永野商店は、同サービスがユーザー所有の機器に場所を提供するだけとの立場から、著作権を侵害しないと判断した。しかし、テレビ放送業界は、そう考えなかった。

 2006年6月、NHKと在京民放5社は「放送事業者の著作権を侵害している」として、まねきTV停止の仮処分を東京地裁に申し立てる。しかし、同年8月20日、東京地裁は「ベースステーションと視聴ユニットは1対1の関係にある」などの理由から同抗告を却下した。

 テレビ局側はあきらめず、すぐに知財高裁に仮処分申立を抗告した。知財高裁は、特許や実用新案、商標権、著作権など知的財産をめぐる訴訟を専門に扱う東京高裁の特別支部として2005年4月に設立され、その専門的な立場からの判断に注目が集まった。2006年12月22日、この知財高裁も、東京地裁の決定を支持し、抗告を棄却した。

「まねきTV」HPより

 地裁・知財高裁での敗訴にもかかわらず、テレビ局側は最高裁に抗告した。そして2011年1月18日、最高裁第3小法廷は地裁および知財高裁の決定を覆し、「まねきTV」の著作権侵害を認め、審理を知財高裁に差し戻した。

 「まねきTV」裁判は、送信可能化権(著作権法99条の2)および公衆送信権(同23条1項)侵害の是非を争った。その争点は「永野商店が構築した、多数のベースステーション、アンテナ、分配器、ルーターなどを組み合わせたシステムが、全体として一つの自動公衆送信装置であり、送信可能化権、公衆送信権を侵害している」というテレビ局側の主張だ。

 最高裁は、この主張を次の3点から認めた。

 1.公衆の電気通信回線へ接続し入力情報を受信者の求めで自動送信する装置は、単一機器宛て送信機能しかなくても、装置による送信が自動公衆送信であれば、自動公衆送信装置にあたる

 2.テレビアンテナに接続して放送が継続的に入力されるよう設定管理していた永野商店が送信の主体

 3.ユーザーは誰でも契約すればサービスが受けられたので、送信主体からみて公衆にあたる

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら