小沢一郎が手にした「辞任カード」
親小沢も非小沢も目算が狂った

 民主党幹事長・小沢一郎は資金管理団体「陸山会」の土地取引事件で不起訴となったが、職にとどまったまま今夏の参院選を迎えられるのだろうか? 起訴、不起訴にかかわらず、小沢に対する国民に対する視線は極めて厳しい。

 「不起訴の方向」と報道された3日、小沢系議員は一転して勢いづき、非小沢系議員は「これからは世論次第だ」と落胆した。こうも明暗が分かれたのは、東京地検特捜部の小沢に対する1回目の事情聴取(23日)直後から、永田町では「どうやら逮捕されるらしい」「いや在宅起訴だ」という噂が広がり、逮捕・在宅起訴を前提としたシナリオ作りが始まっていたからだ。

 このころ、小沢側近の1人はこう語っていた。「表では『小沢さんを信じている』としか言わないが、何も考えていないわけではない。最悪の事態を想定して、在宅起訴や逮捕の場合のシミュレーションもしている」

 一方、元衆院副議長・渡部恒三らは公然と「小沢批判」を開始。非小沢系議員の間では渡部を小沢が辞任した後の後継幹事長に推す声が上がった。しかし、不起訴となり、親小沢、非小沢両陣営とも目算が狂ってしまったために過剰な反応となったのである。

昨年のデジャビュー

 だが、冷静に見れば、小沢を取り巻く状況は基本的に変わっていない。小沢はもともと、東京地検特捜部、世論、国会での追及という3正面と闘っている。このうち、東京地検特捜部との闘いに勝利しても、2度起訴相当の議決があれば、強制的に起訴されることになる検察審査会の喚問が残っている。世論、国会での追及は不起訴になったことでかえって苛烈になっている。

 不起訴になったからといって潔白ということにはならず、「黒に近い灰色」という状態だ。出所不明の億単位のカネが政治団体を行き来する資金の流れ、秘書が政治資金規正法を犯してまでして隠そうとした理由、そもそも秘書3人が起訴されて雇い主の政治家本人が何の責任も取らない不思議さ……

 にもかかわらず、小沢は政治資金団体「陸山会」の代表としての責任を認めながらも、進退に関しては、「私が今、代表から指名していただいている幹事長の職責を返上しなければならないという風には考えておりません」と語り、辞任論を一蹴した。

 小沢がこう言っても、昨年の西松建設事件では、3月3日に秘書・大久保が逮捕されて以降辞任を否定していたのに、5月11日に突然辞任した。小沢はこの日、記者会見で辞任の理由を次のように語った。

 「衆院選での必勝と、政権交代の実現に向け、挙党一致の態勢をより強固にするために、この身をなげうち、民主党代表の職を辞することを決意した」「何が何でもここで(衆院選に)勝たなければならない。党内の結束、団結が絶対不可欠の条件だ。党内が乱れていたのでは衆院選に勝利できない。私が代表の職にとどまることで、挙党一致の態勢を強固にする上で少しでも差し障りがあるならば、本意ではない。まさに身を捨て必ず勝利する。私の覚悟、私の決断はその一点にある」

 衆院選を参院選に置き換えれば、現状に当てはまるのではないか。有力閣僚が「昨年のデジャビュだ」と語るのもうなずける。

 昨年は小沢辞任後、鳩山由紀夫が代表の座に就き、衆院選圧勝の一因になった。そう考えると、小沢は今回、責任を取らないことで「辞任カード」を手にした。

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