増税より前に政府保有株の売却をーー財務官僚が嫌う「郵政株売却」に踏み込んだ
野田首相の答弁を支持する

官僚の作文を棒読みの安住財務相とは一線
【PHOTO】Sankei via Getty Images

  政府税制調査会(会長安住淳財務大臣)が先週、震災復興のうち11.2兆円を臨時増税(復興増税)で賄う増税案を打ち出したのを受けて、復興増税策作りがいよいよ本格化する見通しだ。

  早くも先行きの道程の険しさを象徴するような出来事もあった。先週、政策協議で協力を得るために臨時国会の会期延長に応じた途端、事前に連絡がなく面子を潰された形の松本剛明国会対策委員長代理ら3人が上司に当たる平野博文国対委員長に辞表を提出する騒ぎが起きて、野田佳彦内閣が政権運営の未熟さを露呈したのは、その典型的な例かもしれない。

  そんな中、見逃してはならない動きがある。野田首相自身が9月14日の代表質問で、政府が保有している日本郵政株について「財源確保の観点から、株式の売却に向け、環境整備を含めて努力したい」と財務官僚が避けようとした課題にあえて踏み込んで発言したことだ。

 マスメディアは通り一遍の報道しかしなかったが、これはサボタージュを決め込んでいた財務官僚たちの尻を叩く、なかなかの発言である。というのは、この発言まで、財務官僚たちは税外収入の確保に万全を期すという原則を無視して、高いハードルになりかねない日本郵政株売却など税外収入を確保する努力を怠り、一直線に増税に突き進むことを目論んでいたからだ。

 昨今の欧米の混乱ぶりを見れば、財政再建の重要性・緊急性は明らか。だが、だからといって安易にすべてを増税で賄おうとされては、国民は堪ったものではない。庶民の負担の増大を少しでも抑えようと、「急がば回れ」を実践する首相の姿勢に、筆者はエールを送りたい。

官僚の振り付けどおり、政府保有株売却に後ろ向きの安住財務相

「発足から100日間はハネムーン」というような仁義は、今の自民党には通用しないらしい。逆に、線が細いとのイメージを覆そうとしたのか、自民党の谷垣総裁は14日の衆議院本会議で、いつになく強い口調で、就任したばかりの野田首相を「3党合意を反故にした」「マニフェストはデタラメ」「朝鮮総連の支配下にある朝鮮学校の授業料無償化は暴挙」などと厳しく詰め寄った。

 とはいえ、そんな谷垣総裁が、声量を落として、恐る恐る訊ねた質問があった。対応を誤れば、自民党の方が真っ二つに割れかねない日本郵政株の売却問題が、その質問である。谷垣総裁は、自民党が意見を統一できないことを棚に上げて、「問題点も多々指摘されており、政府・与党の統一された方針としての答弁を願います」と問いかけた。

 答弁する野田首相のほうは、まず、財務省が用意した答弁案の通り、「現在、継続審議となっている郵政改革関連法案が成立すれば、政府保有義務がかからない株式は売却可能となります」と事実関係を説明した。

 首相の答弁はそれにとどまらなかった。さらに踏み込んで、「今後、法案の早期成立を目指すとともに、財源確保の観点から、株式の売却に向け、そのための環境整備を含めて努力したい」と補足。税外収入のひとつに日本郵政株の売却収入を加える覚悟を披露したのだ。そのうえで、「仮に売却が確定した場合には、それ以降の時点における復興の財源フレームの見直しの際に、売却収入を織り込むことになります」と言い放った。たとえ時間がかかっても、増税以外の復興財源の確保をおざなりにしない姿勢を鮮明にしたのである。

 この答弁は、NTTや日本たばこ(JT)を含めた政府保有株全体の売却問題について、9月2日の初閣議後の記者会見で、「慎重に対応したい」と財務官僚の作文を読み上げた、安住淳財務大臣の発言とは明らかに一線を画す内容である。増税によって財政赤字の拡大に歯止めをかけることを最優先する財務官僚たちに対し、そのようなサボタージュ、国民への背信行為を許さないと牽制する意味があるからだ。

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