「四面楚歌」与謝野馨大臣は「日本のフーシェ」になれるか

秘策は『付則104条』にあり
〔PHOTO〕gettyimages

 田原総一朗氏が司会を務めるBS朝日の「激論!クロスファイア」(毎週土曜日午前10時)に出演、与謝野馨経済財政担当相と討論する機会を得た(収録は前日の2月4日)。

 与謝野氏と言えば、2009年夏の衆院選で自民党の比例代表で議席を得たものの、昨年4月に自民党を離党し平沼赳夫元経済産業相らと「たちあがれ日本」を結党、さらに今年1月に同党を離党・入閣したことから「平成の議席泥棒」などとコテンパンに叩かれている。

 それでも菅直人首相は1月28日の衆院の代表質問で自民党の谷垣禎一総裁に対し「内閣に三顧の礼をもってお迎えした」と答弁、政策立案能力に長けた与謝野氏が菅政権の司令塔役であることをアピールした。事実、与野党の攻防が続く通常国会序盤の最大の焦点である民主党の09年衆院選マニフェスト(政権公約)見直し問題について、税と社会保障政策のエキスパートである同氏が早くもキーパーソンになっている。

 菅首相はすでに4月中に社会保障改革案を示し、6月には社会保障と税制の一体改革案を発表すると言明している。民主党のマニフェストでは、年金改革は全額を税財源(消費税)とする最低保障年金の創設を謳っている。がしかし、菅氏は2日の衆院予算委員会で「民主党のこれまでの案も一つのベースだが、色々な案すべてを土俵に乗せて議論したい」と述べ、公式の場で初めてマニフェストの見直しに言及した。

 同時に、同党の年金制度改革案の生命線である制度一元化(3つに分かれている現在の厚生年金、共済年金、国民年金を一元化するというもの)についても「難しい」と答弁したのだ。

 この菅答弁には伏線があった。

 与謝野氏は内閣改造で経済財政担当相に就任直後、「年金制度改革は現行の社会保険方式が具体的で実現の可能性もある」とぶち上げ、改めて年金論争に火をつけた。与謝野氏は昨年11月18日夜、菅首相から公邸に呼ばれた際に「財政再建問題(消費増税)と社会保障問題(年金制度改革)について是非とも協力して頂きたい」と要請された。

 さらに12月中旬、都内のホテルで極秘裏に会談した時にも年明け早々の内閣改造を打ち明けられ、協力のダメ押しを受けていたのだ。その与謝野経済財政担当相が端からマニフェスト修正問題についてショック療法で臨んだということである。

 菅氏自身、「消費増税は(衆院議員の任期が切れる)2013年8月以降だ。消費税率を上げる前に必ず国民に信を問う」と啖呵を切っている以上、当面の最重要課題は年金制度改革である。

 全額税方式なのか、それとも社会保険方式なのかの二者択一ではなく、自民党など野党が乗れる落とし所を、与謝野イニシアチブで見出すことが同氏に期待されていることなのだ。

与野党合意は可能だ

 件の番組収録で私は与謝野氏に対し、入閣の真意をこう質した。

「現在の四面楚歌の中で何をやろうとしているのか? 自民党時代は体を張って自民党の体制刷新を求め、同時に鳩山批判の国会質問で声を張り上げた。これらが自民党に受け入れられずに離党した訳だが、その古巣から議員辞職を求められていることに対してどう思っているのか?」

 これに対し、「自分から大臣になりたいといって大臣になった訳ではない。国民のために仕事をやるしかない」としたうえで、同氏は次のように答えた。

「社会保障と税制について与野党で協議しようという考え方は、これまでにも出ている。例えば、麻生太郎政権時代の安心社会実現会議の報告書にもある。自民党の昨夏参院選マニフェストは09年3月の所得税法改正で盛り込まれた『付則104条』に沿っており、これを叩き台にして議論を煮詰めていけば与野党合意は可能だ」---。

 当時の与謝野氏は麻生政権のやはり経済財政担当相。同付則には「消費税を含む抜本的な改革を行うため、11年度までに必要な法制上の措置を講じる」とある。同氏は古巣で制定した付則を逆手にとって与野党協議への仕掛けとする腹積もりなのだ。

 与謝野馨は、「日本のジョセフ・フーシェ」(19世紀フランスの政権中枢を渡り歩いた政治家にして謀略家)なのか。
 

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